Hit the floor 8 | Blue in Blue fu-minのブログ〈☆嵐&大宮小説☆〉

Blue in Blue fu-minのブログ〈☆嵐&大宮小説☆〉

嵐、特に大野さんに溺れています。
「空へ、望む未来へ」は5人に演じて欲しいなと思って作った絆がテーマのストーリーです。
他に、BL、妄想、ファンタジー、色々あります(大宮メイン♡)
よろしかったらお寄りください☆




゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆



気のせいだ。

サトシがここにいるワケがない。


感じた気がした視線も、振り向いたらもう無かった。


― PM10:45 ―


潮風で冷えた頬が、中の澱んだ空気ですぐに温められる。

歩きながら、泡がすっかり消えたグラスの中身を一気に空け、近くにいたボーイに渡した。


やっぱ、不味い。

いっそのこと、この唇も舌も全部、何にも感じなくなってしまえばいいのに。

そしたら、目ぇ閉じた上に味もなんもわかんなかったら、なんだってやれそうじゃん。


最強じゃん。 この先のオレ。


感覚あるから、記憶になっちゃうから抜け出せないでいるんだ。 あの日から。


ほら、あそこ、ドアの近く。

沢山いるスーツ姿の仮面たちの中に、あの猫背までもが、見えた気がした。



…記憶なんていらないのに。


チッて、小さく舌打ちしてから磨き上げられたぴかぴかのフロアーを蹴飛ばしてパーティー会場の外に出た。


すぐに番犬が寄ってくる。


皮ジャン…じゃない、今夜はウェイターの恰好をしてる。

コイツ、あの日からやけにオレに懐いて、すっかり付き人みたくなってる。

上の奴らは、逃げ出したオレを見つけたのはコイツだって思ってるから、許されてるみたいだ。


一年前のあの日、どうせすぐに捕まるって分かってたから、大ごとになる前にサトシの車ン中から、


『後で場所知らせるから、明日の朝、迎えに来て』


って知らせたんだ。


「カズさん、最上階です」

「知ってるよ」


えっと、名前、何だっけ。

何度も聞いたことあるのに、こんなことはすぐに忘れる。


手に持ってた仮面を渡して、エレベーターの前に立ったら、そいつが上へのボタンを押してくれた。




「風呂の用意しといて。あとはもういいから」

「はい、すぐに」


口利いてもらえたのが嬉しかったのか、そいつは番犬らしからぬ可愛い笑顔で走ってった。


あ、亮だ、思い出した。

今度、名前で呼んでやろ。

きっと嬉しそうに真っ赤な顔で笑うはず。


ふふ、弟ってあんな感じなのかな…。

家族なんて、全然わかんねぇけど。


俯いてたら、オレのピカピカの革靴の隣に、ちょっとくたびれた靴が並んだ。

ちらりと横を見れば、ひょろりとした男がいつの間にかいた。

やけに近い。腕が触れそうなほど。


でも、下心のある奴は、大体雰囲気でわかる。

この男には、まったくそれを感じない。


なんだよ…。


イラついて顔を見上げれば…


あれ?この男、さっき入口で仮面配ってた奴だ。

ちょっとズレた蝶ネクタイに見覚えがある。


「こっち、見ないで」


小さな声が聞こえた。

条件反射で下を向く。


「君、カズくんだろ?」

「えっ?」


顔を上げたら、


「だから、こっち見るなって」


デジャヴ? 確か前にもこんなコトが…。


目の前の扉が開き、男が先に乗り込んだ。

後に続く。

一瞬ためらったけど、この男からは物騒な気配も感じない。


「…乗った、うん、5階、待機してて」


ボソボソと声がした。

電話で話してる。


5階…って言ったよね。

え? まさか今日のお相手?


いやいや、それはあり得ない。

あまり、金持ってなさそうだし。


5Fの表示が光り、扉が音も無くスーッと開く。


「よぉ、久しぶりだな」


目の前に現れたのは、忘れられないもう一つの顔。

すっげー濃い目のイケメン。


いきなりの再会に驚いて動けないオレの背中を、蝶ネクタイが押した。


「ほら、急いで」

「…えっ、なに?」

「いいから、こっち来い」


前からは、濃いのが腕を引っ張る。

エレベーターから降ろされて、両脇をがっしりと固められ、ふわふわの絨毯を歩かされるオレ。


えっ?なにこれ、何プレイ?

逃げようにも、オレより数段ガタイのいい二人に押さえられた腕は、振りほどけそうにない。


「お前、騒ぐな「よ。せっかくのプランがパーにるぞ」

「ちょっと、脅すなよ。大丈夫だよ、カズ。俺たち、君の味方だから」


蝶ネクタイの声がやたら優しい。

取り敢えず、身の危険はあまりなさそうな…


ずるずると引き摺られるように歩いて、約束の№5の表示の部屋の前を通り過ぎる。


「あ…の、オレ、この部屋に用事が…」


「いいから、黙っとけ。お前、もうここには戻ってこねぇんだから」

「もぉ、またそんな乱暴な…」




どういうこと?



オレ、拉致られた?













つづく。