高校一年生の時の学校課題で、「羅生門」の続きを書きなさい というものがあったので、それを引っ張り出して書いた。

漢字の誤植以外は訂正無しだから、ところどころ稚拙な表現がありますが、悪しからず~。 

 

羅生門 その後

 利己主義は終息しなかった。自分が耐え忍ぶ為となれば、他人の犠牲など知る由もなかった。そうして、ただ生きることから始まった悪が、いつしか欲を持つようになった。生きていけるようになれば、貯金をした。ある程度貯金が済めば、更なる金銭を求めた。日常のすぐそばに、道徳や秩序などない、そんな剣呑な世界が広がっていた。そんなことが許されるわけがない。ただ、悉く利己主義を貫き通した「彼」にとっては、ただの本能であり、最早罪の意識などないのだろうか。

 

 「これが最後の財産・・・か。」

とある男は、手元に残った銅銭を強く握りしめた。この金が尽きた時が最期、ただし無くなるまでに解決策があるなら、そちらに進むも良い。と心に決めていた。男は貧乏だった。自営業をしていたものの売れ行きが悪く店を閉めた。ものというものをすべて売りつくした。だが、限りがあるのは言うまでもない。ついには家を売り払ってしまったのだ。男に選択の余地はなかった。そんな漢の財布もとうとう底が見え始めた。解決策など一つもない。いや、男は薄々気付いていた。ただその純粋な心は、それをすぐに否定しただけだった。

 男はその枝のように痩せ細った足をふらふらと生き場もなく徘徊させた。すべてが灰色掛かった、悄々たる路地がいつまでも続く。

「もうくたびれた。」

男の足は、絶望の闇に引き留められ、その場に崩れ落ちた。その時、ふと前を見ると、そこには赤い楼が見えた。灰色の中に、煌めく有彩色が見えたなら、それを希望の他に何と考えるだろうか。漢は手を伸ばした。

「今日ばかりは許してくれ。」

男は、絶望を祓い退いて、大儀そうに立ち上がった。すると、煌めく赤に向かって走った。走り続けた。烏や糞なんてものは、他の無彩色の中に呑まれた。それが地獄の炎だと知らずに、男は飛び込んだ。

「こんな立派なご屋敷には、宝があちらこちらに眠っとるのだろうな。」

背徳感や後ろめたさの縄をほどいて開き直った。真っ暗であったが、次第に若干ではあるが見えるようになった。

 足音を盗んで、恐る恐る楼を除くと・・・

「中には、何もない。」

死体は、すでに処理されていた。京都は、ある程度復興していたのだ。

 「とりあえず、ここで一休みするか。」

宝を取り損ねたことより、漢の心を満たしたのは安堵。心を濁してしまった背徳感からカタルシスを求めた・・・

「京都の町は、もう二度と悪化させまいと、検非違使を雇った。」

 男は、聞こえてきたその声と同時に、自らがまた闇の一部に消えていく気がした。真に不運だった。漢はこれまでに一度だって道を踏み外したことはなかった。ただ敷かれた道のあちこちにトラバサミがあっただけ。そして、唯一踏み外した道で、検非違使にとらえられたのであった。

