存在の耐えられない軽さ
Jean-Claude Carri・re
(1931年9月17日 - 2021年2月8日)
フランスの脚本家、俳優、著作家。
生年月日:1931年9月17日
没年月日:2021年2月8日(89歳没)
出生地:フランス エロー県ベジエ
死没地:フランス パリ
職業:作家、脚本家
受賞
アカデミー賞
短編映画賞
1962年『幸福な結婚記念日』
名誉賞
2014年
カンヌ国際映画祭
審査員特別賞(短編部門)
1969年『The Nail Clippers』
ヨーロッパ映画賞
生涯貢献賞
2016年
英国アカデミー賞
脚本賞
1973年『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』
脚色賞
1988年『存在の耐えられない軽さ』
セザール賞
オリジナル脚本賞
1983年『マルタン・ゲールの帰還』
その他の賞
《来歴・人物》
大学在学中に作家を志し、ジャック・タチ監督の作品、『ぼくの伯父さんの休暇』のノベライゼーションを執筆。
同書のイラストを描いた、タチの助監督でもあるピエール・エテックスと意気投合し大学を中退。1961年、エテックスと共同で脚本を執筆し、エテックスが監督した短編映画『Rupture(破壊)』で脚本家デビュー。1962年には『幸福な結婚記念日』でアカデミー短編映画賞を受賞する。続いて、『女はコワイです』(1962年)そして『ヨーヨー』(1964年)と、カリエールの監督作で共同脚本を行う。
1963年には、ルイス・ブニュエル監督と出会い、没するまでの約20年間に、『小間使の日記』の脚本を始め、ブニュエルの後期傑作群『昼顔』、『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』、『欲望のあいまいな対象』などの脚本を手がける。『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』ではアカデミー脚本賞にノミネートされた。
他に、ルイ・マルの『ビバ!マリア』、フォルカー・シュレンドルフの『ブリキの太鼓』、ミロス・フォアマンの『パパ/ずれてるゥ!』と『宮廷画家ゴヤは見た』、アンジェイ・ワイダの『ダントン』、大島渚の『マックス、モン・アムール』、フィリップ・カウフマンの『存在の耐えられない軽さ』、ジャン=ポール・ラプノーの『シラノ・ド・ベルジュラック』などの100本以上の脚本を執筆。
また、イギリスの演出家、ピーター・ブルックのために30年間にわたって、舞台台本を執筆。インドの長大な叙事詩『マハーバーラタ』を脚色し、9時間上演版を作った事も著名。
2007年にはコペンハーゲン国際映画祭において、生涯功労賞を授与された。2014年、アカデミー名誉賞を受賞。
他の日本語訳書に近年は、イタリアの作家・哲学者のウンベルト・エーコと共著で『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』がある。
2021年2月8日、パリの自宅で死去した。89歳没。
《フィルモグラフィー》
映画
昼顔(1967年)-脚本
太陽が知っている(1969年)-脚本
ボルサリーノ(1970年)-脚本
パパ/ずれてるゥ!(1971年)-脚本
ひきしお(1972年)-脚本
ブルジョワジーの秘かな愉しみ(1972年)-脚本
欲望のあいまいな対象(1977年)-脚本
ブリキの太鼓(1979年)-脚本
勝手に逃げろ/人生(1980年)-脚本
ダントン(1983年)-脚本
マックス、モン・アムール(1986年)-脚本・原案
存在の耐えられない軽さ(1988年)-脚本
恋の掟(1989年)-脚本
シラノ・ド・ベルジュラック(1990年)-脚本
カサノヴァ最後の恋(1992年)-脚本
欲望の華(1994年)-脚本・出演
魔王(1996年)-脚本
チャイニーズ・ボックス(1997年)-脚本
記憶の棘(2004年)-脚本
宮廷画家ゴヤは見た(2006年)-脚本
トスカーナの贋作(2010年)-出演
永遠の門 ゴッホの見た未来(2018年)-脚本
テレビ映画
王妃マリー・アントワネット(2006年)-脚本
邦訳された著書
恋のメモランダム ジャン・クロード・カリエール 作、浜文敏 訳 白水社 1984
マハーバーラタ ジャン=クロード・カリエール 作,笈田勝弘、木下長宏 共訳 白水社 1987
ぼくの伯父さんの休暇 ジャン=クロード・カリエール 作,小柳帝 訳 リブロポート 1995
