夢をを見た。
ぼくはユダヤ人だ。
戦車の乗員になって、敵軍の攻撃を防いでいた。
劣勢である。
しかし、危ういところでようやく援軍があらわれ、
立場が逆転した。
敵軍は算を乱してたちまち退却した。
ところが喜びもつかの間、
味方は窮地から脱したものの、
ぼく個人には災いが降り掛かった。
援軍の上官が、ぼくに命令したのである。
民家を戦車砲で射撃しろというのである。
その民家には我らユダヤ人の同朋がいる。
平凡そうな一家だ。
なぜ同朋を殺さなければならないのかわからない。
一家は利敵行為でもしたのだろうか・・・。
だとしても、同朋の命を奪うことは到底できない。
ぼくは抵抗した。
上官の命令を拒否した。
すると上官は拳銃をかまえた。
命令を拒むならと、
ぼくの左手の甲を撃ち抜くという。
軍隊では上官の命令は絶対服従である。
だが、ぼくは断固拒否した。
ぼくの部下は固唾を呑んで成り行きを見守っている。
覚悟を決めたぼくに、
上官は地べたに左手をつけろといった。
膝を曲げて従った。
甲を撃ち抜かれたら、
耐え難い激痛に、呻き、身悶えるだろう。
ぼくは震えた。
上官は銃口を、ぼくの手の甲に向けた・・・。
夢から覚めた。
夢の中とはいえ激痛を受けずに済んだ。
これが実際の出来事だったら、
どうしただろう。
やはり命令を拒むのだろうか。
それとも唯々諾々と従い、
同朋の命を殺めるのか・・・。
それはわからない。