「飛んで火に入る夏の虫ってわけか。道理で楼は煌めく赤色をしていた。いいさ。我が命も残りわずかだ。」

「煩い。御前のような醜い盗人どものせいで、多くの人間が苦労する。」

「正論である。ここにもし老婆でもいたものなら、張り倒して金品すべて掻っぱらって逃げたかもしれぬ。」

長い沈黙の後、検非違使は述べた。

「・・・。そうか。」

よく見るとその手には刃があった。男はその者が検非違使などではないと認知した。そして同時に、自分は殺される身にあることを悟った。

再びの長い沈黙の後、その者は述べた。

「よいから去れ。ここは、お前のような身がいるべき処ではない。…死にたくなくば。」

男は驚いた。どういう心境でものを察すればいいか、わからなかった。

「…見逃してくれるのかい。」

この一言に尽きた。

 ただ、こうなるとその者がどういう所存であるか聞かざるを得ないというか、そういういけない使命感、もとい好奇心に襲われた。

「やい御前は・・・。」

そう男はいうと、その者は、無言で立ち去ってしまった。殺す気は、もとよりなかったのであろうか…。

 ふと下を見ると、闇の地の中に、僅かな光沢があった。銅銭の袋だ。男にとってはとんだ大金だ。

それは、「彼」の足元のあたりにあった。

「まさか…。」

だとしたらこれは受け取るべきものだ、と信じた。正当化した。そして握りしめた。

「もう一度やり直すのだ。このまま死ねぬ。」

暗闇の中でも、有彩色がにじみ出てくるのが分かった。

漢は茨の道を進むことを、決意した。

 なお、下人の行方は、誰も知らない。

 

 

 

【感想】

 まだ幼いので、表現を無理やり文語的にしようとしているのが分かります。ぎこちない表現が散見されますね。

 

 

 

 

 

【多分自分が言いたかったこと】

序盤の1段落は、続きの展開における根幹への提起である。誰を指している段落かといえば、「下人」。

利己主義は終息しなかった。→下人は老婆の一件の後も、盗みの様な行為を続け、自分の利益を求め彷徨った。

はじめは貧乏だったから盗みをやっていたという動機があったが、それも凌げる程「偸盗」すると、今度は貯金するために盗みをしたという解釈。彼にはもう「ためらい」がなくなってしまったのか?というのが、今後の展開への問題提起。

 

2段落以降は、「男」という新しい登場人物視点で描かれている。

「羅生門」本文と似通った表現、もしくは同じ表現を抽出しつつ、その「男」の周辺状況を語っている。

彼は遂にすべてを失い、お金も底を尽きたので、盗みをしなくてはならないと分かっているが、理性でそれを拒んでいる。

病的なまでに窶れ死にかけている彼にとって、外の世界は灰色そのものだった。しかし、「羅生門」に差し掛かった時、

そのインパクトのある赤色が彼を引き付けた。ついに彼はここで、それを最後の「希望」と解釈し、ここでの盗みを決意する。

 

数か月か数年か。兎に角「下人」の一件から日数が経過しており、羅生門の中の屍人はすべて処理されていた。

中には何もなく、盗めるものもないと分かった彼は、いらだつのではなく、自分が盗人という事実には到達しなかったと安堵した。

 

しかし状況は一転、「侵入」していたという事実が彼を脅かす。「検非違使」を装う男に遭遇したのだった。

今までまじめに働いてきた男が、よりによって一度の過ちの日に、捕らえられてしまうなんて。

 

絶望した彼は、どうせ死ぬんだから同じだろう、とその道を覚悟する。

「ここにもし老婆でもいたものなら、張り倒して金品すべて掻っぱらって逃げたかもしれぬ。」

これは演出臭いが、こう発言した男に、検非違使は揺らいだ。

長い沈黙の後、自分の出世を語ることもなく、暗闇に紛れた。

検非違使のさっき立っていたあたりに落ちている袋には、お金が入っている。

ここで「漢」は、神がくれたチャンスだと考えたか、これを正当化して握りしめ、ここで終わっている。

 

ココでの検非違使は、新しい登場人物ではなく、「下人」である。彼は序文の通り盗みでお金を蓄えており、

恐らくまた偸盗しに羅生門に帰ってきたのであろう。だが、そこにいた「男」が、まるで彼の昔を見たようだったので、

感化されて、盗んだお金を、あろうことか落として出ていく。

彼もまた、衝動的に盗みを働いた一人だったであろうと、感覚的に理解したのか。

 

ここで序文の「悉く利己主義を貫き通した「彼」にとっては、ただの本能であり、最早罪の意識などないのだろうか。」は

否定されることに、なっている。

 

と思う。

3年前ともなると、自分の作品が客観視できるほどに、自分とは離れているのが分かる。これがエクリチュールか

作者の考えと作者の手元は違い、更に、作者自身が自分の意見だと思っている事象も、実は言葉に先走るケースが多々である。