「なんでも自分でやろうとするのね」

「達成感が欲しいなんてすごいね」

「あなたが大した事ないと思ってやっている事は他の人からしたらすごい事なのよ」




ー自分の事に責任を持とうとするのは、どうやら当たり前じゃないらしい。

自分の力でやり抜きたいと思うのも、どうやら普通のことではないらしい。

これくらいは出来ていてもいいと思っていることは、周りから見れば一目置かれるようなことらしい。





「やり始めたばかりなんだから上手く出来なくて当たり前よ」

「あのお父さんに対抗出来るようになっているなんてどんだけ強いんだってこと!」




ーそうか、私はやり始めたばかりなのか。

そうか、私は前よりずっと強くなっているのか。






…不思議だ、自分にはわからない。

自分の日常を、地続きで見てしまっている私は

自分がどんな所に立っているのかわからないでいる。






足元だけを見て、

怪我をして泣きながら身体を引きずって、

一歩ずつ一歩ずつ進む私は


自分が結構な山を登っている事にも気づかず、

誰かの助けも大して借りようとせず、

困難な道を乗り越えて来たことも知らずに

必死に必死に自分を鞭打って進もうとする。




頼り方もわからず、頼っていいとも思えず、

人に委ねてしまえばいいことも自分の手で掴み取ろうとする。

自分の足で立って歩くことをいつだって望んでいる。





なんとも不器用でストイックなことだろう。

誰から見咎められるでもないのに、

こう在りたい、がいつも自分の中に鳴り響く。





臆病だけど、臆病じゃない。

プライドが高くまっすぐな、

支えを失い今にも折れてしまいそうな心。


現実を見据えることを覚え、

でもそれが自分を脅かすものと思い込まされたまま

立ち向かおうとする幼い心。






誰かの目を、言葉を通して知る自分。

私自身には見えない実際の自分は、

どんな姿をしているのだろう。