N side











体を拭いてくれる先生は、また、ティッシュをゴミ箱から外してる。



「クスクス。それ、ゴミ箱に入った事って
   あるんですか?」



ゴミ箱横に落ちたティッシュを拾って捨ててきた先生が、また、俺の上に体重をかけてくれた。



この重みに幸せを感じてしまう。



「そりゃあるよ。カズが見てるから入ん
   ねーんだよ。」
「ホントかなー。」






『細すぎる』と言われるオレの腕の中にいる先生。胸なんか舐めたって何も出ないのに、今もまだペロペロと舐めている。



「ん…ふぅ……」
「来たばっかで疲れてんのに、悪かったな。」
「んっ…大丈夫。オレもそうしたかったから。」




顔を上げた先生は

『やっぱりお前は可愛いな』

なんて、眉毛がダダ下がっていた。









お昼の時間はとっくに過ぎてて、
そろそろお腹が空いてきた。



どこにも行きたくなくて、ただただ、もっとくっついていたいからって、2人でゴロゴロしながら キ スをした。




「さすがに腹が減ってきたな。」
「先生、朝は?」
「食べてない。」
「えっ!じゃあ、お腹空くって。なんか作
   るよ。」
「飯は炊いたんだけど。」




先生が準備してくれたオレ用のTシャツとスウェット。



いちいちベルトを外すのが面倒臭いって、
買ってくれた。最初は何も着るなとか言われたけど、そんなのただの裸族じゃん。て笑ったら、次の時にはオレ用のスウェットが準備してあった。



大人ってすげー、と思った瞬間だ。




キッチンに入ると、やっぱり先生が後ろに立っていた。



「や。先生、邪魔だし。」
「今日はこれを準備しましたー。」



機嫌よく手渡されたのは、ビニール袋に入った布。



「え……何コレ……」
「何って、約束のエプロンじゃん♡」




バカだ。
先生ってホントにバカだ…。




ビリビリと袋を破いて、中から出てきたものは…



オレには悲しい程に、たくさんのフリルがついた真っ白なエプロン。




「これをオレが着るの?」
「そ。しかも裸でな。」
「だから…裸族かよ。」
「そ。俺らは裸族だ。」





履いてんじゃん。
先生はしっかりとスウェット履いてんじゃん。って、先生のゴムひもの所をパチンと引っ張ってやった。





「痛くない。それを我慢したら着てくれ
   るってことなんだろ?」
「あのね先生。ちょっと怖いよ。」
「あはは。怖くはねーだろ。着てみ。服着
   たままでもイイから。」
「当たり前です。」




どっかのメイド喫茶からくすねて来たのかってくらいフリフリしてる…




恥ずかしい…




マジで買ってくるとは思わなかった。
そんなに見たかったのか?
出来れば普通のエプロンが良かったんだけど…。




櫻井先生って、こういう子が趣味だったのかな…。今までも買ってあげたりとかしてたのかな…。





「こんなの、どこで買ったんですか」
「ん?ネットで。」
「はぁー。」




思わずため息が出た。


先生の趣味…着いていけるかな…
この先、オレに色んな服とか着せる気だったらどうしよう。




「言っておくが、こんなん買ったの初めてだからな。」
「ホントかなー。」
「本当だよ。それに、カズだから着せてみ
   たいんだし…。お前、いま俺のこと変な
  ヤツだと思ってんだろ。」
「うん。…少しだけ……ってか、だいぶ。」
「あはは。ヤベー。俺、本気でヤバイ奴に
   なってんじゃん。」




こめかみをポリポリと掻いてる先生は、
ヤベー奴って言うより…やっぱり、イケめてて可愛い。




オレだって、先生だから…
先生が見たいって言うから着るんだからな。




他の奴らならこのエプロン、とっくに投げつけてるわ。





後ろを向いてから、肩にエプロンの紐をかけてリボンも結ぶ。




「準備できたら言ってー。俺、目つぶって
   待ってるから。」



先生の弾んで楽しそうな声が聞こえる。




「はい。出来ましたよ。」




先生と向かい合わせになり声をかけた。
多分、目を開いてくれたと思う。

オレは恥ずかしくてずっと下を向いてるんだけど、先生はうんともすんとも言わなかった。




何気に先生の方をチラっと見ると、
先生は、口元を手の平で隠して赤くなっていた。




………ってか、
オレの方が赤くなるべき事だろ。



「イイ…」
「イイんですか?…オレ、男だよ?」
「イイ…」
「マジすか…」





惚けてる先生は、正面からオレを抱き締めて、長い間離してはくれなかった。








(`・З・´)<イイ♡