零が動く時 -6-
午前10時38分
行員に命じてビール要求の電話。以後7回、同じ要求を繰り返す。午前10時58分
梅川、ビールが届かないことに怒り発砲。
午前11時4分
伊藤管理官、梅川に「ビールは入れた。おふくろさんが心配して駆けつけた」と電話。梅川は「おふくろが来たら一緒に死んでもらう」。
午前11時48分
主婦F(当時25歳)をビールの見返りに解放。
午後0時8分
共犯を多治見署から住吉署に護送、到着。
午後0時30分
梅川が「おふくろへの遺産として500万円、俺の借金500万円を返したいが、あとで警察に没収されては何にもならん。没収されんような合法的な方法を考えるんや」と男子行員3人に検討させる。「銀行が融資したという形にしてはどうか」との意見が出る。梅川は「人質を解放する謝礼として、三菱銀行が自由な意思で金を出すということにして、上司の決裁をもらってこい」と行員に指示。行員は2階に上がり、支店次長と相談。次長は了承。
午後0時35分
行員が1階に戻る。
午後1時13分
特捜本部が弁当33人分を差し入れ。
午後1時45分
差し入れの見返りに客の女性事務員(当時24歳)を解放。
午後1時47分
伊藤管理官、梅川に「おふくろさんに代わる」と電話。母親が「もしもし」と呼びかけるも梅川は返事をせず切る。
午後2時42分
梅川が愛人への100万円など金の配達先8ヵ所を業務係長・行員E(当時40歳)にメモを取らせ、浪速区のスナック経営者(当時34歳)に「銀行員をあんたのところへ行かせる。道案内を頼む」と電話。E行員に配達を命じ、一時解放。その際、「相手に金を受け取らせるかどうかは、お前のやり方ひとつや。それで人質の命がどうなるか決まる。失敗したら人質全員を殺す。金を渡したら、そのたびに電話してこい」と指示。
午後2時45分
E行員、支店を出発。
午後2時55分
女子行員に命じて「リポビタンDを3本入れろ。代わりに人質を出す」と電話。
午後2時58分
特捜本部が母親の書いた手紙を1階に届ける。梅川は女子行員に代読させるが、首をかしげるのを見て「おふくろはそんな字しか書けへんのや」と話す。さらに「俺にはおふくろしかおらんのや。俺は子供の頃からおふくろと一緒に苦労したんや。おふくろは大好きや。一緒に暮らしたいんや」「俺は子供の時、勤め先の人妻を刺し殺して刑務所に入ったことがある。俺が殺すのは男だけと思うな」「銀行強盗は18日か19日にやるつもりやった。都合が悪くなって延びた。猟銃で脅したら2,3分で金を出すと思っていた。乗ってきた車で逃げるつもりで、着ていたコートを脱いだら服装も変わるので、客に交じって逃げるつもりだった」などと話す。
午後3時12分
リポビタン差し入れの見返りに客の女性事務員(当時19歳)を解放。
午後3時15分
行員が負傷した行員B、C、Dら3人の解放を懇願。梅川が「あかん」と拒絶すると倒れていたC行員が「出してくれ」と起き上がる。梅川は「お前、まだ生きとったんか。殺したる」と猟銃を向けるが、行員が「出してやってください」と頼むと「3人を出したれ」と指示。
午後3時35分
負傷した3人が解放される。
午後4時
E行員から梅川に「予定通り配っている」と電話。
午後4時5分
E行員、支店次長に同様の電話。
午後4時24分
梅川が「月見うどん17、マカロニグラタン1、ポタージュスープ9、ローストビーフ1、シャトーマルゴーの69年ものワイン。シャトーがなければシャンテミリオンオブリオン。ワインはボネール(現場近くのレストラン)にある」と差し入れ要求の電話。
午後4時38分
人質を通じて電話。「人質は死んでいると思ったが、生きているので出した」。
午後4時54分
客の鉄工所所員(当時25歳)を解放。
午後5時40分
人質から「夕刊を届けて」の電話。夕刊を差し入れ。
午後6時5分
応接室にいた社長父子がドア越しに捜査員の誘導で廊下伝いに西側通用口から脱出。ローストビーフ、ワインなどの差し入れ。梅川は人質に「これが最後の晩餐会や」。
午後6時30分
E行員、梅川と特捜本部に電話。「配るのは10時頃までかかる」。
午後6時45分
