菌にやられてました。ポーン



大宮

N side













相葉さんとの撮影は順調に進んだ。
気分良く巻きで終わらせると、相葉さんと一緒に楽屋へもどる。



ソファには座らずに、帰り支度を整える。
ドアを閉めて入って来た相葉さんが、
オレの隣りに立った。




「にの、今日は、いつもより背中が丸い
  よ。」
「え。そうかなぁ。」
「うん。なんかあった?」



なにもないよ。
いつもと同じ。


でも、この後に…あれが待ってるだけ。




「ねえ。にのはさ、まだ続けてるの?」
「何がよ。」
「もう、やめなよ?絶対良くないって。」
「クスクス。じゃあ、相葉さんが何とかし
   てくださいよ。」
「何とかって。」
「オレの事、慰めてよ。」
「そしたら、やめてくれるの?」




本気で心配する相葉さんが、オレの肩を掴んできた。




「ん。相葉さんが キ スしてくれたら、や
   めようかな。」
「うそ。止められないよ。俺がソレをして
   もいいけど、にのは、また違う人を探す
   だけでしょ。」
「そんな事…ないよ。」
「あるって。」




相葉さんの顔が近づいて、オレのあごが上がるだけ。オレ達の 瞼 が閉じられて、
唇 が 重なりながら、甘 い 水 音がするだけ。




ただ…それだけ…。






どこかで、カタン…と、音がする。







いいよ、もう。
嵐の楽屋はこんなでしたー。って写真を撮られても、何とかなるんだし。




相葉さんとの キ スに、今は没頭させてよ。




首根を持たれて、覆いかぶさるように 抱 き 締 められる。いつの間にか、グングン成長した相葉さんとの身長差は、今ではこんな感じで消化している。




好きっていう感情はいらない。
お互いに慰め合うだけの…キス。




「にの…もう、行くのやめなよ。」
「んー。考えとく。」




心配する相葉さんを残して、オレは楽屋を後にした。






マネージャーの運転で来たのは、
高級な、いかにも芸能人たちが来そうなクラブ。



でもさ、ここなら絶対に大丈夫なのよ。
安全なんだって。



裏を知ってる人たちは、こういう所を利用してるって、Jが言ってた。




マネージャーは別部屋で待機。
オレは黒服の、スラッと背の高い男の人に連れられて行く。



高級そうな赤くて黒い絨毯の廊下。
壁は黒くて、所々に間接照明に照らされた
花瓶やら絵画やらが飾ってある。




完全会員制の個室。





先に来てるプロデューサーは、黒い革のソファに座り、少し飲んでる感じだった。


隣りに座るように促されると、黒服を着た男の人が去って行った。



「ニノ。今日の撮影も良かったよ。」
「ありがとうございます。」
「もっとこっち、来てよ。」
「はい。」





ウィスキーを作って注いでくれる。
その手が、あの人に似ている。



優しいと思う。
お酒を作ってくれるんだから。





『ニノ…』





脳裏に浮かぶのは、あんたの顔だけど
あんたの顔を思い出せるから、ここに来たんだよ。



このプロデューサーの声は、

オレの好きな…あんたの声に、




……よく似ている。






『ニノ』



耳元で囁かれると、ゾクリとする。

瞼を閉じれば、あんたに 抱 かれてると思えるんだよ。




『ニノ、開いてごらん』



『ニノ…いい?』




『ニノ…』






今では、目をつぶらなくても
あんたを思う事が出来るように…なった。









マネージャーは知らない。
本当にただの酒だけの席だと思ってる。






車の中、お腹を押さえた。








「ねえ。悪いけど、うちに早く帰れる?」
「あ、はい。スピードあげますよ。」
「悪ぃね。」









中に出された。



……気持ち悪い。










家に着くと、風呂の水を溜めるのを待たずにシャワーを浴びる。




熱いお湯で。







「掻 き 出 さないとな…」








頭からは熱いシャワーを流しながら、自分の指を、そこに…





「くっ…」






ド ロ っと流れ出る、情 事  の 名残り。


最後の 一 滴 まで出したい。



指で、奥 の 奥まで…




「おおのさん…」



大野さんと過ごしたあの夜が忘れられなくて、あんたと同じ声の持ち主に 抱 か れてるんだよ。




指で、オレ の ソ コ を 掠める…
く ち ゅ り  とした音。
少し指を くの字に曲げる。



「おーの…さん…ぁっ…」



大野さんの長くて男らしい指で…
あの日の夜のように…掻 き 混 ぜる。
あんたの指は、もっとゴ ツ ゴ ツしてた。



あんたの目に射 抜かれたあの 日のことが、頭から離れられない。






シャワーと一緒に流せたらいいのに。







白い湯気の中、立っている事も、
ままならない…




は ぁっ、は ぁっ。




目をつぶると見えてくる
あの日の情景…。








あんたの 指 で、掻 き 混 ぜてよ。
オレの  イ  イ トコ、教えてやるから。




膝が震えだす…。









この涙と共に、すべてを熱いシャワーで
流せたら良いのに。






逆効果な今の環境…








掻 き 出す 指 の  動 きを 早める。
頭の中であの日の、あんたの指 の 動 き に
リンクさせた。



脳裏を掠めるのは、オレを 求 め る あんたの 雄 の 目。そらから、柔らかくて優しい…オレの好きな…あんたの声…。







『にの…』







大野さんが…好き…









忘れられない。







忘れたくない大野さんの… 熱 …。









突 き 上 げ ら れ た 感 覚 を…思い出す。






「ぁ っ…おおの…さんっ…!」























「呼んだか?」



風呂場のドアが…ガチャリと開いた…。







2016.6.14