S side






昼飯の時に英語のサンチェ先生に呼び出され、

授業後に先生と面談するぞと半ば脅しのような指示を受け、いつもより遅くクラスに入室することになった。



俺が先生と話している間

潤を1人で待たせるには心許なくて

今は二宮くんに潤とマックで待って貰っている。



学校や家からわざと遠目の塾を選んだから

いつもみたく友達に潤を頼めるはずもなくて

昨日今日知り合った彼に頼み事をするのは

少しだけ不安だった。




「でもさ、『お前誰だよ!』は酷くない?」

「それはニノが授業中に急に吹き出したから。くくくっ」

「あっ、ほらまた笑った〜。潤くんさっきから笑いすぎだって〜。」




そして着いてみればこれだ。

4人がけのテーブルに向かい合って座る2人。

なんだこの楽しそうな雰囲気は。



「ただいま。」

「あ、翔くんどうだった?」

「疲れた。」

「そっか。お疲れ様。」



潤に背中をさすられながら

まんまと隣りをゲットする。



「櫻井くん、お帰り。」

「ああ、二宮くん、ありがとう。他に頼む友達がいなくてさ、本当に助かったよ。」

「と、友達?…オレが?」

「だから言ったじゃん、翔くんだって友達だって思ってるよって。」

「う、うん。」



少し複雑そうに俺を見上げる二宮くんは

目がきゅるっと音がするんじゃないかってくらい、潤って見えた。



「え、泣く?」

「泣いてない。」



思わず発した俺の声に

咄嗟に反応したの二宮くんが可愛い。


え。

可愛い…?




「ね、翔くんも二宮くんのこと『ニノ』って呼ぼうよ。そしたらもっと友達っぽいじゃん。」

「ニノ…?」

「うん。小学生からのあだ名なんだって。ほら、翔くん。」

「え?…なんで俺まで。潤が先に仲良くなったんだろ?」

「いいから。ほら。」




俺たち二人のやりとりを静かに見つめていた二宮くんに、『ニノ』と呼びかけた。とたんに耳まで赤くなって目がキョドりだす。



え。

そんなに?



「ほら、ニノも櫻井くんじゃなくて翔くんて呼んでみてよ。」

「や、オレは別に…」

「いいから。翔くんだってニノの事ちゃんと呼べたよ?」



ちゃんと呼べたって何だよ。

なんて言おうとして潤に振り返ると、

潤は意外と真剣な顔をしていた。




「ニノは、言えるよ。」

「ん。……翔くん…?」





は?


いや、



潤が可愛いのは当たり前として

二宮くんは……



意外にも


ほんの少しだけ



可愛いかもしれない。









うん。
可愛い♡ぺろぺろ。