カウンターの陰に隠れていた主婦Bが這いながら廊下伝いに脱出。
午後7時1分
梅川、女子行員に「寝てもいい。12時までに決着をつける」。
午後7時7分
正露丸とパンシロンを要求。
午後7時18分
薬を差し入れ。
午後8時15分
うどんの差し入れを要求。
午後8時30分
うどんを差し入れ。
午後9時
E行員、伊藤管理官に「5件の借金を返した。残りは明日返す」と電話。伊藤管理官が梅川に電話で伝える。
午後9時37分
風邪をひいて咳のひどい女子行員(当時24歳)を解放。
午後9時39分
E行員、特捜本部に入る。警察はEに突入計画を伝え、「チャンスがあれば合図をくれ」と説得。
午後10時10分
E行員、支店1階に戻る。
午後11時5分
E行員の報告に満足した梅川、発熱していた女子行員(当時40歳)を「これが最後や」と解放。この時点で人質は男子行員7人、女子行員18人の計25人。
昭和54年(1979年)1月28日(日曜日)
午前0時4分
梅川、射殺された前畠巡査の拳銃を取ってくるよう男子行員に指示。C行員の耳を削がせたナイフを渡し「これで吊り紐を切れ」。試射を試みるも安全ゴムが引き金にはめられているのに気付かず「故障しとるわ」と机の上に投げ出し、実弾5発を抜き、うち4発を楠本警部補の拳銃に装填。前畠巡査の拳銃をキャンプ用具で解体。
午前0時25分
ズボンを脱がされていた営業係の男子行員(当時19歳)に梅川は自身がズボンの下に履いていた変装用の緑のジャージを渡して履かせる。
午前0時55分
梅川、2階に電話。「ブラシと鏡、乳液、カミソリ、石鹸、パッチ、タオルを差し入れろ」。まもなく特捜本部が差し入れ。
午前2時3分
行内に放置されたままの4人の遺体が腐臭を発したため、男子行員が「外に出してください」と懇願。梅川は了承。
午前2時33分
捜査員が階段下に担架を置き、男子行員が支店長とA行員の遺体を乗せ、2階に運び上げる。その後、支店西駐車場に待機していた救急車で住吉署3階講堂の安置室に搬送。
午前2時40分
楠本警部補、前畠巡査の遺体が住吉署仮安置室に搬送。
午前3時25分
女子行員に命じ、ビタミン剤と朝刊の差し入れを要求。
午前3時50分
女子行員2人が洗顔の際に外したコンタクトレンズを入れるケースが必要になり、女子行員1人が特捜本部のある3階女子更衣室に取りに行く。梅川は「戻らなければ1人殺す」と脅迫。特捜本部、女子行員から簡単な事情聴取。
午前4時
梅川、人質に「お前ら、顔色が悪い」と言い、ラジオ体操をさせる。男子行員には逆立ちを命じる。体操をせず居眠りしていた男子行員に「みんな逃げた。残っているのはお前だけや。殺してやる」とからかう。
午前4時42分
仮安置された4遺体、司法解剖のため阿倍野区の大阪市大法医学教室に搬送。
午前4時45分
梅川が人質に「メシを食おう。お前ら、何でも好きなもん注文せえ。豪華メニューで行こ」と言い、女子行員にメモを取らせる。
午前5時10分
梅川が電話。ステーキやメロンなどの注文を読み上げる。この時、警察の対応が気に入らないと言い、1発発砲。特捜本部の問い合わせに「眠気覚ましの一発や」。
午前5時14分
梅川が「7時15分なのに、なんで朝刊を差し入れんのや」と電話。伊藤管理官が「いま5時すぎやないか」と答えると「俺の間違いや」と電話を切る。
午前6時40分
梅川、女子行員に洗顔を許可。自身もポットの残り湯で髭を剃る。
午前6時57分
特捜本部、おにぎり20個、スパゲティ3皿、味噌汁12杯、トースト3枚、きつねうどん1杯、バター1本、あられ3袋、アイスクリーム25個、メロン5玉を差し入れ。人質はほとんど手をつけず。
午前7時10分
1階トイレに来る行員に捜査員が「突入する。その時は身を伏せろ」と指示。
午前7時30分
前日、借金の返済後に突入作戦への協力を依頼されていたE行員がトイレへ。「今回はチャンスがあると思います。合図をしますのでよろしく」と捜査員に伝える。
午前7時53分
朝刊差し入れ。梅川は支店長席に座り、女子行員に読ませる。
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