N side
教室にカバンを置いて、すぐにまた教室を出ようとすると、まーくんに声をかけられた。
「カズ、誰先生のとこ行くの?」
「数学のー。行ってくるね。」
「うん。おつかれー」
ウソ。
誰もオレの事は呼んでない。
思わず口から出たのは『数学の先生』
これさ、完ぺきに櫻井先生の事…だよな。
廊下を歩いて、職員室横の階段を上がる。
少し、屋上で暇つぶしてからまた教室に戻ればいいかな。
敢えてゆっくりと歩いた。
これも時間潰し。
この階段は先生くらいしか利用しないから、ほかの生徒もそんなに通らない。
手すりに手を掛けて、ゆっくりと上がっていくと、青い扉が見えた。
キィっ
重厚にできた鉄の塊を開けると、
眩しくて熱い太陽が見えた。
朝なのに、今日はもうこんなに暑いのか…
あまり音を立てないようにドアを閉めてから、裏手の方に周る。
ちょうど日陰になるそこに、
人影が見えた。
ヤバイ。
屋上、出入り禁止なのに…
オレがここにいる事が、誰かにバレる。
パッとこっちをみた人影がオレに近づいて来た。よく見るとその影は、真面目で口うるさいと評判の、学年主任の先生だった。
なんだよ…
1番ヤベーヤツに見つかっちゃったよ。
「お前、なんでここに来た。」
「や。あの。すいません。」
「名前は?」
「2年の二宮です。」
顔を上げられない。ヤバイなー。ほんと、この人に見つかると怖いんだよ…。
ドキドキしながら顔を俯いていると、
「内緒だからな。」
「え?」
「だから、俺がここでタバコ吸ってた
の、内緒だからな。」
「マジすか?」
パッと見ると、松本先生の手には、
煙立つタバコを持っていた。
バツが悪そうに片目をつぶり、頭をかく松本先生。
ウソだろ…。
「え。お前、見てなかったのか?」
「はい。全然、目に入って来なくって」
「なんだ。俺の早とちりか。でもま、内緒
な。」
そう言って、オレの頭をクシャッと撫でた松本先生は、オレが知ってる怖い学年主任の顔ではなかった。
「それで、お前はなんでここに来たんだ?」
「すいません。ちょっと、時間潰しに。」
「もうすぐ授業だろ。」
「はい。すいません。」
松本先生は、短くなったタバコをすぅっとひと吸いしてからオレとは逆の方向へ煙を吐くと、胸元から携帯用のケースを取り出して、タバコの火を消した。
「そんなに謝んなよ。俺とお前の秘密にしておこうぜ。この事、誰にも言うなよ。」
「え。じゃあ。」
「お前のことも、生活記録簿には書かない
から心配するな。」
「あ、ありがとうございます。」
頭を下げると、その時初めてタバコの匂いがした。
松本先生は、軽く自分の体に香水を振って、ミント味のガムを取り出した。
「こういう後処理とか、あんま見せたくな
かったんだが。」
「すいません。見てません。」
松本先生はふっ。と笑い、オレにもガムをくれた。
オレ達は始業5分前を知らせるチャイムが鳴るまで、何も言わずにそのまま屋上の手すりにもたれて、流れゆく空の雲を眺めていた。

教室にカバンを置いて、すぐにまた教室を出ようとすると、まーくんに声をかけられた。
「カズ、誰先生のとこ行くの?」
「数学のー。行ってくるね。」
「うん。おつかれー」
ウソ。
誰もオレの事は呼んでない。
思わず口から出たのは『数学の先生』
これさ、完ぺきに櫻井先生の事…だよな。
廊下を歩いて、職員室横の階段を上がる。
少し、屋上で暇つぶしてからまた教室に戻ればいいかな。
敢えてゆっくりと歩いた。
これも時間潰し。
この階段は先生くらいしか利用しないから、ほかの生徒もそんなに通らない。
手すりに手を掛けて、ゆっくりと上がっていくと、青い扉が見えた。
キィっ
重厚にできた鉄の塊を開けると、
眩しくて熱い太陽が見えた。
朝なのに、今日はもうこんなに暑いのか…
あまり音を立てないようにドアを閉めてから、裏手の方に周る。
ちょうど日陰になるそこに、
人影が見えた。
ヤバイ。
屋上、出入り禁止なのに…
オレがここにいる事が、誰かにバレる。
パッとこっちをみた人影がオレに近づいて来た。よく見るとその影は、真面目で口うるさいと評判の、学年主任の先生だった。
なんだよ…
1番ヤベーヤツに見つかっちゃったよ。
「お前、なんでここに来た。」
「や。あの。すいません。」
「名前は?」
「2年の二宮です。」
顔を上げられない。ヤバイなー。ほんと、この人に見つかると怖いんだよ…。
ドキドキしながら顔を俯いていると、
「内緒だからな。」
「え?」
「だから、俺がここでタバコ吸ってた
の、内緒だからな。」
「マジすか?」
パッと見ると、松本先生の手には、
煙立つタバコを持っていた。
バツが悪そうに片目をつぶり、頭をかく松本先生。
ウソだろ…。
「え。お前、見てなかったのか?」
「はい。全然、目に入って来なくって」
「なんだ。俺の早とちりか。でもま、内緒
な。」
そう言って、オレの頭をクシャッと撫でた松本先生は、オレが知ってる怖い学年主任の顔ではなかった。
「それで、お前はなんでここに来たんだ?」
「すいません。ちょっと、時間潰しに。」
「もうすぐ授業だろ。」
「はい。すいません。」
松本先生は、短くなったタバコをすぅっとひと吸いしてからオレとは逆の方向へ煙を吐くと、胸元から携帯用のケースを取り出して、タバコの火を消した。
「そんなに謝んなよ。俺とお前の秘密にしておこうぜ。この事、誰にも言うなよ。」
「え。じゃあ。」
「お前のことも、生活記録簿には書かない
から心配するな。」
「あ、ありがとうございます。」
頭を下げると、その時初めてタバコの匂いがした。
松本先生は、軽く自分の体に香水を振って、ミント味のガムを取り出した。
「こういう後処理とか、あんま見せたくな
かったんだが。」
「すいません。見てません。」
松本先生はふっ。と笑い、オレにもガムをくれた。
オレ達は始業5分前を知らせるチャイムが鳴るまで、何も言わずにそのまま屋上の手すりにもたれて、流れゆく空の雲を眺めていた。
