としえさんは幼稚園の頃からの親友でした。

小学校に入学した頃一番おしゃべりした子でした。

誕生日は4月。

私よりも10カ月も上です。

頭がいいし、運動もできるし、図工も得意です。

私にとってはあこがれの人です。

二人で歩きながら、親のこと文学のこと、人生について語ります。

小学校でも中学校でも一番でした。

その後のことはずっと知らずにいました。

子どもの頃全校で私ととしえさんだけ県の美術展で賞をいただきました。

返却されたその作品を私はずっと預かっていました。

最近自宅に渡しに行ったのですが、だいぶ前に亡くなったと知らされました。

学年400名中常に一番の子。

姉から聞かされたことは意外でした。

「としえは勉強が嫌いだった。」

できる子、優秀な子と言われれば言われるほど、

彼女は演じ続けていました。

進学校に進み、彼女は一番になれませんでした。

彼女は自分の存在価値を見失いました。

彼女は自主退学しました。

姉は妹を誉めたてる周りの人々を恨みました。

「あなたは逃げられたから助かったのよ。」

ヘルマンヘッセの作品に『車輪の下』というのがあります。

主人公のハンスは多感な青年期のなかで挫折します。

私は彼に自分を投影しました。

しかし、本当のハンス・ギーベンラートは彼女でした。

挫折感の中で自己存在の意味を見失い、不摂生のうちに体調を崩し、

若くして亡くなりました。

 

私の散歩道からお墓が見えます。

散歩で通るたびに、私は手を振ります。

あたりはいつも静かです。

河は谷を削り、大地を耕します。

 

幼稚園、大日ヶ原の遠足でのダンス