I'll be back. | hiroチャンのブログ

I'll be back.


1984年5月12日

T-800とカイル・リースが2029年の未来から転送されてきた日。木曜日。転送されてきた時間は前者が深夜の午前1時52分、後者はその直後。(映画『ターミネーター』ヨリ)







《作品解説》
製作に纏わるエピソードとして、キャメロンが見た悪夢の話がある。前作『殺人魚フライングキラー』が失敗した際、彼は評論家やマスコミにもひどくこき下ろされたため、屈辱の余り熱を出して寝込んでしまったという。そのとき、「炎の中からロボットが現れて自分を殺しに来る」という悪夢を見た事が、本作を製作するきっかけとなったと語っている。

作中で「審判の日(Judgement day)」とされるのは1997年8月29日だが、この月日は、当時アメリカと冷戦を激化させていたソ連による初の原爆実験(RDS-1)に由来し、映画が公開された前年の1983年には第三次世界大戦が起きかねない監視システムのコンピュータが核ミサイル発射を誤報した事件も起きていた。キャメロンは本作は冷戦を意識していたことを述べている。

製作するに当たって、キャメロンは「現代の技術では殺人ロボットの実現は不可能であるし、かと言って未来の話ではセットに費用がかかる上に観客にも受け入れがたいと考え、その結果、未来の殺人ロボットが現代にやって来るタイムトラベルのアイデアが浮かんだ」と語っている。

《人選》

主役のT-800について、企画当初の予定では続編『ターミネーター2』のT-1000の様な「一見すると貧弱そうな男が異様な強さを発揮する」というキャラクターを構想していた。ランス・ヘンリクセンが候補に挙がっておりパイロット版も制作されていた。他にも、O・J・シンプソンをターミネーター役に配役する構想もあった。




一方、俳優としてのキャリアが浅かったシュワルツェネッガーは、カイル・リース役を望んでいた。しかしキャメロンが、カイル役候補として彼と会食したことを機に状況が一変する。彼はシュワルツェネッガーの似顔絵を描いている内に、T-800役に相応しいと考え直す。さらに、彼からT-800のバックグランドに関して良いアイディアを貰ったことから、この役はシュワルツェネッガーしかいないと確信するようになった。



結果として本作は、彼を一躍ハリウッドスターへと押し上げた。次作『ターミネーター2』からは悪役から主役へと立場が変化し、人間側(ジョン・コナーを守る立場)として活躍するようになる。

この映画で一躍世界的なスターとなったシュワルツェネッガーは、本作以前は『コナン・ザ・グレート』のヒットもあり、全くの無名という訳ではなかったものの、元々オーストリア出身でドイツ訛りがあり当時は英語が得意ではなかったという事もあってそれほど人気の俳優ではなく、なかなか役に恵まれず苦労を重ねていた。しかしこの英語の不得手さが、逆に「人間のふりをしようとする機械」として、ターミネーターの非人間的な感じを出すには言葉が饒舌であるよりも片言で喋る方が良いと考えていたキャメロンの目に留まることとなった。
なお、主役を交代したヘンリクセンは本作でブコビッチ刑事を演じている。

カイルを演じたマイケル・ビーンもオーディション当時は舞台劇の影響で南部なまりが強かったため、不自然だということで落とされかけたが、エージェントによって南部出身者ではないと説明され危機を脱した。



《エンディング》
ガソリンスタンドにいた少年に「嵐が来るよ」と言われたサラが「ええ、わかってるわ」と返すシーンは「機械との戦争が待つ未来」を暗示させるものだが、これは製作陣があらかじめ続編を意識していたことの表れともされている。
元々は、破壊されたT-800のマイコンチップを技術者が回収するシーンに加え、最後の戦いを繰り広げた場所がサイバーダイン社であったという、より強い伏線を張ったエンディングであったが、キャメロンの「映画は説明しすぎず、観客の想像に任せたほうがいい」との判断によりカットされた。

《評価》
1985年アボリアッツ国際ファンタスティック映画祭グランプリ受賞。

《その他》
1984年2月8日から撮影は開始されたが、その直後から、シュワルツェネッガーはキャメロンの完全主義を思い知らされることになった。「あの時のジェームズは凄かったよ。事前に、撮影するショットをとても細かく説明するんだ。その位置が1ミリずれただけで、物凄く凶暴になるんだよ!」と述べている。また、ターミネーターが車のフロントガラスを叩き割るシーンで、ターミネーターの体から煙が出ている様子を再現する際、本物の酸をかけて煙を発生させた。スタッフ側は「弱い酸だから大丈夫だ」と主張したが、シュワルツェネッガーは「もっと別の方法はなかったのか」とずっと疑問に思っていたという。

肉体を焼失したT-800が骨格のみで追跡を再開する以降の部分は、トラックに轢かれて足が破壊された設定にし、ストップモーション・アニメーションの予算を削減している。また、ストップモーションが必要な全身が映るカットはわずかであり、ほとんどのシーンはフルサイズの模型をスタッフが操作している。

警察署窓口を去る際にT-800が口にする「また戻ってくる(I'll be back.)」は、本作以降シュワルツェネッガーのトレードマークとなり、続編を含む以降の出演作で同じセリフを言うシチュエーションが多用されている。

T-800は銃砲店から奪ったAR-18やUZIをフルオートで発砲しているが、比較的銃器に寛容なアメリカ合衆国といえど、フルオート機能を持つ銃器の売買には警察およびBATFEの許可が必要である(劇中では許可申請証を店員が出す前に射殺した)。小説版には、T-800が改造マニュアルを見ながら、フルオート射撃可能な状態へ改造する場面が登場する。なお、T-800の使用する銃は大半が「自動式」に対し、カイルは手動装填式のショットガンや回転式拳銃という「原始的な構造」の銃を使っている。

カイルはパトカーから奪ったショットガンを、ストックを切り落として全長を短くし、使いやすく改造してから右腕にひもでくくりつけ、落としたり奪われないようにしているが、『ターミネーター4』では少年時代のカイルがマーカス・ライトから銃に関する「手品」としてひもでくくりつけるアイディアを教わるシーンがある。

映画の宣伝ポスター等でT-800が構えていたAMTハードボーラーは、銃の上にレーザーサイトが装備されている。作中ではT-800が銃砲店から強奪した銃の中の一挺で、一人目のサラ・コナーの殺害から、ディスコの銃撃戦まで使われている。この特徴的なレーザーサイトは、当時いち早く銃器用レーザーサイトを開発して販路を構築していたレーザープロダクツ社(後のシュアファイア社)の試作品で、宣伝も兼ねて提供されたものである。ただし、撮影に使われたものは開発段階のもので、作動に十分な容量のある内蔵式バッテリーの開発が済んでいなかったため、電源はコードを介して外部から取られている(腕の袖で隠れる部分にバッテリーが括り付けられている)。



カイルの回想にてシュワルツェネッガー以外の筋骨隆々のターミネーター(演者はボディービルダーのフランコ・コロンブ)が登場している。

日本での公開日(1985年5月25日)から30年を記念して、2015年に日本記念日協会によって、5月25日を『ターミネーターの日』と認定された。



《続編》
ターミネーター2(1991年8月24日公開)



ターミネーター3(2003年7月12日公開)



ターミネーター4(2009年6月13日公開)



ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ(2008年放送)テレビシリーズ





ターミネーター:新起動/ジェニシス(2015年7月10日公開)



ターミネーター:ニュー・フェイト(2019年11月1日公開)




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