突然ですがお粗末な小話を一つ。
先日近くのホームセンターに新車でお買い物に行ったんですね。
(日産のセレナです)
お昼過ぎで、回転ずし食べ過ぎていいかげん眠かった私は「車から降りるの面倒だから二人で行ってきて」とホームセンターの駐車場で気怠く言い放ちました。
二人とは、夫と息子。買い物は「ジャスミンの苗木と園芸グッズ」
ジャスミンは、父の日プレゼントに夫が息子に頼んだもので、どうせならいっしょに選ぼうよということになったんです。
言ってきまーすと二人が下りる際、息子が「お母さんが蒸しあがっちゃうから窓は開けとかないと」とか言って窓を開けてくれてるのを半分寝ながら聞いてました。
で。
ぐ~たら寝ていたんですが、なんかどうも暑い。
雨模様だったのが雲が途切れ始めたんですね。周りがムシムシしてる。
窓は20センチほど空いてるけど、も少し開けたい。
で、窓を開けようとして気付いた。
あれ、手動じゃ開かないのか。今まで乗ってた旧プレーリーは後部は手動だったのに。じゃしょうがない外の風を入れようってんでスライドドアを開けようとした。
開かない。
……開かない?
どうやら鍵がかかってる。いや、かかっていても内側からなら開くはず。
どうやって鍵を解除したらいいんだろう。
これがさっぱりわからないんです。だって乗るの二度目の新車で、あれこれの構造は運転手が知ってりゃいいやと何も聞かずに乗ってたんでこのざま。車内の気温はぐんぐん上がる、ドアはあかない。そして私は閉所恐怖症。
…………
これはちょっと、あの、ちょっと深刻な事態かも。
じわりじわりと滲む汗、だんだんおいつめられていく精神。そして恐ろしいことに気付いた。
……トイレに行きたい。
じゃあ前の座席に映って前のドアを内側からあけりゃよかろうって思うでしょ?
それは普通の人ならしたらいい。私の場合、何しろ閉所恐怖もちなので、何かの間違いで前のドアも開かなかった場合、車内で大暴れして泣き叫ぶという醜態を天下にさらす羽目になるやも知れず。ここはひとつ、多少あっついけれどわたくし好きでここにいるんですという顔をして、前のドアが開きさえすれば自分は自由だがそれをしていないだけという状況を固持することで正気を保ったのでした。
どれぐらい?
うん、30分ぐらい。
流れ落ちる汗、はやまる動悸。あついわ苦しいわ恐ろしいわバカバカしいわ。これでニコニコ顔を保ったまま熱中死したら、赤子も同様のバカ親を駐車場で煮殺したとして夫と子が逮捕されるのかしら……
それはならじ。それだけは!と再び奮起してドアをあちこちいじくりまわし、ついに取っ手の先端の同系色の部分をスライドさせることでドアはあいたのでした!
這う這うの体で外に足を出し、どんよりとしていたら、ほどなくのんびりした様子で二人登場。
「なーんで何度電話しても携帯に出ないわけ?」と息子。
「ああ、ごめん。今日に限って家に忘れて来た……」
「まあったくー」
そうなんです。こういう時のための携帯すら、この時は家に忘れてきていたんでした。
でもありがとう、息子よ。キミがわたしを思って窓を開けていってくれなかったら、わたしは中で半殺し半狂乱状態になっていたかもしれない。
そんなみっともない告白なんてできないので、このお話は私だけのヒミツなんです。でもこの日ばかりは、父の日ではなく母の日でもあったよと心の中でささやいたのでした。母から息子に感謝する日としてね。
で、最後に宣伝。
何度かここでお知らせしていた連載小説「常世の長鳴き鳥」10回連載が完結しました。
こちら↓をぽちしてぜひお出で下さいませ。
常世の長鳴き鳥
先日近くのホームセンターに新車でお買い物に行ったんですね。
(日産のセレナです)
お昼過ぎで、回転ずし食べ過ぎていいかげん眠かった私は「車から降りるの面倒だから二人で行ってきて」とホームセンターの駐車場で気怠く言い放ちました。
二人とは、夫と息子。買い物は「ジャスミンの苗木と園芸グッズ」
ジャスミンは、父の日プレゼントに夫が息子に頼んだもので、どうせならいっしょに選ぼうよということになったんです。
言ってきまーすと二人が下りる際、息子が「お母さんが蒸しあがっちゃうから窓は開けとかないと」とか言って窓を開けてくれてるのを半分寝ながら聞いてました。
で。
ぐ~たら寝ていたんですが、なんかどうも暑い。
雨模様だったのが雲が途切れ始めたんですね。周りがムシムシしてる。
窓は20センチほど空いてるけど、も少し開けたい。
で、窓を開けようとして気付いた。
あれ、手動じゃ開かないのか。今まで乗ってた旧プレーリーは後部は手動だったのに。じゃしょうがない外の風を入れようってんでスライドドアを開けようとした。
開かない。
……開かない?
どうやら鍵がかかってる。いや、かかっていても内側からなら開くはず。
どうやって鍵を解除したらいいんだろう。
これがさっぱりわからないんです。だって乗るの二度目の新車で、あれこれの構造は運転手が知ってりゃいいやと何も聞かずに乗ってたんでこのざま。車内の気温はぐんぐん上がる、ドアはあかない。そして私は閉所恐怖症。
…………
これはちょっと、あの、ちょっと深刻な事態かも。
じわりじわりと滲む汗、だんだんおいつめられていく精神。そして恐ろしいことに気付いた。
……トイレに行きたい。
じゃあ前の座席に映って前のドアを内側からあけりゃよかろうって思うでしょ?
それは普通の人ならしたらいい。私の場合、何しろ閉所恐怖もちなので、何かの間違いで前のドアも開かなかった場合、車内で大暴れして泣き叫ぶという醜態を天下にさらす羽目になるやも知れず。ここはひとつ、多少あっついけれどわたくし好きでここにいるんですという顔をして、前のドアが開きさえすれば自分は自由だがそれをしていないだけという状況を固持することで正気を保ったのでした。
どれぐらい?
うん、30分ぐらい。
流れ落ちる汗、はやまる動悸。あついわ苦しいわ恐ろしいわバカバカしいわ。これでニコニコ顔を保ったまま熱中死したら、赤子も同様のバカ親を駐車場で煮殺したとして夫と子が逮捕されるのかしら……
それはならじ。それだけは!と再び奮起してドアをあちこちいじくりまわし、ついに取っ手の先端の同系色の部分をスライドさせることでドアはあいたのでした!
這う這うの体で外に足を出し、どんよりとしていたら、ほどなくのんびりした様子で二人登場。
「なーんで何度電話しても携帯に出ないわけ?」と息子。
「ああ、ごめん。今日に限って家に忘れて来た……」
「まあったくー」
そうなんです。こういう時のための携帯すら、この時は家に忘れてきていたんでした。
でもありがとう、息子よ。キミがわたしを思って窓を開けていってくれなかったら、わたしは中で半殺し半狂乱状態になっていたかもしれない。
そんなみっともない告白なんてできないので、このお話は私だけのヒミツなんです。でもこの日ばかりは、父の日ではなく母の日でもあったよと心の中でささやいたのでした。母から息子に感謝する日としてね。
で、最後に宣伝。
何度かここでお知らせしていた連載小説「常世の長鳴き鳥」10回連載が完結しました。
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常世の長鳴き鳥