2026年6月22日(月)の日経新聞「やさしい経済学」より
「「やる気」のマネジメント」」№1 専修大学准教授 森田公之さん
「フィードバックは難しい」
クーパー「TARS、お前の正直レベルは?」TARS「90%だ」 クーパー「90%?」 TARS「完璧な正直さは時として感情を持つ相手を傷つける」
これは2014年公開の米映画「インターステラー」で、宇宙飛行土のクーパーが、相棒となるロボットT ARSの人格設定を確認する場面です。
職場でも、100%の正直さが最善とは限りません。上司が部下に「仕事ができていない」と率直に伝えれば、部下は自信を失い、やる気がそがれるかもしれません。逆に、褒めれば自信がつき、やる気は高まるかもしれません。
では、上司は常に褒めればよいのでしょうか。そう単純ではありません。いつも褒めていれば上司の言葉は信用されなくなります。一方で、率直な指摘がなければ、部下は自分の行動を見直し、成長する機会を失うかもしれません。
フィードバックはなぜ難しいのでしょう。それは、フィードバックが単なる情報伝達ではないからです。
上司は部下の能力や適性について多くの情報を持ちます。日々の仕事ぶりを観察し、他の部下と比較するだけではありません。過去に同じポジションを経験した感覚、他部門などからの評判など、本人には届かない情報も集まります。
伝える側の評価は部下の自己理解を左右し、自信ややる気、その後の行動に影響します。フィードバックは「現状を伝える」だけでなく、「相手のやる気を左右する」役割も持つのです。どの程度率直に伝えるかで部下の反応は変わるため、率直さだけを追えばよいわけではありません。
上司の言葉に限らず、誰にどこまで仕事を任せるか、どのような形の組織を作るかなど、職場のやる気を巡る問いは多岐にわたります。この連載では、こうした問題を組織の経済学の視点から考えます。
TARSの正直度は90%でした。組織のやる気のマネジメントでも、100%や0%ではなく、その間のどこに線を引くかが問われます。
もりた·きみゆき 一橋大学博士(商学)。専門は組織の経済学、行動経済学
以上、2026年6月22日(月)の日経新聞「やさしい経済学」より
「「やる気」のマネジメント」」№1 専修大学准教授 森田公之さん
「フィードバックは難しい」でした。
