Hit the floor 13 | Blue in Blue fu-minのブログ〈☆嵐&大宮小説☆〉

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嵐、特に大野さんに溺れています。
「空へ、望む未来へ」は5人に演じて欲しいなと思って作った絆がテーマのストーリーです。
他に、BL、妄想、ファンタジー、色々あります(大宮メイン♡)
よろしかったらお寄りください☆


☆あ~~~もうクリスマスだ~。

これ、年内に終わるのか~?

いつの間にか、自分の誕生日も過ぎてるし…。

これ、終わったら他のも頑張ります。

もう少しっ!!☆





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― PM11:30 ―



船内に入った途端、外が明るくなった。

同時に拡声器が何か言ってる。


「始まったな」


前を行く松本が嬉しそうに呟いた。

瞬く間に空気がざわつく。


「こっちだ」


しばらく姿をくらましてた間に、船内の大体の位置情報を頭に入れたんだろう、迷いのない足取り。


「どこ行くんだよ」


階段を駆け下りながら聞けば、


「もしもし、翔さん?」


耳に携帯を当ててる。

なに、呑気に電話なんかしてんだ?


「うん、カズと代わって?」

「おい、おま、呼び捨てにすんな!」


おれのことなんかガン無視でボソボソ話してる。


「うん、うん、分かった、分かったから。じゃぁな、また後で」


階段を降り切った先は1階。客用の絨毯敷きの階段はここで終わっている。


あちこちで騒ぎが始まってる。

外では相変わらず拡声器がなんか言ってるけど、不明瞭なその声では、何を言ってんだか全然伝わってこない。

乗客がパニックになるのは当然だ。


―動かないで、その場に居てくださいー

―この船は包囲されています。ここから出ないでください―


多分、潜伏していた捜査官たち。

奥の方から必死な声が聞こえてくる。


…相葉ちゃんも頑張ってんだろうな。


「こっち! 早く!」


松本は足が止まってたおれの腕を引っ張って、スタッフオンリーのドアの中に滑り込んだ。


「だから、どこ行くんだよって!」

「地下」

「なんで?」

「そんなキンキラなカッコで動いてたら客に間違われるだろ。拘束されてもいいのかよ」


一階分の階段を下りたら、左に狭い通路があって、片側に同じようなドアがいくつか並んでいた。


松本は2つ目のドアを開けてするりと中に入った。

後に続きながらドアを見たら Laundry room と書いてあった。


薄暗い室内、濃いグリーンのランドリーボックスに頭を突っ込んでゴソゴソやってる松本。


「おい、何やって…」

「あった!」


声と同時に体を起こして、掴み出したモノをおれに投げて寄こした。

咄嗟に受け取って広げてみると、それはクシャクシャになったコックコートだった。

なんかもう、シミだらけで色んなモンの匂いが混じって、強烈な匂いを発散させてる。


「早く着ろって!」


サッサと上着を脱いで、同じような白いのに袖を通している松本。


「クセーよ…」

「タラタラ言うな!」


仕方なく半分息止めながら使用済みのコックコートを着てボタンを留めていると、


「何モタモタしてんだよ、って、あーもう!」


松本は、ボタン、ずれてんじゃんって、おれの胸倉を捕まえて引き寄せ、顎をぐいって上向かせた。


「あ、いけね」

「あんたもいい歳して大概だな。翔さんが苦労するはずだわ」



ボタンを掛け直しながら笑ってる。


なんかシャクに触る。


「…おまえな、前から聞こうと思ってたんだけど、なんでおれはあんた呼びであっちは翔さんなんだよ」


二人が脱ぎ捨てた上着をボックスの最奥に押し込んでる松本に聞けば、


「んなの、分かり切ったことじゃね?」


と、ニヤリと笑って、すぐ横のドアに貼り付いた。


「…わかんねぇよ?」

結局何を来てもサマになるヤツだけど、イケメンシェフになり切ったその姿で、ヤモリの如くドアにくっ付いて、外の様子を伺ってるサマはなんか笑える。


「よぉ、なんでだよ?」


シェフの背中に引っ付いて重ねて聞けば、


「あんたもまぁまぁだけどさ、翔さんは全てにおいてパーフェクトなんだ」



ココも、ココもね、と、こめかみと心臓のあたりを手で示す。


「…意外と天然だぞ?」

「あれは、キャラだよ。出来過ぎる男は疎まれるだろ?」


……いや、地だな。


「ほら、行くぞ」


ドアを出て再び走る。

上着の裾がヒラヒラ揺れて、やたらカッコいいけど、でも、こんなイケメンシェフ、目立ってしょうがない。


大丈夫か?


