打者・黒田が、名刺代わりの適時打を放った。三回2死一、二塁で迎えた第2打席。1ボールからの直球をはじき返すと、風にも乗って打球は中堅手の頭上を越えた。
打者転向2打席目にして初となる安打は、俊足ぶりも見せつける三塁打。しかも、2打点のおまけ付きだった。
07年の大学・社会人ドラフトで、投手として4位指名された。だが、マウンドでは芽が出ず、1軍出場のないまま昨年のシーズン終盤に外野転向。
オフに育成選手となって第2の選手生活を歩み始めたばかりだ。
これまでのウエスタン5試合では、俊足を見込まれ守備固めや代走で出場。素材はいいがまだまだ粗削り。支配下登録に向け、新たな戦場での毎日が勉強だ。
久保が制球、キレともに精彩を欠くなど、5回を投げ、7本の二塁打を許すなど、10安打6失点と打ち込まれた。開幕を目前に控え、一抹の不安を残す結果となった。
初回、2死からスレッジ、村田の連続二塁打で先制点を失うと、続く二回。またも2死から、武山、真下の連続二塁打で追加点を失った。
渡辺、石川も続き、4連続二塁打で3失点。三回、五回も1点ずつ失って、計6失点で降板。最速は144キロ、116球を要する苦しい内容だった。
試合後の久保は、潔く反省の言葉を残した。ただ、昨年も開幕直前、3月19日の横浜戦で6回13安打、8失点と打ち込まれている。
だが、チームトップの14勝。同様の大量失点には不思議な縁も感じる。この日は今年初めて、城島とコンビを組んだ。
バッテリーミスでの失点もあり、右腕を必死にかばった。
2度の開幕延期の影響で、先発投手の調整にない難しさがある。調整登板は残り1試合になった。開幕2カード目の初戦、15日の中日戦先発へ。シーズンでの結果が久保流の答えだ。
もう心配はいらない。新井貴の表情から、開幕問題に奔走していた時の焦燥感は完全に消えていた。
漂う充実感、両手に残った確かな手応え。頼れる主砲のバットが開幕が近づくにつれ、上昇カーブを描いている。
その象徴が追い込まれてからの2安打だ。四回、無死一塁で迎えた第2打席、カウント2‐2から真下の133キロ直球を詰まりながら左中間へ落とした。
好機を拡大してブラゼルの犠飛につなげると、八回の第4打席でもハミルトンから左前打を放った。
これもカウント1‐2と追い込まれてからの安打。難しいスライダーをはじき返し、納得の表情を浮かべる。
3月29日の中日戦で25打席ぶりにヒットを放ち、翌30日には今季“実戦”1号となる3ラン。そしてこの日はマルチ安打と目を細める。
強い信念で球界を一丸にまとめた‐。その事実は野球ファンが一番、よく理解している。試合前に行われた募金活動、ファンは選手会会長を大歓声で出迎えた。
会場には他に鳥谷らが並ぶ4つのレーンがあったが、新井貴の列だけ大渋滞が起こった。野球を愛する誰もが“頑張ってほしい”と活躍を願っている証拠だ。
義援金を投じたファンに深々と頭を下げ、声をかけてくれた。そういう気持ちを1年間持って、戦っていきたい」と新井貴。
打席に向かう際には球場全体から温かい拍手が送られた。帰り際、バスへ向かう通路でもエールが飛んだ。心に染みたその声を力に変え、猛虎の4番は開幕へ向かう。
プロ野球12球団が2日、東日本大震災の復興チャリティー試合を6球場で開催した。
横浜スタジアムで行われた横浜対阪神戦では金本知憲外野手が183日ぶりのフルイニング出場を果たした。
試合は完敗したが、大学時代を過ごした東北を第2の故郷と話すアニキが美技&2安打で慈善試合に花を添えた。
42歳最後の日。最終イニングまでグラウンドに立ち続けた金本は自虐的に試合を振り返った。
白い歯を見せながら、横浜スタジアムの長い通路を歩いた。因縁か。アニキは歴史的な節目をいつも横浜で迎える。
2000本安打、世界記録の断念…。この日も特別な気概で試合に臨んだ。
東日本大震災の復興慈善試合。6番左翼で先発出場した。昨季10月1日の広島戦以来、183日ぶりとなるフルイニング出場。金本は魂のプレーを披露した。
「ニッポン!ニッポン!」。被災地にエールを送るスタンドを沸かせる2安打。二回にチーム初安打を右前に運んだ。
5点を追い掛ける七回には反撃の起点となる中前打を放ち二進後、関本の浅い中飛でタッチアップ。果敢なスライディングで三塁を陥れ、攻撃にアクセントをつけた。
開幕まで10日。棘上筋を完全断裂する右肩を最優先に考えれば、危険回避の選択肢はあった。だが、主戦場になれば体は反応する。
初回、左翼越えに飛んだハーパーの打球を追ってフェンスに右胸部を強打。長打2本で先制を許した直後に魅せた高度なジャンピングキャッチ。課題となる送球も2度、無難にこなした。
東日本大震災の復興慈善試合。津波で壊滅的な被害を受けた仙台は東北福祉大時代の4年間を過ごした特別な地。
1000万円の義援金を送り、Stand Up for JAPAN!と名づけた救済プロジェクトを立ち上げた。野球人である前に、人として役に立ちたい。
電力不足で困窮する被災地へ乾電池1トンの支援を決めた。
金本はフルイニング出場を問われ「志願」を否定した。フェンスに打ちつけた胸部をさすりながらバスに乗り込んだ。
きょう43回目の誕生日を迎えるアニキ。いとしの東北へ、不老の闘志を届けた。