※『えげつない』楽曲における勝手な解釈+妄想補完文

※緑青さんと言いますか倉安要素を多大に含みます。苦手な方は特にご注意

※緑さん視点・イメージは20代頃・熟年夫婦が痴話喧嘩に首を突っ込んだら、激しく後悔した話

※少々関係をほのめかす描写あり。ご注意

※明記有りませんが黒紫前提にてご注意

 

 

 

 

 

恋人と、喧嘩しました。

…いいや、訂正。俺が一方的に怒らせました。

 

切っ掛けなんて、本当にどうしようもなくてしょうもない。

後々考えたら、何であんなに譲らなかったのか分からないし。

酒が入っていた所為もあるが、さすがに反省しているのだ。

 

いつものようにヤスの家で宅飲み。

お酒がだいぶ進んだ辺りで、最近食べた美味しいモノの話題になったのだっけ?

俺が推薦した炭水化物×炭水化物のメニューを、「またかぁ」ってイジられたのだ。

そこで此方が、「ヤスは食べても伸びひんなぁ」的に、定番ネタの彼の身長イジりという返しをした…覚えがある。

──あくまで、そこが入口。

何故かそこから双方エキサイトしてしまったというか…。

特にヤスが、俺に対する不満累々大爆発。

これらの内容に関しては、正直9割9分ほど俺が悪い事案だらけなので割愛する。

けれどその時の俺は素直に謝る事も出来ず、雰囲気最悪のままヤスの家を飛び出していたのである。

 

頭を冷やす為+酔い醒ましにと、自宅まで徒歩で帰宅したのが正解だったのかもしれない。

明け方にはすっかり冴え渡り、激しい後悔に襲われていた。

「…やってもうた」

我ながら、最低な振る舞いだった。

時間帯的に非常識かと思いつつも、すぐさま彼に連絡を取ろうとする。眠っているのか、不通続き。

メッセージ等も送るが、昼間になっても既読の気配すら無い有様。

 

仕事帰りに直接ヤスの家に寄るという行動も起こしたが…。

在宅の気配すら無く、焦る気持ちは膨れるばかり。

その後も、暫くは一緒の仕事も無い上に、擦れ違いの連続。明らかに避けられているのだ。

 

マズい。参った。

彼の頑固な一面は良く知っている。

ヤスは普段穏やかで優しい分、一度強烈な怒りを買ったが最後、当分お許しは期待出来ないだろう。

彼に嫌われるという事は、それ程にダメージが凄まじい事件なのだ。

 

トドメに、ヤスは遠方での仕事が入り、また数日会う事も出来ず。

このままでは、別れる別れないどころじゃない。

下手をしたら、今後仕事以外で口を利いて貰えなくなる可能性すら想像し、情けない程に泣きたくなった…。

 

 

 

* * *

 

 

 

徹底したヤス断ちを余儀無くされ、間も無く一週間。

本人の姿どころか、声も聞いていない。

相変わらず、此方からの連絡については完全無視。

 

自業自得だが、深刻なヤス不足に餓えて、仕事終わりも職場の休憩スペースにてぐったりしていると。

年長組夫婦が現れ、険しい表情で俺を囲むのだ。…当然ながら、この断絶状態の件である。

 

「オイコラ大倉、ヤスに何しよった」と旦那。

「ヤスがあんな怒るやなんてよっぽどやぞ」と嫁。

ヤスに会う機会があったらしい彼らは、消沈したり怒ったりと忙しい様子を見て、直ぐに原因が俺であると推定し・カマを掛けたのだという。

事情を喋らざるを得なくなった彼に、色々聞いて来たらしい。

彼等は俺とヤスが恋仲であることを知っているし、同性の恋人同士という意味でも大先輩である。

 

いきなり2対1の圧では俺が話し辛いと思ったのか、女房役が気を遣って「飲み物でも買うてくるわ」と一旦席を外す。

長兄殿が残り、面談のような重い空気で話し合いが始まった。

「ヤス、怒っとったやろ?全然連絡返してくれへんねん」

これに対し、肯定の頷き。とても見ていられない程だったとか。

…喧嘩の状況を軽く説明した。その上で、ほぼ全面的に俺が悪いという事も。

 