万国奇人博覧館 ギィ・ブクテル、ジャン‐クロード カリエール 著、守能信次 訳 筑摩書房 1996 のちちくま文庫
ダライ・ラマが語る:母なる地球の子どもたちへ ダライ・ラマ14世、ジャン=クロード・カリエール、新谷淳一 訳 紀伊國屋書店 2000
珍説愚説辞典 J.C.カリエール, G.ベシュテル 著、高遠弘美 訳 国書刊行会 2003
ぼくの伯父さんの休暇 ジャック・タチ 原案、ジャン=クロード・カリエール 著、小柳帝 訳 中央出版アノニマ・スタジオ 2004
教えて!!Mr.アインシュタイン ジャン=クロード・カリエール 著,南條郁子 訳 紀伊國屋書店 2006
記憶の棘 ジョナサン・グレイザー、ジャン=クロード・カリエール、マイロ・アディカ 著、富永和子 訳 ランダムハウス講談社 2006
ぼくの伯父さんの休暇 ジャン=クロード・カリエール 著、ピエール・エテックス 絵、小柳帝 訳 中央公論新社 2008 中公文庫
もうすぐ絶滅するという紙の書物について ウンベルト・エーコ、ジャン=クロード・カリエール 著、工藤妙子 訳 阪急コミュニケーションズ 2010
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【存在の耐えられない軽さ】
(The Unbearable Lightness of Being)は1988年製作のアメリカ映画。冷戦下のチェコスロバキアのプラハの春を題材にしたミラン・クンデラの同名小説の映画化。
監督:フィリップ・カウフマン
脚本:ジャン=クロード・カリエール
フィリップ・カウフマン
原作:ミラン・クンデラ
製作:ソウル・ゼインツ
製作総指揮:ベルティル・オルソン
出演者:ダニエル・デイ=ルイス
ジュリエット・ビノシュ
舞台は、1968年前後のチェコスロヴァキアのプラハ。
主人公トマシュは優秀な脳外科医だが、複数の女性と気軽に交際するプレイボーイでもあった。ある日、執刀のために小さな温泉街に行ったトマシュは、カフェのウェイトレスで、写真家の道を志すテレーザに出会う。街から逃げ出したかったテレーザは、トマシュを追ってプラハに上京してくる。うぶそうに見えたテレーザの、思いがけない情熱にほだされたトマシュは、彼女と同棲生活に入り、まもなく結婚する。
社会主義からの自由化の空気の中で、まずは幸福な新婚生活が始まったが、すぐにトマシュに女の影がちらつき始める。一度遊んだ女には見向きのしないトマシュであったが、例外的な女もいた。自由奔放な画家のサビーナである。彼女とはお互いに束縛し合わない関係が長く続いており、彼女にも別に愛人がいた。
都市プラハで孤独に苛まれたテレーザは、毎晩悪夢に苦しむようになる。それでもトマシュのもとからは去ろうとしない。結婚生活が暗礁に乗り上げた頃、1968年8月20日、ソ連軍によるチェコスロヴァキア侵攻の夜が来た。
ソ連軍の戦車と、糾弾の声をあげる民衆の波に交じって、無心にカメラのシャッターを切るテレーザ。トマシュは彼女を守りつつ、群衆に交じってスローガンを叫ぶ。しかし次第に、チェコの民衆の声は弾圧され、再びソ連支配の重苦しい空気が流れていく。
トマシュはテレーザと共に、一足先に亡命していたサビーナを頼って、スイス・ジュネーブへと逃避する。テレーザはサビーナの紹介で、雑誌のカメラマンの職を得る。急速に距離を縮めるテレーザとサビーナをよそに、トマシュはサビーナとの逢瀬を続け、行きずりの女性とも関係を持つことをやめない。トマーシュの止まない女癖の悪さ、生きることへの軽薄さに疲れ果てたテレーザは、手紙を残して、愛犬を連れてひとりプラハへと帰っていく。
「私にとって人生は重いものなのに、あなたにとっては軽い。私はその軽さに耐えられない。」
ようやくトマシュは失ったものの大きさに気づき、ソ連の監視の厳しいプラハへと戻る。2人はこの時はじめてお互いを理解しあった。自分の主義を曲げようとしないトマシュは医師の職を得られず、窓拭きの仕事に甘んじるようになる。やがて2人は、プラハを逃れ、地方の農村でつましくも幸福な生活を送っていたが、それも唐突に終わる―。
後日アメリカで暮らすサビーナのもとに、2人が交通事故で死んだことを知らせる手紙が届いた。三角関係の恋愛といえど、大切な2人の人間を失ったサビーナは、異郷で涙にくれるのであった。
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