1階に上がり、バックヤードではあるけど下とは段違いに小ぎれいなフロアーを足音を忍ばせて歩く。



…え? 船長室?


「しばらくここで待機な」

「おいっ、なんでここんなトコ、早く亮ってヤツを…」

「ソイツの居場所は分かってっから!後で加勢するから、先にこっちを手伝えって」

「一体なんだよ!?」

「シッ!」


またそれかよ。

…翔くんならこんな時、ピンとくるんかな?


「口、尖ってんぞ」

「ふん!」


ドアのすぐわき、立ち話をしてる風を装い待つことほんの数分、ドタドタと階段を駆け降りる大きな音が聞こえてきた。


「来た来た♪」


?マークが飛び交ってるおれに松本が囁く。


「アイツら、一旦部屋に入るけど、すぐ出てくっからバッグを奪い取れ」

「…へ?」


コック姿のおれたちに目をくれること無く、太った二人の男は慌てた様子で船長室に入って行った。

ものすごい泡食った表情で。


「金、取り戻すんだよ」

「金って?」

「あんたがヤツらに渡した金だよ」


松本の言う通り、二人はすぐに出てきた。

なるほど、一人の男の手には見覚えのあるバッグが下げられてる。


「ビンゴ♪」


松本は素早く二人の背後に近づくと、まず、後ろのヤツの口を塞ぎ、同時に首を抱え絞め技を掛けた。

声も無く崩れ落ちる男。


異変に気付いたもう一人が松本に飛びかかろうとした、…寸前、おれはその足を払い、倒れ込んだ後頭部に手刀を喰らわせてやった。


考えるより先に体が動いていた。


「流石だな!」

「…おっ、おお、まぁな」

「こんな時は、やっぱあんただな、翔さんじゃなくってさ♪」

「へへ、だろ?」


松本のお世辞にちょっとニヤついて立ちあがれば、足元に転がる二つの体。


…金と欲に塗れ膨れきった、腐った肉の塊。



コイツらがカズを食いモンにしてた…。


いっそ、海に投げ込んでやろうか…。


「ほら、バッグ。次、行くぞ」


「あ、ああ」


ハッとして、投げられたバッグを受け取る。


「大丈夫、アイツらは法が裁く」


そうだ、今はそれどころじゃない。

投げられたバッグを抱え、おれは再び、階段を駆け上がった。


颯爽と前を行くイケメンシェフの後について。



ますます騒々しくなる船内。

あちこちから聞える悲鳴と物が倒れる様な大きな音、そしてそれに被さる警察側の声。


あ、相葉ちゃんだ。


飛び交う怒号の中、なんとか事態を収拾しようとしてる、必死な、でも聞きなれた声が聞こえた。


―落ち着いてください。調書取ったらすぐに開放しますから―


こんな時でも相葉ちゃんの声は優しい。



無条件で信じられる声なんだ。



…相葉ちゃん、よろしく頼むね。






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― PM11:50 ―



「亮、オレだけど」


『カズさん! 俺の名前…』


「いいか、よく聞け。お前、いま部屋だろ?」


『はい、風呂の用意しときました。あと、なんかあったら…』


「そこにいろ」


『え?』


「今、外はすごい騒ぎになってる」


『騒ぎ?何ですか?』


「いいから! そこにもうすぐ男が二人やって来る」


『…はい』


「覚えてるだろ? …いつかの、あの…人と…」


『…一年前の?』


「…そう、だ」


『…どういう事っすか?』


「ま、あとで説明するけど…」


―ドンドンドン!


『あ、誰か来ました』


―はい、今、開けます



ガチャ


―よぉ、久しぶりだな


―お前、亮か?


「…それとめっちゃ濃い顔のヤツ」


『…来ました』


「その二人の言う通りにしろ」


『は、はぃ…』


―カズが待ってっから


―とっとと来い!


『わわ、わゎ…』




ああ、よかった。


サトシ、ありがとう。


それと濃い顔の、松本?ありがとう。




サトシたちを待ちながら、ヘリの窓から外を覗けば、ぐるり囲んだ小型のボートから向けれた沢山のサーチライト。

巨大な船体は余すことなく照らされていて、人ひとり逃れることも、きっと出来ない。





このヘリも、何度も光に晒されるけど、なんとか狙撃は逃れられてるようだ…なんつって。


「まじぃよ、早く帰ってこねぇかな…」


まさか、そんなワケないのに、翔さんとかいうヤツは、狙撃を信じてマジで震えあがってる。


「大丈夫だよ、もう帰ってくるから」


「なんでそんなこと言い切れるんだよ?」


「勘」



…………










「あーーー、もう、早く帰ってきて~~~」











つづく。