私が中卒で木工会社に入った時、寮で同部屋の人が金美卒でした。
中卒の私にとって大卒をじかに見るのは畏れ多いことです。
私が短編小説集『城の崎にて』を読んでいると
「何読んでいるの?」と聞いてきます。
表紙をのぞき込むなり
「シガチョクヤ」
と読みました。
大卒なのになぜ?不思議で仕方ありません。
後々私が同じ大学で学んで、もっともなことと理解しました。
学歴と学力は違うんだと。
金美の学科授業は適当です。
「お前たち、分らんだろう。」
担当教授は当たり前のように言います。
講義は聞き流しと雑談です。
試験は作文です。
けれども卒業後、私も世間様からは同様に見られる立場でした。
フレスコ実習室は反体制派の拠点でした。教授に楯突く輩は英雄です。
むしろ彼らの方が美術を学び、制作に励んでいました。