「言論の自由は権利であり、また義務でもあるが、他人を傷つけることなく表出されなければならない」③ | hiroチャンのブログ

「言論の自由は権利であり、また義務でもあるが、他人を傷つけることなく表出されなければならない」③


この事件を受けて、フランス各地では数万人の規模によって犠牲者の追悼に加え、表現の自由を訴える集会が行われ、市民の一部から、ヨーロッパ最大のイスラム人口を抱えているフランス社会に与える影響を懸念する声が出されている。フランス国内では犠牲者を追悼して1月8日正午、一斉に黙とうを行い、ノートルダム寺院も哀悼の鐘を鳴らした。パリ市内には多くの半旗が掲げられた。

事件後、ムラベの家族が会見し、「野蛮な行為に対して心が打ち砕かれた」とした上で、「過激派とイスラム教徒を混同してはいけません。ごちゃまぜにしないでください。モスクやユダヤ教の礼拝堂を焼いてはいけません。それは人々を攻撃するだけで、死者は戻ってこないし、遺族の悲しみを癒やすことはできないのです」と訴えた。
1月11日には、フランス各地で犠牲者を悼むための大行進が実施され、その数は全国合計で少なくとも370万人に達したとの推計を同国内務省が発表した。このうちパリの行進に加わったのは160万人超とみられ、イギリスのデーヴィッド・キャメロン首相やドイツのアンゲラ・メルケル首相ら欧州主要国を中心とする40人超の各国首脳も参加したほか、トルコのアフメト・ダウトオール首相、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、マフムード・アッバースパレスチナ自治政府大統領、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相らも参加した。また日本からは鈴木庸一駐仏大使が政府を代表して参加した。

