俺は床に頭をつけて土下座した。
「悪魔祓いの儀式」は姉貴が考えたプロレス技・・
バックブリーカーを変形させたもので2年前ぐらいに
姉貴にやられて苦痛からガン泣きしてしまった・・
ガン泣きしている間、姉貴は爆笑していた・・
屈辱の記憶・・
「なにそれ?土下座?」
ニヤつきながら見下ろす姉貴。
「うそです・・やっぱもらった・・先生に・・」
半分うそで半分ほんと。
姉貴にとって俺の小学校の担任は近くて
遠い存在、さらに大人。
確認しようがないはず。
「もらった?先生に?はっ?なにそれ?」
姉貴の表情から、頭になかった返しのようだ。
「放課後に手伝いをしてもらったお金・・」
「なんの手伝い?」
「老人ホームの手伝い・・」
近くの老人ホームの手伝いは本当にあるが
もちろんボランティア。
無償の行為。
「はっ?なんで、それで金が発生する?聞いたことねー」
腹が痛くなり始めた・・
「老人の話相手・・誰も手伝わないから
先生が内緒でバイト代をくれることになった。
内緒だから親も知らない・・
適任だからと、俺も選ばれた・・おかあさん
も知らないこと・・」
リアルと言えばリアル。
イケる気がしてきた。
「生徒が集まらないから、お金で集められた・・」
「なんだそれ?ほかにもいるのか?」
「いる・・数人・・」
俺だけ・・というと勘繰られるから
数人と濁した・・
「なんだかわからんが、で、いくらよ?」
「1万・・」
「1万!!高すぎじゃねー?」
「全部で10日手伝った。日給1000円・・
今日も手伝ったから帰りが遅くなった」
「日曜日もかよ?」
「今日までで終わりだし」
沈黙&沈黙
「おまえの担任はだれ?」
「・・雨宮・・」
「金くれる先生は担任なんか?」
「そうだし・・」
俺と姉貴は同じ市立の小学校に
通っていた。
年齢が6才違うから、俺が小1の時に
姉貴が小6だから1年しか被っていないが
そのとき、雨宮が学校にいたか?いないか?
の記憶はない。
「雨宮?・・女の先生か?」
ゲゲ、知っていたのか・・
「そう・・だけど」
「えー・・そうなんだ・・懐かし・・」
「え?担任だったの?」
「担任にはなったことねーが知ってる」
適当に言ったが、信じてるのか?
もう一押しでこの場を回避できる気がしてきた。
「でも、やっぱ、嘘だろ?」
「マジ!!!!こんどはマジ!」
どうにでもなれ、俺は投げやりになった。
「じゃあ、先生に確認しょ!」
ゲゲゲ
「バレマスバレマス」
俺のシックスセンスが激しく反応した。
「ウチから家近いだろう 先生んち」
なんで知ってる・・?
「今度の日曜日に家に行くと言っておけ!」
ピーンチ!思いがけない姉貴の反応!
今さら嘘と言ったら、速攻で「悪魔祓いの儀式」
をされてしまう・・
「え?いくらなんでも、家行くのは非常識じゃね?」
「いや、お前が嘘を言ってるに決まっているが
確証がないからなー、嘘を潰していくしかねーだろ」
「いや、嘘じゃねーし・・」
「ならえぇやん!本当なら金返すぞ!」
「え?なんで?」
「ふつー金なんて渡さねーだろ、自分の生徒に?!
センコーの狙いを知りたい!」
保護者ヅラしやがって・・
俺からの次の嘘が出ないようなので
姉貴はベットから立ち上がった。
早く出ていけ悪魔!
「アポとっとけよ」
と部屋を出ていく前に振り返り言った。
「あぁ・・・はい・・」
悪魔からの解放・・
言葉攻めから解放されたようだ・・
安堵からベットに飛び乗り
部屋の天井を見上げた。
しかし、どうする・・
とりあえず、雨宮に相談するしかなかった。
次の日、学校で雨宮に話すタイミングを探した。
休み時間が10分なので、話すタイミングがない。
授業中、何度も雨宮は俺に向けてウインクをしてきた・・
教科書を読みながら、クラスの机を回るときに
俺の肩にだけ、そっと手を乗せてきた。
彼女気取りか?
放課後になり職員室に向かった。
ガラ ガラ・・ガラ
室内に入ると、雨宮が自分の机に座っていた。
「先生これ・・」
ノートを切ったメモ書きに「話があるから屋上に来てくれ」
と書いたものを、そっと机に置いて職員室を出た。
そのまま3階の上にある屋上の踊り場へ向かって
階段を上がり、雨宮の到着を待った。
屋上の扉には鍵がかかっており、勝手に
出ることはできなかった。
屋上は立ち入り禁止なので
一度も屋上に出たことはない。
どんな感じかも知らない。
放課後の生徒の騒ぐ声が、天井に共鳴していた。
友達に見つからないよう、階段の死角に隠れた。
ジャラジャラした金属音と人が階段を上がってくる音がした。
雨宮が屋上の鍵を持ってきたようだ。
「ちょっと待ってね」
雨宮が鍵で屋上の扉を開けた。
2人とも屋上に出た。
曇り空が広がった。
黒い鉄柵で囲まれているようだ
小さな物置があるだけで、他は何もない。
雨宮がドアを外から施錠した。
ガチャ・・
「なに、シンジくん、話って?」
俺は雨宮に抱きついた。
身長差から雨宮の乳房に顔を埋めた。
「ちぇん、ちぇい、ちゅき・・」
俺は心にも無いことを赤ちゃん言葉で
言った。
