※『蒼写真』楽曲における勝手な解釈+妄想補完文
※緑青さんと言いますか倉安要素を含みます。苦手な方は特にご注意
※8UPPERSパロ・緑さん視点。俺が勝手に、誘われた気になっているだけ
トッポと二人で買い出しに出掛けた帰り、彼の視線がある一点に注がれていた。
それは来月開催予定の祭を告知するポスターで、商店街主催で小規模ながらも、様々なイベントや屋台なども並ぶようだ。
「行きたいん?トッポ」
「え?あっ…そんなんとちゃうから…」
足を止めさせてごめんという謝罪と共に、足早に歩きだしてしまう。
何となく心懸かりで、俺から話題を振ると、帰路で彼がポツポツと話してくれた。
昔は、あんなお祭りに憧れていたけれど、自分のような奴は楽しめないだろうから、と零す。
「そんなことあれへんやろ」
「ひとりで行ってもしゃあないし」
こらこら、目の前の男を忘れてはいないか。
曲がりなりにも恋人という存在でありながら、彼は中々俺に甘えてくれないのが悩みどころ。
「せやったら、俺とデートしよか」
「なっ…なに言うて…」
「約束な、ちょい早い夏祭りデートやん」
真っ赤になって慌てているトッポが可愛いやら、此方も楽しみが増えたわで上機嫌。
一応、恋人関係としてそれなりの段階を踏んでいる俺達ではあるが。
初々しさが抜けないトッポが愛おしいばかりで、つい毎度顔が緩んでしまう。
またひとつ、彼との思い出を増やせる良い機会なのだと考え、心躍らせていたのである。
* * *
そして、初夏の某日。
約束していた当日だったのだが、なんと彼が浴衣を準備していたというのだ。
しかも二人分。重要部を加えるなら、総てトッポの自作だというから何重にも驚きで。
「これ、ホンマにトッポが縫うたんか、凄いやん」
「そんな大したものちゃうから…」
当人は謙遜するものの、その出来は本当に素晴らしかった。
数種類の生地をセンス良く縫い合わせた柄で、緑系統でまとめられ。早速着せて貰ったのだが、寸法なども完璧。
浴衣だけでなく、髪型やアクセサリー類まで、トッポのフルコーディネイト仕様となった俺。
「…はぁ、まんぞく…」
「こら、まだお祭り行ってへんから」
「あ、そっか…せやけど、ジョニーが俺の作った服着てくれただけでも嬉しゅうて」
レアかもしれない、トッポの満面の笑み。
見惚れてしまう程に可愛らしくて、こっちの方がほっこりしてしまうくらいだ。
「格好良うてめっちゃ似合うてる…良かったぁ」
「トッポの腕がええねんて」
一方、彼の浴衣も自作らしい。此方は青系統の布地がメイン。
控えめに言って、和装もかなりイイ。褒めちぎると恐縮するのみで。…褒め足りない。
こんな短期間で2着も作ったのかと更に驚いたのだが、彼は一層照れながら首を横に振る。
着る機会が無いと分かっていながらも、以前に自分用に縫っていたものだったと打ち明けてくれた。
「もしかして俺のとお揃いのデザインなん?色違いで何となく似てるなぁって」
「あ…ごめん、嫌やった?」
「なんで謝んねん、ペアルックみたいでええやんか」
こういう時くらいは、浮かれたっていいだろう?
写真を撮っていいかとお伺いを立てられたので、勿論OKしたのに。
何故か俺個人をうっとり一方的に撮りまくる撮影会状態。
『一緒に映る』という処へ思い至らないあたり、やっぱり初々しい。
提案してみれば、だいぶ戸惑いながらも承諾してくれたのが嬉しかった。
勿論・祭の会場でも、凛として可愛いトッポをたっぷり激写してやるつもり満々である。
「なんか御礼したいなぁ」
「そんなんええよ、俺がしとうて勝手にしたことやし…ジョニーに着て欲しいなぁって思たら色々湧いて来て」
「ふふっ、何でもええから考えといてや」
会場内では、徹底してトッポを甘やかしまくった。
会計は基本俺持ち。彼が慌てて自分の分を払おうとするが、「俺の財布は頑固やから」で押し通した。
トッポが興味を持った屋台や催しは、時間の許す限り次々制覇していったし。
今日の御礼としては、これでも全く足りないくらいだろう。
浴衣の件は当然のこと、こんな楽しそうな彼を傍で見ていられるのが本当に嬉しかった。
俺自身・こんな祭に参加するのは久し振りで、トッポが人混みに酔わないよう気を付けながらも、相当はしゃいでしまった。
気付けば外はすっかり陽が落ちて、人の流れもかなり窮屈になっており。
混雑を避けた時間帯を選んで来たのは正解だったようだ。
「はぐれてまいそうやなぁ、手ぇつないどこか」
彼の答えを待たずにするりと指を絡めると、当たり前のように恋人繋ぎ。
一瞬、ぴくんとトッポの肩が跳ねるが、はにかむ様が微笑ましい。振り解かれなくて良かったと、密かに安堵している。
