Agatha -2- | hiroチャンのブログ

Agatha -2-


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《失踪事件》
アガサ・クリスティ失踪事件とは、ロンドン近郊の田園都市サニングデールに住んでいたアガサ・クリスティ(当時36歳)が1926年12月3日、自宅を出たまま行方不明となった事件を指す。警察は行方を探す一方、事件に巻き込まれた可能性も視野に入れて捜査をした。後述するようにアガサと夫のアーチーは問題を抱えていたことからアーチーの犯行という推論も出た。
有名人の失踪、複雑な背景は結果として新聞の興味を掻き立て、報道により事件を知った大衆から多数の目撃情報が寄せられた。その検証のために大勢の人間が動いた。捜査機関を含む関係筋から動員されたのは、延べ人数で数千人に及んだとされる。マスコミの盛り上がりによりドロシー・L・セイヤーズやアーサー・コナン・ドイルもコメントを出した。
11日後、保養地のホテルに別人名義(夫の愛人のテレサ・ニール)で宿泊していた彼女が家族の確認の上で保護されることで決着した。そのため、Agatha Eleven Missing と呼ばれる。
当時のクリスティは、ロンドンの金融街で働いていた夫のアーチー、一人娘のロザリンド(当時7歳)と田舎の大邸宅で暮らしていた。アーチーは休日はゴルフに熱中していたが、妻はゴルフはせず家事はメイドを雇い、仕事に関しては秘書のシャーロットを住まわせていた(シャーロットはクリスティの信頼を得て、長く彼女の側で勤めることになる)。
キャリアにおいては、『アクロイド殺し』(1926年)によりベストセラー作家の仲間入りを果たす一方で、事件の前には最愛の母親を亡くし、また夫には別に恋人がいた事実に傷つけられていた。事件の起きた日、クリスティは住み込みのメイドに行き先は告げずに外出すると伝え、当時は珍しかった自動車を自ら運転して一人で出かけている。その際に彼女は秘書のシャーロットと夫に手紙を残している。
なぜ失踪したのかについては諸説あり、伝記作家の間でもこの件については、心身が耗弱していた、意図的な行動であった等、意見が分かれているが、自伝では事件について触れていない。しかし、事件の結果としてマスコミや世間の好奇の対象とされたクリスティが心に傷を負った点、そしてこれ以降の彼女の内面世界が徐々に変化を見せた点に関しては諸説一致している。
この失踪事件を題材に、独自の解釈でアガサ・クリスティをめぐる人間模様を描いた映画『アガサ 愛の失踪事件』が1979年に公開された。

《作品評》
1920年のデビューから85歳で亡くなるまで長編小説66作、中短編を156作、戯曲15作、メアリ・ウェストマコット (Mary Westmacott) 名義の小説6作、アガサ・クリスティ・マローワン名義の作品2作、その他3作を執筆。ほとんどが生前に発表されている。中でも『アクロイド殺し』(1926年)・『オリエント急行の殺人』(1934年)・『ABC殺人事件』(1936年)・『そして誰もいなくなった』(1939年)等は世紀をまたいで版を重ねており、世界的知名度も高い。
推理の謎解きをするエルキュール・ポアロ、ミス・マープル、トミーとタペンスといった名探偵の産みの親でもある。
アガサの推理小説は旅から生まれた(とりわけ離婚後のオリエント急行でのイスタンブールやバグダードへの一人旅は大きな影響を与えたといわれている)。
アガサの推理小説の魅力は、殺人のトリックの奇抜さと併せ、旅から得た様々な知識が背景描写に使われていることとされる。オリエント急行でのイスタンブール行きは、38歳の離婚後、友人の家に招待されたときに聞いた話がきっかけとなった。1928年10月のことである。
初期の作品は、『ビッグ4』や『秘密機関』など国際情勢をテーマにした作品があったり、ドイツや日本が関係する作品があったりするなど国際情勢に関する話が多い。冷戦時代はソ連のスパイも話題に上っている。

知日家という話はないが、多くの長編小説でわずかに日本について触れられており、ストーリーにはほとんど関係のない物ばかりだが「着物」(『オリエント急行の殺人』)や「力士」(『ゴルフ場殺人事件』)などの単語や、第二次世界大戦前の緊張気味の日本の様子などがたびたび登場する。
そのファンからなるアガサ・クリスティ協会によると、彼女の作品は英語圏を越えて、全世界で10億部以上出版されている。聖書とシェイクスピアの次によく読まれているという説もあり、ユネスコの文化統計年鑑(1993年)では「最高頻度で翻訳された著者」のトップに位置している。ギネスブックは「史上最高のベストセラー作家」に認定している。
クリスティが作品を発表した20世紀初めのイギリスは、保守的な風潮が世間に残っており、トリックに対するフェア・アンフェア論争が起こったり、犯人の正体がモラルの面から批判の的になったりするなど是非が論じられていた。同時にラジオや映画といったメディアが発達していたことで、作品が広く知られることにもつながった。クリスティは人見知りの傾向を持ち、失踪事件(1926年)でマスコミの餌食とされたこともあり、意識的に表舞台から離れるようになったが、これが神秘的なミステリの女王伝説につながっていった面がある。

《作品に登場する主な探偵》
エルキュール・ポアロ(相棒としてアーサー・ヘイスティングズ)
ミス・ジェーン・マープル
パーカー・パイン
ハーリ・クィン(レギュラーとしてサタースウェイト)
バトル警視
トミーとタペンス

《著作》
長編小説66作、中短編小説156作、戯曲15作の他、メアリ・ウェストマコット名義のロマンス小説や、自伝など数作ある。また生前中に刊行されなかった作品や死後に見つかった未発表作、小説作品の戯曲化、あるいはその逆など細かい物を含めればまだ数点増える。

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