プリンスがデビュー以来所属していたワーナー・ブラザーズとついに諍いが深刻化し、ワーナー最後のアルバムとなった今作。契約を果たすために、仕方なく作った一作である。たった2日間という驚異的な短期間で録音を終わらせ、ミックスして最終工程までわずか一週間。レビューなどでは、こき下ろされている作品である。
1996年の作品だが、遅ればせながら最近初めて聞く機会を得た。

批評家のなんといい加減な事か。
メディアが Radiohead の KID A を絶賛した時もそうだったが、このアルバムの完璧な出来を耳にして、あらためてメディアの流れに飲み込まれるだらしのなさに辟易した。


超完璧主義者で知られるで、彼の作品の中で、それまでの彼独特の文脈からは外れているものの、それは好きずきの問題。この作品には、ロックのおいしいフレーバーが溢れている。
 コンセプチュアルできらびやか、ゴージャスなこれまでの彼の作品では、いつもブラックミュージックの香りが鼻についた。もともとそういうアーティストだからこそ私は敬遠してきたし、期待もしなかった。私のこれまでの嗜好が「GRAFITTI BRIDGE」「BAT DANCE」等にあるといえば分かっていただけるだろうか。

 しかし今作では、私を遠ざけるものが消え失せている。荒削りなサウンドが、かえって勢いを生み、生々しいバンドのグルーヴを聴くものに伝える。アメリカンロック特有の古くささも、奔放なギターで打ち消している。
 プリンスのギターが聞きたいなら、この一枚なのかもしれない。


 1曲目““Chaos And Disorder”。イントロから凄まじいギターの轟音とスクラッチ・ノイズが暴れまくる。

 “Dinner with Delores”では、どこかさびしげなヴォーカルの後ろでやはりギターが暴れている。


 “I Rock, Therefore I Am”では、デカルトをもじって「ロックする。ゆえに我有り」!これが一番スタンダードなプリンスナンバーなのかもしれない。

 混沌と混乱と名付けられたこのアルバムを象徴するかのようなラスト「had u」。批評家はこの小品を評価しないのだろうが、ワーナーとプリンスの当時の関係にひねりを加えた歌詞で、こんな素敵な気分を味合わせてくれるなんて、有り難いではないか。

 
 正式には彼はこの頃、プリンスという名前を捨てて、雌の記号ににたオリジナルなマークを名前としていたため、プリンスと呼ぶべきではないのかもしれないが、この作品を通して私の中のプリンス回顧月間が始まった。聞き直してみると、やはり私はプリンスが好きなわけではないらしい。裏を返せば、この作品が紛れもない傑作という事だろう。

是非一度聞いてみてはいかがだろうか。

$CoCo de サンバ、うぅーっ!