えー、まずは萩尾望都先生が、紫綬褒章を受章なさいましたね!
心からおめでとうございます合格
そして役所広司さんも受賞おめでとうございます!
山本五十六には心から、男っぷりに焦がれさせていただきました。
日本刀に手を置いて、ジャングルに墜落するまでの機上での表情、今も胸に焼付いてます。

おもえば萩尾先生との出会いは、岡山の田舎の家にどういうわけか放置してあった別冊少女コミックの「ポーの一族」でありました。
(じーちゃんばーちゃんの家なんだけどいとこの誰かが置いてったらしい)
その異次元の芸術性!
目のでかい美少女がバレリーナ目指してライバルの靴に画びょうを入れてたりする
そんなマンガが人気を博していたころ
萩尾先生の薫り高い漫画のブンガク性に、どれだけ酔いしれたことか。

確か最初に読んだのが「グレンスミスの日記」?

水☆迷☆宮

あと、ポーチで少女が仔犬と、とかみつくにの娘、とか 小夜の縫うゆかた とか
ファンタジーから日常風景までなんでも網羅するその世界に驚愕。
とにかく読む作品読む作品がいちいちねむたい目を覚まさせてくれる感じで
子ども心にも
こういう人をこそ天才というのだ!とふるふるしていました。
そのころ、大島弓子とか山岸凉子とか綺羅星のごとく天才と呼べる漫画家が続々と名作を発表していて
ほんと、いい時代にいい漫画に染まったなあと思います。

あの方は年を経るごとに意欲的な作品を描くように進化してゆくかたで
一連のSF、11人いるシリーズから始まって
スターレッドとか百億の昼と千億の夜、マージナルとかメッシュとかの壮大な人間ドラマ、その究極である「残酷な神が支配する」まで、どれをとっても名作揃い……
残神は、義理の父にレイプされ続ける少年を主人公にした長編作品なんだけど
少女漫画というくくりで、あれほどの容赦ない描写をしたのは
萩尾さんが最初で最後なんじゃないかと。

水☆迷☆宮

同時に、人間の業とか欲望、暗黒部分と祈り、愛の本質、そして
愛の反対語は憎しみではなく無関心、というマザーテレサの言葉をなぞるように
悲劇の少年を取り巻く人々の罪まで浮き彫りにして、とにかく、えぐられ続ける作品でした。
(手塚治虫漫画賞受賞してから過激さに拍車きがかかったような……☆)
後半、主人公が義理の兄と性的関係を結んで、その兄が彼を救おうとして救えない、というくだりに入って延々延々と話が伸び続けるんだけど
「誰かが傷口に愛を注げば立ち直れる」という、人間はそんな簡単なものじゃないぞという信念のようなものを感じました。
心も体も許しも愛もわけ与えても支えても相手が立ち直れるわけではない。
それでも、拒否されても破壊されても、罵倒されても地に蹴落とされても
同じ方向に手を差し伸べ続けることの結果がその先に見えてくる、という、原型のような信頼の光をうっすら見せて、話は終わるのです。

このかたは、それから「バルバラ異界」という
萩尾望都玉手箱のようなすばらしいSFファンタジーを書いて
そののち、とても日常に近い、親子や夫婦や家族のしみじみした物語を静かな筆致でつづっています。
これがまた、滋味があっていいんだわ。
よくこの境地に来たなと、読者としては感慨深いものがあります。
そして、親子仲が決定的に悲惨だった作者としては珍しく
初めて、穏やかで深い愛情を持った母親が、しっとりと描かれるようになってます。
どういう心境の変化なんだろう?

東日本大震災後、一時物語がかけなくなり、そしてやっと筆をとったとき決心して描いたという「なのはな」
これは単行本で出てますね。
原発・放射能関連の話のようですが実はこの人の作品としてそれを見ることに抵抗があってまだ買ってません。
(あくまで虚構の世界の紡ぎ手として受け止めていたので……)
いずれ買おうと思ってます。とにかく、名作、らしいです、読んだ友人によると。
家族や身近な人をテーマにして、小さな日常をこそいとおしむという最近の作風にすごくよくマッチしたんだろうなあ。

水☆迷☆宮

萩尾さんは日本がただしく世界に誇れる漫画家と言っていいと思います。
コミック文化を持つ国は数あれど、彼女は、漫画という分野で文学や映画を凌駕する精神性の深みに至った最初の人なんじゃないかと思う。
(エンタメ性だけでいってません)
外国の評論家もそう言ってました、日本の漫画において、特に少女漫画において描かれる精神性の深さはほかの国のコミックには類を見ないと。
これを機に、彼女の過去作品が再評価されるととても、嬉しい☆

ただ現在の萩尾氏は漫画界のヒット作家の群れの中にはいませんね。
深くはあれどエンタメ性となると、ちょっと面倒くさい域に入ってるのかな。
彼女ほど丁寧に、人間の深みを描いてくれる人はいないんじゃないかと思うんだけど。

まあ、いいものでも時代を外すとこんな感じですよね……

わたしは時代物としてはじめて平清盛にはまっているわけですが
あれも、奥を知れば知るほど面白く深い人間模様が、多層多重に描かれていて
まるでよくできた音楽のように、品のあるドラマだと思うのです。
藤原摂関家と院の確執、情が繋がりにくい形での様々な結婚、
そこから生まれる親子愛のひずみ、兄弟愛のもつれ等々、
永遠のテーマが含まれていて、見れば見るほど脚本としてはよく構成してあると思う。

でも、現代の世に立ち返って重ねられることってあまりないわけで
さらに話が入り組むと、入る気もなくしちゃう敷居の高さはあるのかも……

わたしは、玉木くん演じる義朝の、単純正義感とまっすぐな色男っぷりがとてもストレートで興味深い!
今まで彼が現代劇でやりえなかった役だと思うのです。
今の世に持ってくるとただの無責任肉食男だからね。
純粋でまっすぐな分、折れると惹かれた女の元にすぐ走ってゆくと言う分かりやすさ、そして
父上に殴られたよっ!の裏にある父恋しさをすぐ見破られる弱さ。
かわいいじゃないですかにひひ
由良と常盤、どちらも時代の中で健気に生きる凛としたいい女ですよね。
「俺の子を生め!」と言いながら子供を増やし、自分の勢力を広げて天下に挑む。
そんなスケールのでかい生き方が堪能できる平安の絵巻、これからも楽しみにしてます!!
いい音楽もいい絵も言い漫画も、人生のご馳走なりドキドキ

さーて、髭玉ちゃんインタが載っているという晩餐刊♪ みにいかなくちゃ。ってあれ、来月だっけ?