他人の仕事は楽に見える…

 

工場勤務は3Kの類です。

「ケガするな」

「体が資本」

仕事の技術よりも前に言われることです。

けたたましい騒音の中、レーンに物が流れ、通路にフォークリフトが行きかいます。

わき見などしている間に、次の製品がレーンを流れてきます。

ちょっとした気のゆるみでモーターに巻き込まれ、詰まった製品がレーンから飛び出します。

フォークリフトにひかれぬよう、足元につまずかぬよう、

気が抜けません。

ある時、同期が

「○○の仕事、楽だろう。」

と私にひとこと声を掛けました。

そんなことはまったくないのに、むしろ、いつも笑顔を絶やさず仕事をする彼が楽そうに見えました。

中卒の私に比べ、彼は職業訓練校を出て、機械の操作やフォークリフトの運転もできます。

わたしから見たら、できるの事多いうらやましい人です。

けれども、

しばらくして、彼は工場を辞めました。

その年の暮れ、駅前のスーパーの入り口でお店のエプロンをかけて、

売り子をしている彼の姿を見ました。

わたしと目が合いあいさつしましたが、それきり彼の姿は見ません。

辞めたのかもしれません。

何年か後に私は教師になりましたが、

指導困難校に昼休みはありません。

休憩時間という名の巡視。

分単位の授業、無給の休日出勤。

放課後は何時間にも及ぶ部活動。

「〇〇先生は普段の勤務時間で仕事を片付けられるんですね。」

という同僚。

その方は休日には出勤しません。

 

人の仕事は見えないものです。

工場で出会った少年は、その後どうしたのでしょうか。

バラはウイルス対策か欠かせません。

病葉取りと、剪定、薬剤散布は必須です。