ここから、ヤスが彼等に零していたという内容について、俺がひとつひとつ弁明していく時間になるのだけれど。

何故か長兄殿の表情が…次第に呆れ・ドン引きの要素を含むものになっていくのだ。

 

──「おーくらのこと信じとったのに」って言うとったで。

コレはアレだ。

以前、ヤスから「明日仕事朝早いから一回だけな?」と約束したにも拘らず。

夜にしつこく襲いまくって、結局空が白む時刻まで彼の身体を酷使してしまった件だろう。

しかも俺が「ヤスが可愛えから止まられへんかった」と、欲望丸出しの言い訳をしたのが最低だったもので。

 

更に後日、自ら『今夜はヤラしい事はしません』的な宣言をした癖に。

快感に弱いヤスをトロトロに煽りまくって、これまた結局・計3回戦ほどお相手を願ってしまったのだ。

キスマークも駄目だと言われたのに、失念しまくり・大量に刻みまくり。

散々「おーくらのウソツキ!」と叱られた記憶も新しい。

「ヤス感度過ぎてホンマにたまらへんねん…」

「…聞きたない情報やった」と眉根を寄せるお兄様。

 

──「おーくらに浮気されたぁ」ってのはどういうこっちゃ。

コレはアレだ。

以前、俺が自宅で使用しているPCの待機画面の一部に、とある画像を使用したところ。

それがヤスに見付かって、ご機嫌斜めになった事があるのだ。

俺ともう一人が映っている写真データで…。

これは誰だと怒っているようなのだが、その時は俺の方が首を傾げた。

仲良さげに並んで…いや、ベタベタ密着するレベルで映っている女性は誰なのか、遠回しに尋ねられたのだが。

…どう見ても、俺とヤスの写真じゃないか。

10年程前のデータを整理していたら、ヤスが可愛くてつい引っ張り出してしまったのだけれど。

本人曰く、「俺はこんな可愛ない」とキッパリ謎の主張。

服装は全力でレディースものだし、顔も少し帽子で隠れてしまってはいるが。

この可愛さはお前だろと言ってやるものの、信じてくれないのだ。

 

「ホラ見てや、これヤスやろ?」

携帯端末からすぐに該当の画像を見せてチェックしてもらう。

すると「大倉お前、持ち歩いてるんか」と、長兄殿のドン引き顔。

ヤス個人専用のフォルダも有ると伝えると、一層口端が引き攣っていた。

 

──「おーくらが意地悪してくるんや」ってのは何やらかしてん。

コレはアレだ。

以前、ヤスの『甘えたい・構って期』に、意図的に焦らしまくった時の事だろう。

彼は不定期に、甘えさせて・構って頂戴、そんな感情が強く表れてしまう時期が有るらしい。

本人もそこそこ自覚しているようで、そんな衝動に駆られたヤスは凶悪なまでに可愛いのだ。

普段以上にふにゃふにゃと人懐っこく、可愛がってオーラを出してくるからたまらない。

甘える相手はちゃんと選んでくれるからまだ良いけれど。出来れば俺だけにして欲しいと、密かに思っている。

 

今回も、ヤスが照れ気味に「おーくらん家行ってもええ?」なんて目を輝かせてくるものだから、即了承してお招きした。

可愛いわ色気も凄まじいわで、更にヤス本人からオネダリされては、すぐさま食らい付いてやりたいところなのだけれど。

ギリギリの理性で踏み留まり、より大胆に乱れ強請る様を愉しんでしまったのである。

際どい辺りで何度も焦らしては、イヤイヤと泣いてしまう彼も艶が混じって惹き付けられるだけ。

その後は逆に、もう無理だと泣き喘ぐ様子を堪能しながら抱き潰す時間。

 

「相手がイチイチ反応可愛過ぎてブレーキ吹っ飛んでまうことってあるやろ?」

彼の愛嫁がまだ帰って来ないうちに、そんな同意を求める。この先輩方もなかなかのお盛ん振りだと知っているし。

当人に聞かれたら、なんて赤裸々な話をしているんだと恥ずかしがりそうだ。

長兄殿は数秒何かを思い返すように考え込むと、消え入りそうな声で「…ある」と返すのだ。

ただし、お前ほどえげつない事はしていない、と添えられた。

成程、愛嫁は相当大事にされているようだ。

 

