後年私は美大で美術を学びますが、

ものづくりの基本を学んだのは、

しいて言えば美大ではなく、

工場で働くおじさん、おばさんたちからでした。

石膏デッサンを初めてやったのは、

予備校でした。

二十歳もだいぶ過ぎての実技で、

予備校の先生は、

「石膏デッサンを習うにはもう年で、適齢期を過ぎている。自分で習得する離れ業でも見つけるんだね。」

今でも私は石膏デッサンが嫌いです。(苦笑)

木工で使う道具や材料の種類、

効果的なコツ、

なにより工場での熟練した技が、

後の私の制作に役立ちました。

美大ではその木工制作の隠し技を教えてくれ、と

教授たちに聞かれることもありました。

工場では技術を盗む、こと。

この世の色彩に純粋な色はない、ということ。

絵の具の混合割合だけでなく

混ぜる順番や

下地、重ね塗り、グレイズによって色彩は変化します。

また、隣り合う色によっても。

色彩の数学。

美大で技術の基本は教えません。

石膏デッサンの卓越した同期生たちのほとんどが

学年が上がるにつれて

絵を描かなくなりました。

理由のわからない私が思ったこと。

「絵のうまい人は絵も卒業してしまうし、

私のようにできの悪いものが未練がましく絵を続けるんだな。」

その後も絵を描いている人はほんの数人です。

 

会津磐梯山