つい最近、ホテルで足をスーツケースの角にぶつけてしまい、それほどいたくはなかったのに翌朝ぱんぱんに腫れあがってました。
右足だけゾウさん状態。動くと激痛。
しかも膨れてる部分が岩みたいに硬くて、冷たい。そして肌の色とは思えない青白い色。
這う這うの体で何とか最寄り駅まで帰宅して(どれだけふらつき何人の人にぶつかりかけ謝り、転倒しかけたか……)
人の行き交う都会の交通機関や町中が、身体の不自由なひとやお年寄りにはまるで激流の川の流れに逆らうみたいなもんだってことを、身をもって知りました。
でもすいすい流れる人から見れば、私は邪魔な石ころか、ゾウガメみたいなもんです。
痛みに耐えつつ近所の外科に行ったら、すでに病院が潰れてた。
もう午後6時。他の医者を探してる余裕がない!
遠くにいた娘が私の窮状を聞きつけ、スマホで近くの別の外科を調べ、携帯を通して道案内をしてくれました。娘、有能!
やっとたどりついた病院でレントゲンを撮ったところ、
「どうやら骨折はない。でも内出血がひどくそれがこぶ状になっている。冷シップと痛み止めと炎症止めと胃薬を処方しますから、患部を安静にしてあまりふろに入らないように」
ということで、ひと安心しました。
でも何枚もレントゲンしたし、足もぐるぐる巻いてもらったし、運動機能も見てたし、初診だし、財布の中身は結構いま寂しいし……
と心配してたら
「はい、1200円になります」
ふえっ???
動物病院に通うのが日常になってる私には驚愕だった。
だって最近も、老猫たんたんが背中をあんまりかゆがるので近所の獣医さんに行ったら、背中の一部だけ毛をそって注射してもらって薬はなしで、一万二千円だぞ??
だいたいいつもそんなもんだぞ?
(四匹いますが、一回の診察料としてはこれでも安い方)
ああ、ありがたい!
薬局で買った薬とシップも、確か1000円しませんでした。
しかし、今日も足はガンガンにいたい。痛み止め飲んでもいたい。
そして、他の医療機関(歯医者)に通院するにも、動かなければどうしようもない。
でも、あの人混みでの恐怖と電車やバスの乗り降りの時の激痛、薬局で走り回る子供に足を蹴とばされて死にそうになった事、等々考えると、外出なんてほぼ不可能に思える……
と思っていたら、娘が「ヘルプマーク、つけたら?」
と、こんなものを貸してくれました。
私もつい最近まで知らなかった、「ヘルプマーク」
赤地に十字とハートのかわいいデザインです。
「これを身に着けている人は、外見からはわからない病気やケガ、障がいを抱えているので、席を譲る、困っているようなら声をかけるなどの手助けをお願いします」
とアピールするためのツールなのです。東京都さん、ありがとう。
彼女もちょっとした持病があるので、具合の悪い時は身に着けてます。「結構電車やバスで席譲られることもあるよ」とのこと。
さっそく私のリュックに括り付けてくれました。
でも。
彼女は生まれ落ちたその時からなぜか周囲にちやほやされ続けてきた運のいい子なので、(いまもだけど)多分愛されタイプなんでしょう。
でも私みたいなおばさんがこんなものつけてバスや電車に乗ってきたら、
知らん人は「派手なアクセサリーだな」と思うだけだろうし、知ってる人も……
「だから席譲れって無言の圧力か」
「迷惑。タクシーにでも乗れ」
「目の前に立たないでよ、わざとらしい」
「うざいな。目そらしとこ」
こんな感じで「内心、チッ」という嫌な空気が渦巻くだけではと……
それにか考えられない。
わたしは、席を譲ってじゃなく、道を歩く時、ゆっくりフラフラしか歩けないけど勘弁してね、ぶつからないでね、というアピールでつけたいんだけど……
今は、電車に妊婦が乗ってきただけで
「腹を殴られた」「舌打ちされた」「降り際に足をけられた」というおっそろしい話を実際身近で聞くんです。いや、ほんとにききました、これ。正気?
少子化がヤバイヤバイと言いつつ、なんで腹に命を抱える人を集団で憎み、嫌がらせをするんだ?どうしてみなそこまで荒れてるの?普通じゃない人がそんなに憎いの?
娘の好意は嬉しかったんだけど、結局、
「邪魔なんだよ」と足を蹴られでもしたらひどくなるだけだ、という恐怖に駆られ、「ありがとう」とは言いつつ身につけないことにしました。
日本はいろんな意味でいい国だと思う。安全で清潔で平均寿命も長いし(商業施設やサービス業では)親切な人が多くて……
でも、こういった方向での冷たさが、私にはふしぎでしょうがない。
私は結構外国には行きましたが、欧米では特に、ちょっと道に迷ってたり困ってたりすると「何か困ってるの?できることはあるかしら?」とおばあちゃんや子連れの若い女性が寄ってきてくれました。体の不自由な人やベビーカーママがバスや電車に乗り降りしてたり階段にさしかかると、そんなに人数いらないんじゃと思うぐらいわらわらと人が寄ってきて手助けするのもよく見ました。 スーツケースをロッカーに入れようと持ち上げていると、後ろから来た男性が当然のようにひょいと持ち上げて押し込んでくれたり。
だから、いつも残念に思うんです。
妊婦マークやヘルプマークつけるとかえって危険、だからむしろ付けない方が安心、というか怖くてつけられない、
という人が実は多いという、日本の現実を。