そしてやっと、女房殿の方が三人分の飲料を携えて戻って来た。

あえてゆっくり時間を置いてくれたのだろう。

会話が一旦途切れたところを見計らったように現れるのがさすがである。

隣に立った相方へそっと視線を送った旦那は、深い溜め息の代わりに「そのコーヒー、そいつの頭にブッかけたれ」と言い放つ。

缶コーヒーだったら、そのニヤけ顔に全力で振りかぶってやりたい、とまで加えられてしまった。

 

「お前、『ヤスが可愛い』っちゅうのが一般教養どころか社会常識レベルで言うてんで」なんて話すから。

俺が『それが何がおかしいのか』的な反応をすると、よく分からないが、夫婦が全く同じ顔になっていたのが面白い。

挙句に、二人掛りで散々な言われよう。

「心配して大損したわ」「首を突っ込んだらこっちのメンタルがやられた」だとか。

「ただのバカップルの痴話喧嘩以下」「砂糖吐きそうやわ」とまで。

 

しかし、長兄が零した次の言葉を聞き流せるはずも無かった。

「気ぃ遣うてヤス呼んだのはなんやったんや」…と。

「え、ヤスもう帰って来てるん!?」

予定していた期間より早めに切り上げる事が出来たとかで、昨晩戻って来たばかりだという。

女房殿が『飲み物を買ってくる』とこの場を離れたのは、ヤスを迎えに行く為でもあったというから頭が上がらない。

 

今すぐに会いたいという気持ちが逸り、反射的に席を立ち上がりかけたが。

俺の目に飛び込んで来たのは、部屋の入口付近で此方の様子を窺いつつ・ひっそり縮こまっているヤスの姿だったのだ。

…ここで瞬間的に記憶が飛んでいる感覚で、気付けば彼の身体を掻き抱いていた。

逃げないでくれ、と縋るように。

幻では無い事を確かめるように。

「ふぁ、おーくら待って、めっちゃ見られてるー…」

熟年夫婦にバッチリ見られていると、焦った声が届くものの。そんな余裕も無い。完全スルー。

逆に彼らの方が遠慮して、静かに部屋を去っていく気配がした。

 

「あ、あの…おーくらごめんな、俺も意地になって言い過ぎてもうた」

一方的に怒るばかりだったから、どんな顔をして会えばいいのか分からなくなっていた、と。

今にも泣き出しそうな顔で、何度も「ごめんなさい」と繰り返すのだ。

「何言うてるんや、ホンマに俺の方こそ悪かった…鈍いばっかで、ヤスの気持ち全然汲んであげられへんかった」

抱き合いながら、彼の温もりも匂いも、総てが愛おしい。

 

「…仲直りのキス、したい」

そんな提案を囁くと、嬉しそうに頷いてくれて。

どちらからともなく唇を寄せ、甘く絡み溶けた。

それだけでは足りなくなって、深く深く、呼吸ごと混ぜ合う口付けに溺れる。

舌先が濡れた音を響かせるほどに、ヤスの身体が小さく震え跳ねるのが分かった。

 

その場にくたりと崩れ落ちてしまった彼を抱き留めると、すっかりスイッチが入った時のヤスの貌が在った。

「しばらく、してへんかったやんか…おーくらに触られただけで気持ち良うなってまうから…」

そんなのは、俺も同じ。

最後に性的な意味で触れ合ったのは、二週間以上前。

頻繁に身体を重ねていた俺達にしてみれば大問題。

互いを欲して疼いてしまうばかり。

 

このまま押し倒してしまいそうな空気だったが、そこで勢い良く部屋の扉が開く。

再度入室してきた夫婦が怒涛のイエローカード。

「場所選ばんかい!」とのお叱りと。

「やるなら他所でヤれ!」との真っ当な突っ込みと。

ドサクサに紛れて、『後で何か奢れ!』的な文言も聞いた。コレはもう勿論・後々改めて御礼に伺いますとも。

 

諸々反省しながらも、超速でヤスを俺の家までお持ち帰り。

喧嘩していた事がスパイスとなって、相当盛り上がってしまった事は言うまでも無い。

 

 

 

 

 

-貴重なお時間を頂き、有難うございました。