S side

















当時No.1だった岡田さんは、オーナーから言われて俺たちの世話係をしていた。



普通はバイトの俺らが先輩を見て学ぶんだけど、オーナーは俺達をしっかりと教育したいとかなんとかで…




「なんだよ、二人ともすげーイケメンじゃ
   ん。キラキラにギラギラって、ナイス組
   み合わせだな。」
「俺には、櫻井よりたくさんのお客をつけ
   て下さい。コイツに勝ちたいんで。」
「付けるって言うか…お前を選んでくれる
   のはお客さんだからな。お前が努力しろ
   よ。」
「……はい。」




松本は何かと俺に勝とうとしてた。


俺の話をどこかで聞いて、しきりに気にかけてくれていた。





死に急ぐように女を漁り、傷つけて、
自分の居場所なんてもうないのに
それでも、どこかにゆうきの影を探し続けていた。





ある時、酒を飲んで口論になった俺と松本は、取っ組み合いの喧嘩をした。



誰でもいいから俺を殴ってくれ、俺を傷つけて、そして…殺してくれてもいい…。




そんな俺の姿は松本にはどう写っていたんだろう…





松本は、何度も何度も俺を殴りながら、

『生きたくても生きられなかったそいつの分も、櫻井がしっかり生きてやれよ!』

なんて言って、泣いてたっけ。





松本の気持ちはありがたかった。でも俺は生きたいというよりは、それからも、ゆうきを失った孤独を何かで埋め合わせしようとしていただけだった。






男相手に媚びを売る気にもなれない。

話を聞いて、相手を褒めて、爽やかに笑えば…いつの間にかお客は俺を指名するようになっていった。



酒も作った。ウィスキーを作って指で混ぜてくれと言われればそのようにしたし、アフターに誘われれば、その人が満足するように抱く事もあった。







ある時、岡田さんに声をかけかられた。



「お前…何考えてんのか、全くわかんねー
   目をしてるな。」
「なんすかソレ。」
「可愛い目をしてんのに、あったかみが感
   じられねーんだよ。お前…本気で人を好
   きになった事、あんのか?」




本気で人を好きになったら
その先がどうなんのか、
アンタは知ってんのか?



人を好きになるなんてのは
心底くだらねーんだよ。





「あ? 」
「お前な…」




俺をじっと見つめた岡田さんは
その先の言葉を続けはしなかった。




松本が何か話したのか、それは知らない。
知ってたとしても、それがどうだと言うんだ。




ゆうきを失って、俺はただの肉の塊として生きる事を選んだんだ。死んでアイツの所に行く事も考えた。でも、それをしたら天国のアイツに嫌われそうで、自分からは命を断つことが出来ない。






お前無しで、この先何年生きなければ
ならないんだろう。



この先何年我慢したら
お前に……会えるんだろう。







死ぬ事と生きる事の狭間に置かれた自分には、目の前で俺に会いたいからと金を払い、突き上げられて喜ぶ客たちは、あまりにもバカバカしく見えた。



俺が甘い言葉をささやき微笑めば、コイツらはいくらでも俺に金をつぎ込む。




笑えるだろ?




なあ、ゆうき…




笑ってくれよ…





こんなバカな俺を、

笑い飛ばしてくれよ…