小さい頃から私の頭の中では一年がアルファベットの「C」のかたちをしていて、
12月はそのCの曲線のてっぺんのがけっぷちにありました。
だから除夜の鐘と同時に毎年私はすごい勢いで落下する。
Cの曲線の下の端まで。
それが怖くて怖くて、31日の夜中はいつもぶるぶる震えてたものです。
当然親に説明のしようもなく、
そしてそれは結構大人になるまで続き、
だから年の暮れは嫌いだった。
今年父を送って、喪中につきお正月はなし。
明日はお正月じゃないのでただの今日の続き。
そう言い聞かせたせいか、Cの形はあまり頭に浮かばず
今年は静かに新年を迎えられそうです。

私にこの世の美しいものを数かす教えてくれた人はもういないけれど
相変わらず美しい風景は私の目の前にあって、
その失われた人の目になり変わってものを見る気持ちで歩くと
すごく不思議。
あなたの目はもうないのに
世界は相変わらずいろんな色をしていて
私はその中にいるのが申し訳ないみたいです。

だからここはほんのちょっと、
12月にいなくなった人に語りかける気持ちで
独り言モードでしゃべらせてくださいませ。
去年と同じにお餅は自家製にしたよ。
せいろで蒸して、臼と杵でつきあげて。
いつもなら庭にガーデンチェアを出して、一緒につきたてのお餅を食べたよね。
ことしも、からみ餅に納豆餅にあんこにきなこ。
餅とり粉を振って陽だまりに置いたお餅がやさしくひび割れていく。

「ウサギが作りたくなった」といっていきなり黒い紙粘土買ってきて
テレビ見ながらこんなもん作ってた年頃の少女A。

あなたの孫は、なかなかいい味出してると思わない?
この間公園の橋をわたって帰ったら
欄干にずらずらこんなオブジェがぶら下がっていて

思わず「わ、きれい」っていったら、そばにいた作者のアーティストさんが話しかけてきた。
「ありがとう。その言葉が聞きたくてつくってるんです。それだけでいいんですよ。
でもなかなかその一言を言ってくれる人がいなくてね。何でできてるんですかとか、いくらかかりましたかとか、質問が多くて」
「そうですか、簡単な一言なのに」
「そのかんたんなひとことを、なかなか聞かせてもらえないんです。
きれいっていってくれて、ありがとう」
だってきれいだもの、ほんとうに。
中はこんななの。
一つ一つの空間に、花の小宇宙。

うちの家族も相変わらず、猫も相変わらず。
いつもの風景、いつもの室内、いつもの目。

きっと私が消えた後も、世界は変わらずに回り続ける。
ゆるやかに変わる風景の中で、短い命が消えては繋がれて
その風景にいろんな人が「きれい」といいながら消えてゆき、また生まれるんでしょう。
さまざまな思いと、いろんな色と、闇と光と、音と、それから……

このところ繰り返し頭に浮かぶ一節があるの。
以前見た映画の中のセリフ。
気がつくと同じ所ばかり頭の中で繰り返してるんだ。
おセンチでもいい、なんでもいい、取り出して眺めて、もう一度記憶の中に戻すことにするね。
こんな風に撮影旅行を続けていると、毎日がとても楽しくて
すべてに終わりがあるなんて思えなくなるわ。
けどいつだって、いつだって、別れは思いよりも先に来るの。
それでもみんな微笑みながらいうの、
さようなら、またいつか会いましょう
さようなら、またどこかでって。
だからわたしも、こんな遠くに来ちゃってるけど、まことに言うね。
さようなら、
またどこかで会いましょう。

それでは、皆みなさまも、よいお年を
12月はそのCの曲線のてっぺんのがけっぷちにありました。
だから除夜の鐘と同時に毎年私はすごい勢いで落下する。
Cの曲線の下の端まで。
それが怖くて怖くて、31日の夜中はいつもぶるぶる震えてたものです。
当然親に説明のしようもなく、
そしてそれは結構大人になるまで続き、
だから年の暮れは嫌いだった。
今年父を送って、喪中につきお正月はなし。
明日はお正月じゃないのでただの今日の続き。
そう言い聞かせたせいか、Cの形はあまり頭に浮かばず
今年は静かに新年を迎えられそうです。

私にこの世の美しいものを数かす教えてくれた人はもういないけれど
相変わらず美しい風景は私の目の前にあって、
その失われた人の目になり変わってものを見る気持ちで歩くと
すごく不思議。
あなたの目はもうないのに
世界は相変わらずいろんな色をしていて
私はその中にいるのが申し訳ないみたいです。

だからここはほんのちょっと、
12月にいなくなった人に語りかける気持ちで
独り言モードでしゃべらせてくださいませ。
去年と同じにお餅は自家製にしたよ。
せいろで蒸して、臼と杵でつきあげて。
いつもなら庭にガーデンチェアを出して、一緒につきたてのお餅を食べたよね。
ことしも、からみ餅に納豆餅にあんこにきなこ。
餅とり粉を振って陽だまりに置いたお餅がやさしくひび割れていく。

「ウサギが作りたくなった」といっていきなり黒い紙粘土買ってきて
テレビ見ながらこんなもん作ってた年頃の少女A。

あなたの孫は、なかなかいい味出してると思わない?
この間公園の橋をわたって帰ったら
欄干にずらずらこんなオブジェがぶら下がっていて

思わず「わ、きれい」っていったら、そばにいた作者のアーティストさんが話しかけてきた。
「ありがとう。その言葉が聞きたくてつくってるんです。それだけでいいんですよ。
でもなかなかその一言を言ってくれる人がいなくてね。何でできてるんですかとか、いくらかかりましたかとか、質問が多くて」
「そうですか、簡単な一言なのに」
「そのかんたんなひとことを、なかなか聞かせてもらえないんです。
きれいっていってくれて、ありがとう」
だってきれいだもの、ほんとうに。
中はこんななの。
一つ一つの空間に、花の小宇宙。

うちの家族も相変わらず、猫も相変わらず。
いつもの風景、いつもの室内、いつもの目。

きっと私が消えた後も、世界は変わらずに回り続ける。
ゆるやかに変わる風景の中で、短い命が消えては繋がれて
その風景にいろんな人が「きれい」といいながら消えてゆき、また生まれるんでしょう。
さまざまな思いと、いろんな色と、闇と光と、音と、それから……

このところ繰り返し頭に浮かぶ一節があるの。
以前見た映画の中のセリフ。
気がつくと同じ所ばかり頭の中で繰り返してるんだ。
おセンチでもいい、なんでもいい、取り出して眺めて、もう一度記憶の中に戻すことにするね。
こんな風に撮影旅行を続けていると、毎日がとても楽しくて
すべてに終わりがあるなんて思えなくなるわ。
けどいつだって、いつだって、別れは思いよりも先に来るの。
それでもみんな微笑みながらいうの、
さようなら、またいつか会いましょう
さようなら、またどこかでって。
だからわたしも、こんな遠くに来ちゃってるけど、まことに言うね。
さようなら、
またどこかで会いましょう。

それでは、皆みなさまも、よいお年を
