懐かしい音がした。
心が躍るような、それでいて滑稽で優しい音。
最近聴いたのはいつだったか...それさえも覚えていない。
――--ポッ…ポツ…
「会社に傘置いたきたときに限って…」
午前中に個人的な仕事を終わらせ、担当が替わったことを知らせに取引先に来ていた。
前任は、あまりいい印象を与えていなかったらしく、新しく俺が任されることになったのだ。
今でも、一杯一杯な仕事は、そいつのせいで、今以上に忙しくなるだろう。
「(まぁ…何かいい出会いがあるかもしれないしな……はぁ…)」
『ジェジュン君!君しかいないんだ!頼む!!!』
土下座まで部長にされたもんじゃ、断るにも断れないだろう...
つい5年前までは、新社員で何もわからず先輩に怒られっぱなしだった俺も
いつの間にか、後輩を指導し、大きな企画まで任されるようになってしまった。
営業、営業、営業、大きな企画、、、、
こうもなると、無理やりプラス思考に考える方法しかない。
取引先の会社の出口で、ボーっと突っ立ていたら
今までの小振りな雨は一体なんだったのか、というような大降りになってしまった。
「うわー…走るしかないか…」
たまには、雨に打たれて頭でも冷やすか…。
――そう考えて、足を一歩踏み出そうとしたときだった。
懐かしい音が、したのは。――――
「傘、一緒にどうですか?」
そこには昔と何も変わらない、輝く目を持った
あいつ、がいた。
You're my Melody
「おっちゃん! 生二つで!」
小さい店なのにも関わらず、花の金曜日?だからか、すごく賑わっている居酒屋に、何故か俺とあいつ……
チョン・ユンホ がいる。
「生でいいよな??」
(や、頼んだあとに聞くなよ笑)
と、心の中で言いながら苦笑いをした。
あの頃と何も変わらない、ましてや、あの頃以上に暑苦しいオーラを放ったユノは、始終ニコニコしている。
ビールが2つ机に並べられ、乾杯、と小さくお互いのグラスを鳴らした後、少し間を空けて、最初に口を開いたのは、ユノだった。
「…で、元気にしてたのか?ジェジュン。」
「うん。それなりにね。…ユノこそ、まさかあの会社にいるなんて思わなかったよ。」
(だって、ずっとサッカーしかしてなかったじゃん…)
思ったことは口に出さずに、心に押し殺した。
何故、俺がユノと会うことに、こんなに気まずくなっているのには、理由があって。
「だって、お前……俺に何も言わずに、上京したじゃないか。今世に、連絡取れない様になったのは、お前くらいだよ、ジェジュン。」
そう。
俺はユノに何も言わずに、進路を変え、
ユノと同じ大学に行くはずだった未来を変えてでも
上京して、エリートコースを歩いてきたのである。
-ずっと、一緒だからな!-
そんな約束も、もう雨に紛れて消えていってしまった。
「……8年も、俺をほったらかして、何してたんだよ。」
「……ごめん。」
高校を卒業とともに、親のもとを離れて一人暮らしをした俺は、もちろん、ユノと会うことは一切無かった。
嘘。
ユノと会うことを、避けてただけなんだ。
To be continued....
※長編になる予感。ただの自己満妄想小説。
Deepなシーンは、他の素晴らしい作家の方で満たされているので、切ないグッとくる小説が書けたらいいな、と。
