月に一度くらいの割合で日直当番がまわってきます。

朝、昼。夕刻は部活動終了時刻に合わせて校舎を見回りします。

危険な場所、不審物・不審者、施錠、窓の閉め忘れ…

そして、

壊れたところ、壊されたところ、落書き・掲示物の破損…

もしも生徒玄関の運動靴が片方なくなっていたら、

もしもある生徒の掲示物がはがされていたら、

もしも落書きに生徒の個人名が書いてあったら、

鑑識のように仔細に見て回ります。

荒れの兆候は、さらなる心のすさみを引き起こします。

そのままにはできません。

男女トイレも個室一つ一つ開けて点検します。

トイレはよく壊されます。

夏は7時でも明るく、夕日に照らされながら一人でまわります。

生徒は残っていないはずですが、

音楽室からいつものようにピアノの音が聞こえます。

誰も残っていない校舎は解放感にあふれ、別の世界です。

私は一通り回り終え、職員室に戻りました。

タイミングよく音楽の先生がいたので、

「毎日練習ですね。」

と言うと、驚いたように、

「練習なんてしていません!」

そばで聞いていた教頭が

黙ってうなずき、

「いや、私も聞いた。」

 

誰も何も言えません。

 

異動が重なる学校は、

案外過去を知る人がいません。