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学校図書館の分類を変える、学びが変わる。

~児童・生徒の視点や動線と、授業者の導きたい導線を考えた分類による学びの変化~

 

Ⅰ:学校図書館に適した分類とは何か

①学校図書館とは

②公共図書館とは

③学校図書館と公共図書館の違い

④図書館システムと学校図書館

⑤学校図書館の分類と公共図書館の分類の相違点についての考察

⑥学校図書館に適した分類とは何か

 

★★★★★続き★★★★

⑤学校図書館の分類と公共図書館の分類の相違点についての考察

 

学校司書は、蔵書をする際、

児童・生徒の学びの動線を考え、

同時に授業者の導きたいと考えている学びの導線を考えて、分類記号を決める。

すなわち、

類・綱・目だけでなく、

分目(第4次区分)まで、それでも足りない時には、

厘目まで念頭に入れた詳細な分類を念頭に入れておく必要である。

 

学校図書館と公共図書館とは、

利用者や設置目的に多少重なる部分があっても、

基幹となる教育的な設置目標部分に大きな違いがある。

基幹となる教育的目標が違うように、

図書資料によっては、

公共図書館と学校図書館の分類記号に違いがあって然るべきものもある。

 

学校図書館の分類と公共図書館の分類とは違うと考える例を挙げてみる。

 

一番分かりやすいのは『ことわざ』である。

 

通常、

公共図書館では

『ことわざや慣用句』は、

8類の言語ではなく、3類の社会科学に分類され、排架される。

理由は、

日本十進分類法の中の388.8に『ことわざ』と言う項目があるからである。

しかし

 

学校図書館では8類の言語に排架する。

8類に『ことわざ』があるのは、

言語学習をするに当たり、理解しやすい上に

児童・生徒等、利用者にとって矛盾がなく単純明快だからである。

 

公共図書館でも、

児童担当により児童書の『ことわざ』を扱った本や、

学習用図書資料としての『ことわざ』を8類に分けている図書館もあるが、

児童コーナー以外の多くは3類となっている。

 

ところで、今年受けた様々な講義の中の一つで、次のような話を耳にした。

 

「・・・子どもに一番人気があるのは0類で、皆が借りていきます。子ども達は、0類にある昆虫や花の図鑑を借りるのが大好きです」

 

この言葉の中で気にして欲しいのは、

「0類にある昆虫や花の図鑑を借りる」という部分である。

この学校図書館では、031百科事典として図鑑が揃体されていると考えられる。

 

ところが、図鑑を揃体状態にして置くと、

図鑑だけの調べ学習で終わる可能性があるので、

学校図書館では、できる限り主題で排架していく方が良い。

 

 

実際に、

公共図書館では、図鑑を揃体本として並べているのか検証を試みてみよう。

 

2016年に出版された図鑑について、

日本全国の公共図書館での分類を、

インターネット検索でそれぞれの図書館に入り、蔵書検索機能を利用して確認した。

 

検証 2016年11月の某日実施。

『原色ワイド図鑑 4巻 恐竜 (学研2016年3月)978-4-87455-133-2』は

公共図書館での分類記号はどのようになっているか確認する。

 

検証手順 

①無作為に選んだ日本全国の市立図書館及び区立図書館のホームページに入る。

②蔵書検索欄にISBNまたは「原色ワイド図鑑」と入力(完全一致させるため)

③2016年3月に出版、書名等が完全一致した図書館で分類記号を確認。

 

手当たり次第に無作為で選んだ図書館のホームページに入り、

蔵書検索に入力した。

比較的新しい本だったので、必ずしも蔵書されているわけではなかった。

 

結果 

100館中一致した蔵書のある館は85館であり、

うち、所蔵状況は以下の通りであった。

 

030または031で蔵書している・・・64館(おそらく揃体して排架)

457または450で蔵書している・・・21館(主題で分けて排架)

 

『原色ワイド図鑑 4巻 恐竜 (学研出版 2016年3月)978-4-87455-133-2 』は、

2016年3月に発行されている比較的新しい本である。

 

4巻という部分からも分かるように、

自然科学を中心として揃体された児童向けの図鑑である。

 

031となっていた図書館で、

同図鑑は『原色ワイド図鑑』シリーズとしての分類記号であり、

巻冊記号の部分には1からの連番がついている。

 

また、457としている図書館では、

各巻の主題での分類記号であり、この場合457恐竜としての排架となる。

2桁45となっている図書館に関しては、

おそらく児童コーナーで、4類の自然科学への排架と考えられる。

 

検証の結果、75%の公共図書館で『原色ワイド図鑑』が揃体されて0類排架されており、

残りの25%は4類排架となっている。

 

この検証は、

どちらの分類が正しいとか、

間違っているとかではなく、

公共図書館での図鑑の扱いを確認するものである。

 

たった一冊、一組の揃体本の図鑑では、

検証と言い切れないかもしれないが、

この本を検索している過程で、

公共図書館では、

他のシリーズも同じように揃体本として蔵書している可能性があると考えられる。

 

日本十進分類法は、

車のハンドルで言うところの遊びの部分があり、

それぞれの図書館に適した柔軟な分類も可能としている。

 

つまり、学校図書館であっても公共図書館のように

031百科事典・図鑑として揃体本扱いし

排架していても別段不思議はないし誤りではない。

 

共通の分類記号であっても間違いはないが、

それぞれの図書館の設置目的から考える時、

 

公共図書館と共通の分類をしていては、

学校図書館の目的が達成できないのではないか。