「ずっと歩きっ放しで疲れたやろ、寄り掛かってくれてええから」
「優しいなぁ、ありがと…」
遠慮がちにくっ付いて歩く様子も愛しいし、きゅっと握り返してくる小さな手指。
あぁもう、俺の恋人が可愛過ぎて辛い。
* * *
「今日は付き合うてくれてありがとう、めっちゃ楽しかった」
「そんなんこちらこそやで、帰るんが勿体無うなってまう」
たっぷり各方面を堪能した後、静かな所で休憩がてらゆっくり話をしたいなぁと、イベントの中心部から離れるように歩いていたのだが。
会話に夢中になり、近隣の公園エリアまで足を踏み入れていた。
手入れされた樹木や池が立体的に広がっていて、昼間に来ればより素敵な憩いの場になるだろう。
隅に設置されたベンチへトッポを座らせてから、今更ながら失念していたと気付くのだ。
「あー…そうやった、マズいかも」
「どないしたん、忘れ物?」
「いや、こっちまで来るつもり無かってんけど…失敗したなぁ」
眉を顰める俺に対し、彼は首を傾げるのみ。
…トッポが知らないのも無理はないだろう。
この公園は、日中であれば確かに、ファミリー層や小中学生カップルにもオススメの癒し空間である。
しかし、夜になると一転。所謂オトナの逢引きスポットと化すのだ。
街灯も少なめ・木々もイイ雰囲気を演出し、恋人達の刺激的な夜を盛り上げてしまう訳で…。
ぽかんとしていた彼も、俺の微妙な表情に加え、周囲の『気配』で何となく察したらしい。
祭のBGMやアナウンスに掻き消えてはいるが、微かに耳に届く生々しい声も。
言わんとする内容を理解して、暗がりでも分かる程に赤々と染まる彼の顔。
…そのくせ、ちっとも目を逸らさない。
欲熱に揺れる双眸で俺を見詰めている自覚は有るのだろうか。
──殆ど無意識。
俺が勝手に、誘われた気になっているだけ。
彼の細腰を引き寄せると、そのまま柔らかく口付けていた。
ほんの数秒の、重ね合わせるだけのキスだったが。驚きながらもちゃんと応じてくれる。
「…ごめんな、こういうつもりでここまで歩かしたわけちゃうねんけど」
「わ、分かってる…疑うてへんよ」
外でのキスなんて初めてだ、と。照れ困った反応をしているのに、その目はやはり俺を甘美に射貫くのだ。
「アカンで、足りひんって目ぇしてる」
煽ると後悔するのはトッポの方なのだからと警告しても、まるで逆効果。
独特の色気が滲んで、眩暈がしそうだ。すっかり魅せられて、今度はだいぶ濃厚な口付けに変わっては、彼の吐息が震える。
「んっ…ジョニー、俺…身体、なんか熱くて…」
店に戻るまで我慢出来そうに無いのだと訴えて来る。
『もう少しだけ』と、強請ってくれるのがたまらない。
トッポの浴衣を徐々に乱していくが、抵抗ゼロなのは逆に心配になるではないか。
「なぁトッポ、これから浴衣着る時は、俺と一緒の時だけにしてや?っちゅうかむしろ、見るんは俺だけにして」
「それって、俺とまたお祭り行ってくれるってこと?」
あんまり嬉しそうにするものだから、思わず肯定。俺の独占欲は、純なお願いへと差し替えられていた。
浴衣の裾をやんわりと捲り上げ、火照る肌へ指先を這わせる。
触れれば僅かに汗ばんでいて。これは気温や祭の熱気だけの所為じゃない。
恥じらいつつも、俺を誘うツボは心得ているのだから参ってしまう。
「白状してもええ?トッポ」
「なに…?」
浴衣の生地の薄さも相まって、密着するたびにトッポの体温や匂いに興奮していたのだと暴露。
身体のラインが分かりやすい事もあり、そういう意味でのゾクゾク感も含んでいた。
すると、彼がこくんと頷いて。「俺も」と、唇の動きのみで伝わった。
「声、抑えられる?」
「がんばる…」
何度か身体を重ねた、俺調べによると。彼は本人が思っている以上に敏感で感度良好・開発が愉しみな要素満載。
ワルい言い方をすれば身体は正直で雄弁なのだ。
成程、屋外でのプレイにも興味アリか。貴重なデータ蓄積中。
俺としては、トッポが悦んでくれるのならどんなシチュエーションでも美味しく戴ける自信がある。
理性との間でグラグラ悩んでいるのは、トッポの媚態を他の奴に晒すのが嫌だという彼氏目線と。
やり過ぎてしまわないかと、己の精神力とのご相談。
更に大事なのは、折角彼が作ってくれた浴衣を、可能な限り汚さないように努めること。
「此処、覗きも出るから気ぃ付けてな」
「大丈夫、携帯型の撃退薬作ってきてるから」
まさかの返答。なんてものを忍ばせているのだ。
「噴霧式で最新バージョン出来たんや、即昏倒させて記憶ごと飛ばしたる」
「…トッポ強ぉ」
可愛いだけじゃないぞ、俺の恋人。侮るなかれ。
-貴重なお時間を頂き、有難うございました。