田舎に住んでいた中学生の時、担任教師の発案で、
「班ノート」というものがつくられた。
男女6人程度の班の中で、A3サイズほどの
スケッチブックを回し、絵や写真、文章を
自由に書くノートだった。

差し障りのない内容を書いては回す日々。

ある晩、私は、妙な気分に陥っていた。
手元にあった、8センチほどの大きさの
キスをする形になった唇の形のシールを
ノートのど真ん中に貼り付けた瞬間から、
その気分は始まったのだと思う。

「ぶちゅ」と書いた。

回りに、小さな唇のシールをペタ、ペタ。

どんどん興奮の高まっていった私は、
「うふーん」
「いやん」
などと、言葉を継ぎ足して行った。
気がする。

気がする、のは、あまりよく覚えていないから。

翌日、私は班の、次の人に、手渡した。
班の仲間は、少し驚いた顔をして、そして
少し困ったような顔をして、私を見た。

それから数日して、
班ノートは何の説明もなく、クラスの中から無くなった。

初めて恋を知り、
初めて死にたいという思いを抱き、
友達のトイレの付き合いに疑問を抱き、
異性と一緒の保健の授業で顔を赤らめ、
そして、班ノートには変態な自分をさらけ出した。

中学三年間というのは、キラキラした青春の時期であり、
同時に、消してしまいたいほどの恥ずかしい時期でもある。
班ノートの記憶は、私のその三年間の象徴でもある。