シャルリー・エブド襲撃事件以降、フランス各地では「報復」ともみられる、嫌がらせや暴力・発砲事件が数十件起きている。イスラム教徒やその関連施設などが標的となっており、南部のコルシカ島ではイスラム教徒が食べることを禁じられている豚の頭と脅迫の手紙がモスクの入り口に置かれ、西部ポワチエや北部のベチューヌなどでは「アラブ人に死を」、「アラブは出て行け」などの落書きが見つかっている。事件に発展したケースもあり、南東部の町ではアラブ系の男子高校生が4、5人のグループに殴られ、南部ボークリューズ県ではイスラム教徒の家族が乗った乗用車が銃撃された。南東部サボア県では夜中にモスクが放火され、南西部ポルラヌーベル(ナルボンヌ近郊)では無人のモスクに銃弾 数発が撃ち込まれた。東部ビルフランシュシュルソーヌではモスクのそばにあるケバブの店で爆発事件があり、西部ルマンではモスクに手投げ弾3発が投げ込まれた上、銃撃されて窓などが破壊された。
シャルリー・エブド襲撃事件後に同紙のムハンマド風刺画を転載していたドイツ・ハンブルクの日刊紙ハンブルガー・モルゲンポストの社屋が、1月11日未明に放火された。独警察は容疑者2人を逮捕。
1月12日、シャルリー・エブドは、襲撃事件後初となる1月14日発売号の表紙に、「すべては許される」とのメッセージの下で「私はシャルリー」と書かれたカードを掲げて涙を流す預言者ムハンマドの風刺画を掲載すると発表した。これに対して、エジプト・カイロにあるイスラム教スンニ派の最高権威機関アズハルは、「憎悪をかき立てる」だけと警告した。声明で、「(同風刺画は)平和的共生に資するものではなく、イスラム教徒が欧州や西側社会に溶け込むのを妨げる」と述べた。アズハルは、シャルリー・エブド襲撃事件を最初に非難したイスラム団体のうちの一つで、「イスラム教はいかなる暴力も糾弾する」と批判していた。また、ジュネーヴに本部を置くジャーナリスト系NGO団体「プレス・エンブレム・キャンペーン」もこの最新号について「配慮に欠ける行為。プロのジャーナリストは中傷や侮辱をしてはいけない」と反対を表明した。
1月12日、フランス政府は、国内の治安確保のため仏軍を1万人規模で全土に展開するほか、ユダヤ教関連施設に警官ら約4700人を当てる厳戒態勢を発表した。
1月13日、犠牲となった警官の追悼式典がパリ警視庁で営まれ、オランド大統領は「彼らはわれわれが自由に生きられる環境を守るために亡くなった。フランスが(テロの脅威に)屈することは決してない」と演説した。
1月13日、シャルリー・エブドの1月14日発行の特別号表紙となるムハンマドの風刺画を描いた風刺画家のルスらが記者会見した。ルスは、一部のイスラム教徒などが風刺画掲載続行に懸念を示している状況について、「表現の自由は、条件や制限がついたものではない」と述べ、風刺やユーモアへの理解を求めた。また、「テロの実行犯は、ユーモアが欠如している」と言論を封殺しようとした行為を厳しく非難した。
1月13日、フランス議会は、イラクやシリアで勢力を広げるイスラム過激派組織「イスラム国」への攻撃継続を、賛成488、反対1、棄権13の圧倒的賛成多数で議決した。フランス軍は2014年9月以降、イラク国内でのアメリカ軍のイスラム国空爆に参加しており、フランス議会では(空爆参加から)4カ月後に攻撃継続に関する議決が義務付けられていた。バルス首相は同日、仏下院で演説し、「フランスはテロとの戦争に入った」と宣言、治安対策の強化に乗り出す方針を表明。フランスはイスラム国への欧州最大の戦闘員供給国となっており、イスラム国による勧誘の主要手段となっているソーシャルメディアの監視強化などが議論される見通し。
1月14日、シャルリー・エブドはムハンマドの風刺画を表紙に掲載した特別号を発行。同紙の風刺画転載に関しては、事件直後の各国主要メディアでも対応が割れた。フランスではリベラシオンが1面の全面を使って転載し、社説で転載を自粛したり絵柄をぼかして掲載した外国紙を批判、「政教分離はシャルリー紙だけでなく、フランスの方針でもある」と主張した。ル・モンドは1面でイスラム、ユダヤ、キリスト3宗教の信者が共に風刺画を楽しむ様子を漫画で掲載。一方、フィガロは転載を見送った。イギリスでは主要5紙のうち、ガーディアン、インデペンデント、タイムズの3紙が紙面にシャルリー・エブドの最新号表紙を掲載した。ドイツではビルトが最終面の全面を使って転載したのに対し、フランクフルター・アルゲマイネは、シャルリー・エブド紙最新号が山積みになった写真を小さく載せたにとどまった。米主要メディアは「宗教的な感情を害する」などとして風刺画を転載しない慎重姿勢が主流で、ニューヨーク・タイムズやAP通信は掲載・配信をしない方針。一方、ワシントン・ポスト紙は風刺画を転載し、記事の中でマーティン・バロン編集主幹は「ムハンマドの描写そのものが侮辱的だと考えたことはない。宗教グループに対して明白に、故意に、または不必要に侮辱的な表現は避けるという方針は変わらないが、今回はそれに当たらない」と説明している。2005年のムハンマド風刺漫画掲載問題で知られるデンマーク紙ユランズ・ポステンは、社説でムハンマドの風刺画はどんなものであっても二度と掲載しないと発表し、「我々はこれまで、テロの恐怖におびえてきた。暴力や脅迫に屈してしまったということだ」と説明した。
1月15日、事件をきっかけに世界中で言論の自由をめぐる議論が広がっていることに関して、ローマ法王は記者団から意見を求められ、「神の名において人を殺すのは愚かしい」と事件を強く非難すると同時に、「あらゆる宗教に尊厳」があり、何事にも「限度というものがある」と指摘して、「他人の信仰について挑発したり、侮辱したり、嘲笑したりしてはいけない」という考えを示した。また、言論の自由は信仰に対する敬意があれば自制されてしかるべきものだとして、「言論の自由は権利であり、また義務でもあるが、他人を傷つけることなく表出されなければならない」と諭した。
1月16日、事件後もシャルリー・エブドが預言者の風刺画を載せたことに対して、アフリカ各地で抗議デモが発生。アルジェリアでは数千人がデモに参加し、一部が暴徒化して警官と衝突。ニジェールではデモの他、キリスト教の教会が襲撃され、フランスの文化センターが焼き討ちにあった。なお、アルジェリアもニジェールもフランスの元植民地である。

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