日本画がうまれたのは明治期です。

奇異に思うかもしれませんが、日本には本来日本画という考えはありません。

西洋から油彩画や水彩画が伝わり、

では、日本に昔からある絵はいったい何なのか?

という相関関係から「日本画」が誕生しました。

油彩画は当時「油画」です。

しかし、どうも日本人には油彩画がしっくりきません。水彩画は抵抗なく多くの人々に受け入れられ、水墨画のたしなみが活かされて、幅広く浸透します。が、洋行帰りの画家は、日本で必ず行き詰まります。佐伯祐三は再び渡仏し、いろいろあって、藤田嗣治はフランスに帰化しています。

荻須高徳も再渡仏し、そこで生涯を終えます。

ヨーロッパでは描けるのに、日本に来ると途端に描けなくなる…

「日本人にとっての油彩画は何なんだ!」

『日本油画』の模索が続きます。

世紀末ヨーロッパは、不安と退廃に満ちています。

人間の本質。

「私は天使を描かない。なぜなら天使を見たことがないからだ。」

クールベは現実社会に目を向けます。人間とは何なのか?

リアリズムの誕生です。

相次ぐ戦乱と、大量破壊兵器の誕生で、科学への不信感がうまれた時代に、人間の本質は理性ではなく無意識にあるという新たな視点が提起されます。

理性に光を当てたカントからの大転換です。

形而上学、深層心理…

ダリが、デ・キリコが人間の本質を探り、さらにマグリットが造形性を深めます。

シュールレアリスムの誕生。

心理学者フロイトのみならず、演劇・文学・音楽・映画と、多方面にわたり文化芸術運動が展開されました。

真の現実とは?現実を超えた本質とは?

やがて、アカデミズムへの反逆から人間の情念に本質を見出します。

フォービズム(野獣派)の誕生です。

それらが日本に移入され、最先端の美術運動として、官展派に挑戦します。

1930年協会の誕生、今日の独立美術協会です。

確かに『てふてふがいっぴき、韃靼海峡を渡』(三岸好太郎)りました。

「海洋を渡る蝶」たくさんいますが…

 

リアリズムの本質を考えるとき、このシュールレアリスムを追求した、独立美術の歴史を抜きには語れません。

リアリズムとは「描写」ではなく、人間の本質を深くえぐる芸術運動です。

この運動を経て、一つの『日本油画』が花開きます。