最近とみに日本に窮屈な空気が蔓延してると思う。
それを痛感したのは、桑田佳祐さんのライブを巡る「謝罪」騒動。
ステージでのちょび髭がヒトラーを連想させるとか紫綬褒章のメダルを粗末にしたとか不敬とか反日とか。
世間は下半身系お下品ネタは許しても、今「不敬」「反日、反政府」的なにおいのすることを言ったりやったりするとすごい勢いで反応するらしい。
そして一番びっくりしたのは、あの桑田さんが真面目に「謝罪」しちゃったこと。

あの人ってそういう存在だっけ?
自分のしたことがどういうことで、世間にどういう反応を引き起こすか、わかっててやったんじゃないの?
あのアンチマッチョな適当さとお下劣加減が桑田さんなんじゃないの?

だいたい、「ピースとハイライト」を出したあたりでもう驚きだった。
「絵空事かな、おとぎ話かな 互いの幸せ願うことなど」
「歴史を照らし合わせて 助け合えたらいいじゃない
 固い拳を振り上げても心開かない」

こんなまっとうな平和ソングを歌って一部の愛国主義者さんの神経をぞろっと逆なでしたのも
(近隣アジア国と仲良くできない大人はバカだね―、と言われると血が沸騰する類の方々)
桑田さんものすごく思うところがあって、歌わずにいられなかったんだろうとは思ったものの
そのスタンスの「いまさらなど真ん中」ぶりにびっくりしたの。
だって今はマッチョの時代でしょ?
日本はとにかく強く強くなって敵と戦う力を持たねばっていう。
「憎むべき敵」を前に日本人は一丸となろう、という、そういう方向で肩を組む人こそ愛国者で、空虚な平和を歌って政府に物申す人間は反日であるという。
その空気を桑田さんが知らないはずはないと思う。その中でああいう歌を出し、ライブでああいうパフォーマンスをした。
ある意味確信犯だと思ったのね。
じゃあなんで「わかっててやって、そのうえで丁寧に謝罪」したんだろ?

不敬なのもお下劣なのも非常識なのも踏まえてしたことなら、
謝っちゃだめだと思う。
政治家じゃなくアーティストなんだから、そこはきちんと嫌われるべきでしょう。
俺はこういう人間でわかっててしたことでただのおふざけが謝罪に値するとも思ってない。
どうぞ嫌ってくれ。歌も聞かないでくれ。死ぬほど嫌ってくれ。
でも俺はおれであり続ける。バカなんで。
それでいいじゃん。
もしどうしても謝らなくちゃいけないなら「天皇陛下に対して」だけだと思う。
一般民衆に謝る意味が分からない。みんな普通に「腹を立てた」だけなんだから。
バカなアーティストに腹たてさせられたからって謝れって、なんなん。
空虚な平和主義の歌うたったからって謝罪しろって、なんなん。
嫌う自由はあるんだから、軽蔑して嫌っておけばいいだけなのに、それだけじゃすまさないんだ。

わたしはいろんな人種が、嫌われつつ嘲られつつ存在し続ける社会であってほしいと思うので
桑田さんには、謝ってほしくなかったな。

でも、「ピースとハイライト」ごときでもうアミューズの事務所の周りに日の丸たてた右翼の皆さんが抗議に訪れてたの見ると
事務所ごと危険にさらされてることで社長がビビったんでしょうね……

そのうち桑田さんも、謝罪のしるしの愛国ソングか何か歌うのかなあ。
それはそれで、「馬鹿にしてる」と右翼の皆さんに罵倒されそうだけど。
あー、やな世の中だわ。