最近、なぜか中学以来「ベルサイユのばら」熱、いや「オスカル様熱」が再燃してしまったの、私。
なにがきっかけかというと、Youtubeで「アニメ版ベルサイユのばら」をうっかり見てしまったせいらしい。
NOオスカル様NOライフだった私は、池田理代子先生のあの流麗な線にほれ込むあまり、アニメ版のごつごつした描写や展開の違いがもう受け入れられなくて、早々にリタイアしたのでした。
男がみんなごつすぎて、あしたのジョーの監督とかが監督してるのかと思ったら、ホントにそうだったのには驚いた。オスカル様の部下の衛兵隊が鼻毛抜きながら話してんだもん。
でも、いまだにフランスやイタリアでは大人気と聞いてしみじみ見直してみたら、これがよかったんだわ!
オスカルの正義感溢れる潔さや高潔さ、強さとやさしさ女性としての悲しさが少年漫画タッチの中で薔薇のようにしっかりと咲き誇ってる。ストーリーもフランス革命をわかりやすくかみ砕いていて好感が持てた。
でもパチンコにはならんでほしかったわ……池田先生…
で、一気に熱が上がった私は、何を間違ったかとんでもないパンツをセットで買ってしまったの。
いやベルばらとは関係ないよ、ありません。ただ、たまには華やかな色の下着もいいかと思って……ただ、いつもより少しカラフルなものを試そうと……どうせ誰にも見られないんだし。
と、通販で買ったのがこれ。
(はい、ここに最初はパンツセットの写真載せてたんだけど、よく考えたらこれ気に入って買った人もいるだろうし正直履き心地そんなに悪くないし、販売している会社に迷惑かけると思ったので画像削除しました)
バカ者ー!! 何を血迷ったんだ、年も考えずこんなコテコテのつるつるの、薔薇バラした下着をだな…… いやもう捨てるのももったいないし、履いちゃえ。娘に写真送ったら一言「捨てな」と言われたけど、もったいないんでそっと履くことにしたのよ。この紫ピンク色のばらパンツ。
そしたらね、パンツが囁いたの。
「誰にも見られないと思ってるでしょ。ところがそうはいかない、必ず人目につくようにしてあげるよ」
と。存分に恥をかかせてあげるよと。
そんな呪いの言葉を払しょくして、私は最近またまた激しくなってきた眩暈と戦うべく、ひとりでできるもん、ひとりでいけるもん、を実証して自分に自信を持たせようと、翌日ひとりで都内のビジネスホテルにお泊りしたんでした。
目的はこれ。永代橋から見る夜景。
都会の夜景の中でも、ここから見る夜景は抜群なんだな。
最近、ふらつきが怖くて夫と一緒に1キロぐらいしか歩いてなかったけど、同窓会も近いし、一人で遠出するお稽古しなくちゃ。
で、薔薇のパンツ履いておめかしして、門前仲町の地下鉄を出たところで
突然の眩暈。
あっという間に五体投地して私は地面にすっ転がっていたんです。
はっきりわかったのは、左の膝を打ち付けたことと、右足首が「グキッ」といったこと。
激痛だ。これはやられている。私は、立てないだろう。
四つん這いになってぶるぶる地面を見ていたら、ご婦人と思われるお方が駆け寄ってきて(足しか見てない)
「だ、大丈夫ですかっ? 動けます? 救急車呼びましょうか?」
救急車…… 病院…… バラのパンツ……
「いえっ!大丈夫、だと思います!右足首さえ…… まっすぐにできれば……」
このとき、私はパンツの呪いに負けまいと、かなり無理をしてしまったのでした。
起き上がろうとしては失敗、起き上がろうとしては失敗、ついに「良ければ私の腕につかまってください」と、オスカルのお母さまのように慈愛に満ちた女性に手を差し出され、私は「ごめんなさい、失礼します」とその手にすがって無理やり足を「縦に」したのでした。
そして、「大丈夫です、立てました!これで歩けると思います、ほんとうにありがとうございました!」とぺこぺこし続けたのでその方のお顔はいまだにわかりません。ご親切な方、ほんとうにありがとうございました。
そして、よしゃいいのにバッグをもって、一歩一歩、激痛に耐えながら足を引きずるようにして近くのホテルに到着。
フロントの方はすぐに私の異変に気付いて、「あの大丈夫ですか? お部屋までお荷物お持ちしましょうか」といってくれたんだけど
「いえ大丈夫、大したことありません」と強がりを言って、私は何とか自分の部屋までたどり着き、そこで靴を脱ぐとベッドにひっくり返りました。
さあ大変だ、たいへんなのは足を動かしてみればわかる。ズボンの左ひざは破れて穴が開き、膝は出血しているらしい。
右足首は…… 少し動かしただけで激痛。これは完全に捻挫だ。
動けない、どうしよう。
幸い、吉祥寺駅で夜のお弁当と朝のサンドイッチ、飲み物は買っておいたので食べるものには不自由しないけど、これ、どうやって帰ったらいい?
