現代日本の写実主義を代表するホキ美術館。

2019年6月、ホキ美術館でスペイン・バルセロナのヨーロッパ近代美術館(MEAM)との交歓展「スペインの現代写実絵画」展が開催されました。前年秋には、MEAMでホキ美術館の60点を紹介する「Contemporary Japanese Realism」展が開催され、両館の交流を紹介したテレビ番組「奇跡のリアリズム」が2019年6月9日(日)BSフジで放映されました。

けれども、スペインと日本では、いろんな面ですれ違いが目立ちました。特にメッセージとテクニックについて。この場で日本語の「写実」は描写を意味していましたが、欧米でのリアリズム(写実)は「現実」さらには「真実」を意味します。そして「社会」をどうとらえるか。そこには作者のねらい主題(テーマ)があります。

奇しくも、現代日本人の大きな誤解が、明白に読み取れる番組でした。

日本人のリアリズムは、主題をもたない克明な描写であり、アートというより工芸に近い感じです。

「私は天使を描かない」クールベの名言。現代美術の系譜がスペイン現代絵画に受け継がれています。スペインリアリズムは面白い。この知性にくすぐられます。

リアリズムを「写実」と日本語訳すると、大きな誤解をうみます。以前の日本の辞書ではリアリズムを「社会を映し出す事」とありましたが、「最近は克明に描写する事」に偏っている気がします。

この二つの概念を表す日本語は、別々に作り直した方がいいと思います。