最近、妊婦や子供、特にマタニティマークを付けた人への嫌がらせがはなはだしい、ときいて、
あるいはその実例を聞いて、背筋が寒くなったので
玉木君ブログを離れてちょっとこれについて書きますね。

まず、わたしは世の中にこのマークがあることが恥ずかしい。
そんなものくっつけなくとも、お年寄りやけが人病人、妊婦や乳幼児連れに対する配慮は自然で当たり前のものであるべきと思っているからです。が、今は違う。
父がよろよろの老人になって、電車で付き添ってみてわかったことでもありますが、混んだ電車において上記の存在は皆「いやがらせ」の対象なんです。
「いるだけで配慮しなくちゃならない相手は迷惑以外の何物でもない」からなんですね。
実際に聞いた話でも、マークを付けた妊婦がバッグで腹を殴られた、睨みつけられながら足を踏まれた、「そんなに自慢?」と吐き捨てられた、たくさん聞くんです。
こんな殺伐とした国だったっけ?
少なくとも、電車の中での弱者に対するマナーと態度は、わたしは欧米あるいは外国の人たちに軍配を上げます。皆考えるより先に気づかいができている。この差は、なんだろう?

それでですね。
昔と今を一律に比べるのがいいこととは思いませんが、どうにも、一部の人にとっては「嫌煙権」と「嫌こども権」あるいは「嫌妊婦権」が同じところに位置している気がするのです。
つまりこういうことです。
昭和の時代、煙はどこにでもあった。はなはだしい場合映画館の中にも。成人男性がタバコを吸うのは当たり前の光景で、それがために居場所を追われたりいやな顔されることはあまり、なかった。
でも今はたばこの害が明らかになるにつれ、他人の煙で健康を害されたくない人の声が尊重されて、煙草好きはどんどん世間の隅に追いやられている。
言っときますが私はこの風潮を批判していません。ありのままを書いています。
確かに私の少女時代は煙は当たり前にそこらにあったので、新幹線全体がタバコ臭いのも外出から帰ると服が煙たくなるのも「仕方ない、当たり前」と思っていました。
が、今はタバコを吸う人が当時に比べ少なくなっているのと、煙害に直接あうことが少なくなっているので、綺麗な空気がすえるのが当たり前になり、そのぶん煙のにおいに敏感になって、
少しでも匂うと「この店分煙がなっていない!」「おそばがまずくなる!」と店を出たくなります。
つまり、綺麗な空気が当たり前になると煙に敏感になり、許容度が低くくなるんですね。

さて、子どもはたばこの煙と同じではありません。そこは説明するまでもないですが、
自分の生活が子どもと全く関係がなく、あるいは生涯子どもなぞ持たないので許容する気もなく、他人の子どもはただ迷惑なだけ。という人にとっては、
騒音をまき散らし言葉と理屈が通じない他人の子ども&あかんぼは、煙草の煙と同じかそれ以上に迷惑なだけの存在でしょう。
妊婦も、自分の都合で妊娠しやがったのに腹突き出して「配慮しろ」「席譲れ」とか全く持って偉そうで迷惑な存在以外の何物でもないでしょう。
私がそう思ってるんじゃなく、そういう人たちにとっては、です。
それでも、妊婦もあかんぼ連れも小さい子どもが路上で群れ遊ぶ光景も「当たり前」「見慣れた日常」であった昔は、わざわざ耐えるほどのものじゃなかった。
そのぶん、家にボールが飛び込んできて窓ガラス割ったり、路上遊びの騒音が一日続いたり、気が付くと庭を探検隊が通過していたりもよくありましたが、
その都度子どもたちは大人に怒られたり「ちょっとこっちおいで、菓子上げるから」と暇なばーちゃんに言われてぼりぼり駄菓子を食べたりしたものです。
が、そういうふれあいのない静かな世の中になればなるほど、「妊婦」「赤ちゃん、子ども」は異質な存在になり、勝手に運どいて迷惑かけるな、という視線にさらされることになった。
こんな気がします。
つまり、子どもの数が減れば減るほど、人は潔癖症になり、ますます赤んぼを憎む、疎ましがるようになる。そんな気がするのです。
であれば、マタニティマークなど逆効果。だって、世界の中でも子どもの少ない日本人は、とにかく子どもが嫌いでしょうがない民族になってるんですから。
これは欧米、特に東南アジアを旅行すればわかります。日本人以外はほとんど、変態か?と思うぐらい赤ちゃんや子供が好きで、向ける視線が全然違う。(私の子どもじゃないですけどね)
泣きわめいていようとやんちゃだろうと、関係なく、皆であやそうと寄っていきます。

かくて、子どもの数が減れば減るほど日本人は子どもと妊婦を嫌い、
ただひたすら「偉そうにするな」「迷惑かけるな」「分離してくれ」と、煙草の煙のように忌み嫌うでしょう。
そして少子化には拍車がかかり、これは自然の法則でもう止められない。

これは直感ですが、政府がどんな政策をとっても子どもを増やすのは無理だと思います。
だって日本より安全度も清潔度も経済発展度も低い国のほうがポコポコ子ども増えてるんですから。
静かな環境フェチの日本人が、自ら選ぶ未来です。
誰の声もしない静かな静かな日本は。