何が面白くてたんたんを飼ふのだ。

武蔵野の百十坪の野草庭の中では、

脚が短か過ぎるぢゃないか。

腰が全体に引けすぎているぢゃないか。

雪の降る国にこれでは体毛がぼろぼろ過ぎるぢゃないか。

腹がへるから安いフードも食ふだらうが、

たんたんの眼はおさしみばかりみてゐるぢゃないか。

身も世もない様に燃えてゐるぢゃないか。

蒸したささみ色の風が今にも吹いて来るのを待ちかまへてゐるぢゃないか。

あの小さな素朴な頭が無辺大の食欲で逆まいてゐるぢゃないか。

これはもう猫ぢゃないぢゃないか。
かわうそかアザラシか狸かもうわからないぢゃないか。

人間よ、

もう止せ、こんな事は。


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高村光太郎先生、すみません。



明日から白内障手術で入院。
事情あって全身麻酔なんだけど
あれって時間の感覚なしで2,3秒で自分が全消えするところが面白い。
その瞬間を見極めようと前回も意気込んだんだけど
普通に無理だった。
あの世へ行くときもあんな風にすっぱりなのかな。

三匹の猫の中で一番食べるたんたんが最近一番ぼろくさいのは
わたしと同じ、お年だからかな。



23日に帰って来たとき
きみのそのすっとぼけ顔が
もっとはっきりくっきり見えていたらいいな。