もう橋見物どころじゃない。第一、動けないのにどうやってこの部屋から出るのよ。
まず夫にラインで連絡しました。
ホテル前で転んで足をくじいて動けないと。
「明日は大事な仕事なんで休んで迎えにはいけないなー。両国までタクシーで行って、あそこはエレベーターが確かあるから総武線で帰ってくれば」
部屋の中を一周するのも大変なのに、わかってない。だめだこいつ。
どうやってホームを移動するのよ。どうやって電車に乗って降りるのよ。こっちは片足なんだよ。
「わかった、もういい」
次、娘にラインで「ホテル前で足くじいた。SOS」と送ったら、即ライン電話がかかってきました。
「今どこ。ホテルの名前は」
「待って、動揺して思い出せない。えとえと、門前仲町のRホテル」
「わかった。無理に歩いちゃだめだよ、できればお風呂に水はって冷やして。ホテルに電話してレンタル車いすがあれば用意しとく。明日朝部屋まで車いすで迎えに行くからね。帰りはタクシーで自宅まで直行、これ一択だから」
嗚呼なんという頼りになる娘だろう。オットよ、あんたの負けだ。
といいつつ、浴槽で足を冷やそうとズボンを脱げば、目に入るどピンクのパンツ。
お前かっ!
お前の呪いか!
左ひざはボロボロだし、右足首は床につけるだけで痛い。どうにか浴槽に水をはって、壁に手をついておふろのふちに腰掛けながら、長いことお水で冷やしました。
で、なんだかんだで翌朝。
右足はパンパンに腫れていました。
どうしよう、これじゃ靴が入らないかも。
靴下をはかずに、ヒモ靴のひもを最大限に緩めて、ひーひーいいながらなんとか足を突っ込みました。
そこへ娘からライン。
「今下にいる、車いす借りられた。迎えに行くから部屋から出ないでそこにいるんだよ!」
ああなんていい子なんだ。しくしく。ごめんよ、捨てろと言われたのにこんなパンツをはいた母が悪かったよ……
ありがとうありがとうと繰り返す私を車いすに乗せ、荷物を持った娘は、「さあ行こうか」とにやっと笑うと、
「おりゃあああ!」と言いながら車いすで廊下を爆走したのでした。
ただ親切なだけの訳がなかった、私の子だもの。
やめてやめて落ちる落ちるとわあわあいってるうちに、エレベーターでフロントへ。
前払いだったのでキーを返して終わり。
タクシーは10分ぐらいで来てくれ、車いすでぎりぎりまで近づいた後、どさっと乗り移りました。
門前仲町から吉祥寺まで一万一千円なり。思ったより安かった、高速乗ってもらったのに。それにしてもこちらの身を気遣ってくれて、親切ないい運転手さんでした。
後で豪勢なランチおごるからと言って、家に入って娘とはお別れ。
さあ、問題はここからなんです。
足、はかばかしく治りません。オットに車で連れて行ってもらった整形外科では、やはり「捻挫」とのことで、シップを貼ってテーピングしてるのですが、もうサンダルしかはけない。早速杖を買ったしお風呂用のいすも買ったけど、階段も登れないので一階のソファで寝てます。
18日……
高校のクラス会……
久しぶりに来る人たちも結構いるようだし、これを逃したら次出られるのは70ぐらい?
私生きてんの?
糖尿病だし眩暈と異様な眠気の発作は治らないし、おまけに足はこんなだし。
悩みに悩んだけど……
出席するとお返事したけど、今回、無理かもしれない……
無理して転んだらまたみんなに迷惑かけるし……
なにもかも、あんなパンツを買った私が悪いんです。
会いたかったよ、みんなに。
でもこんなありさまじゃ、無理だと思う。
ごめんなさい……;つД`)
(そういいながらも集英社文庫でベルばら全巻ぽちったのでした)