✧これは有諏川ヨーコによる、妄想図書館の旅の記録である。


■有諏川ヨーコの旅録:第12話

空市と浮かぶ屋台

ヨーコは夢を見ていた


遠くで大地が震えていた

金属が触れ合うような音が


風に混じって聞こえてくるん


それは戦の場面のようだった


ふと見ると

空中に1人の翼人が滞空していた


悲しそうな顔をしている


気がつくと場面はかわり

地底では何か儀式が行われている


とても静かだった…


気になって彼らに

もっと近づこうと思った瞬間に


海と空でも同じ様に

儀式が行われている場面が見えた


ああ、そうか…

これは慰霊祭のような儀式だ…


やがて彼らの周りに

ほんのかすかに金色のエネルギーが見えた 


何となくそれはほんの微量であるように

調整されているように見えた


それはサーっと戦場の方へ

飛んで行った


その静かさにヨーコは

夢の中で立ち尽くした…


  ーーーーーーーーーーーーーー


はっと目覚めると

まだ、思ったより早い時間だった


「どうしたの?朝から汗かいてるね」


何か夢を見たはずなのだが

あまりはっきりとは覚えていなかった


「悲しいような、切ない何かを見た気がするんだけど…思い出せない…」


「そう。土地の歴史が、何か囁いたかな?」


歴史って囁くものだったろうか?

まぁいいか…


今日は、風市の日だという

とても楽しみだ


宿から外へ出てみると

これから風市に行くのか

人が1つの方向へ流れていく


人の波に乗るように行ってみると

そこは大きな広場になっていた


そして驚くべきは…


「うわ、浮いてるね」


そうなのだ、市といえば

屋台などを想像していたのだが


確かに屋根は付いてるけど

台には足が付いていなかった…


ここでは照明だけでなく

台も浮いているのだ


「浮かせる必要ある?」


「雲も浮いてるしね」


いや、必然性は何処にあるのだ


それにしても賑やかだ


食べ物もあれば、工芸品もある


「あ、見て。あれ、きれい!」


そこには様々な空色の石が売られていた


ヨーコは聞いてみた

「これは何の石?」


「これはみんな空石だよ」


「ウチが扱っているのは、主に空石。他には海石と地石があるよ」


「きれいね。これはアクセサリー用なの?」


「空石はものを浮かせるのが得意だよ」


と屋台主はパチンとウインクする


「ここに有るのは、アクセサリー用に選んだものだけどね」


そのメカニズムはわからない。

でも、アクセサリーとしてなら買ってみても良いかも知れない。


「花子さんと、ガヤ太のお土産にしようか…」


ヨーコは自分の分も含めて3つ選んだ。


「これをアクセサリーに加工するのは、特別な技術が必要なの?」


「その場合は、特別なものは必要無いよ」


石を受け取る

ヨーコはそれを1つ

街を照らす照明にかざしてみた

 

本当に美しい…


その光は、理由もなく美しく

そして理由もなくそこにあった。

ヨーコはそれ以上を考えなかった。