※『パノラマ』楽曲における勝手な解釈+妄想補完文
※緑青さんと言いますか倉安要素を含みます。苦手な方は特にご注意
※青さん視点。イメージは20代頃。俺達・同居はじめました!
本日はお日柄も良く!お天気も良く!
ついでに俺も大倉もご機嫌!!
──つまり、最高のお引越し日和ということ!
「おーくらー、コレどこ置くん?こっちやと邪魔かなぁ」
「奥の方でええんちゃう?あとは使いながら適当に考えるわ」
最低限の荷物を片付け終えた俺達は、見合っては何となく顔がニヤけてしまうもので。
今日から大倉との同居生活の始まり。いや、同棲っていうのだろうか?
妙に落ち着かないテンションのまま、リビングで向かい合っていた。
ラグマットを敷いただけの床に、どちらからともなく揃って正座して。対面でぺこりと一礼。
「えっと…大倉さん、今後とも末永く宜しくお願い致します」
「いえいえこちらこそ安田さん。ふふっ、新鮮やなぁ、こんなん」
顔上げると再び見詰め合って、やっぱりニヤニヤが止まらない。
引っ越しをしたと言っても、俺が元々住んでいたところのすぐ近くに、ちょっと広めの部屋を借りただけ。
最寄り駅も変わらないレベルで、そこに大倉も越して来たという調子だ。
しかも俺達は今までも頻繁に互いの家に入り浸っていたようなものなので、改めて一緒に住むとなると一体どうなるんだろう、って。
共同生活のルールもきちんと決めなきゃだし、仲良く助け合えるといいなぁとは思っている。
きっと、予想外なトラブルに遭遇したり、二人で解決しなきゃいけない大きな問題にぶつかることもあるんだろうと思う。
…でも、大倉と一緒なら何とかなるんじゃないかなぁ、って。楽観というより確信に近い。
心配事よりも、明るいワクワクの方が遥かに大きいのだ。抑え切れないほど心が躍る。
「ヤス、もう出な遅れてまいそう」
「もうそんな時間?うわぁ、俺準備終わってへん」
まだ片付いていない段ボール箱なども山積みだが、今日はこれから仕事に向かわないといけない。
皆揃う予定だけど、仕事仲間達には同居の事は当分ナイショにしておくつもりである。
そもそも大倉とお付き合いしている件自体明かしていないはずなのだが、その辺りはどうにも察されている気配。
…バレるとしたら多分俺からだろうなぁという自覚もアリ。
ここ数日ずっとバタバタしていたからか、大倉がさりげなく俺の体調等を心配してくれた。
優しいなぁ、嬉しいなぁ、こういう所も格好良いんだ。
「何でやろうなぁ、慌ただしいんやけどめっちゃ楽しい!!」
「…俺も」
建物の陰で、一瞬額にキスされた。
俺が照れてあわあわしていると、余裕たっぷりの笑みが降ってくるのだ。
「唇の方は帰ってからな?」
キスはあまり好きじゃないとかボヤいていたくせに、キザなこと言うし。それに、俺調べだけれど、大倉はかなり巧い方だと思っている。
…俺とのキスが好きになってくれたのならいいなぁ、なんて。
そんな恥ずかしい事を考えていた。
* * *
その仕事帰り、軽く食事も済ませて来たら、だいぶ遅くなってしまった。
既に日付も変わりそうな時間帯。
揃って帰宅して、自宅の扉前に立った時だった。
「どないしたんヤス、ボンヤリして」
「あっ…えっと…」
大倉が疑問に思ったのも仕方が無い。開錠する手が止まり、その場で俺が静止してしまったからだ。
『何か忘れ物でもあったのか』なんて尋ねられたので、慌てて首を横に振る。
「ちゃうねん、あんなぁ…なんか、ええなって」
「え、何が?」
「一緒に住んでるってことは、おんなじトコに帰るって訳やんか」
凄く当たり前の事を口にしているのは分かっているのだけれど、彼は馬鹿にせず、ちゃんと俺の目を見て聞いてくれている。
今まで大倉が俺の部屋に遊びに来てくれる事は多かったが、帰ってしまう度に寂しく思う時間も増えていた。
出来るだけ長く一緒に居たくて、彼を困らせない程度に、あれやこれやとひっそり策を講じたものだ。
ついさっき見送ったばかりなのに、もう会いたくなったり、声が聞きたくなったり。
…多分、恋しいとか切ないとかいう感情。
そんな想いをずっと抱えていた。
「家の前でバイバイせんでええんやなぁって…」
嬉しくて、思い切り顔が緩んでしまっていた。
今度こそ笑われるかな、なんて思っていたのだが。
大倉の表情からは、何も読み取れない。笑うでも無く・呆れるでも無く。
「おーくら…?」
彼は素早い動きで俺の代わりに扉を開けると、此方の身体ごと押し込む勢いで入室・即施錠。
「あんま可愛い事言わんといて」
「へ?…なに?」
呟く声も良く聞き取れなかった。
取り合えず、真っ暗な中で壁に手を伸ばし、玄関の灯りのスイッチを探る。
まだ全然慣れていないから、何処だっけ…と手間取ってしまうのだが。
その動きを制するように、唐突に抱き竦められていた。
壁面との間に挟み込まれ、完全に逃げ場を奪われる。
何が起きているのか、何をされているのか。ビックリして慌てふためく声を漏らすも、それすら塞がれてしまった。
「んンっ…!」
暗闇の中、急な息苦しさに襲われて。
それが荒々しいまでの口付けであると理解したのは、舌先の侵入をあっさり許した頃だった。
絡み合う熱い吐息。全身絶妙なポイントを押さえ込まれていて、僅かに身悶えるくらいしか出来ない。
気持ち良くて、頭の芯から甘く痺れていく。
腰もぞくりと震え跳ね、次第に立っている事すら難しくなっていって…。
「ふぁ、おーくらっ…」
ちょっとでいいから待ってくれと伝えたかっただけなのに。
止まってくれるどころか、より深く貪られるだけ。
どんどん力が抜けていく。それでも、脚の間に大倉の膝が捩じ込まれ、座り込む事すら叶わず。
目を瞑ってしまえば同じだと言われてしまいそうだが、視界ゼロの状態でされるがままだと、本当にどうしたらいいか分からない。
口唇も、舌先も、響く濡れた音も、煩いくらいの心臓の音も、密着する火照った身体さえも。
総てが鋭敏に感じ取れてしまうのだ。全身が、彼の存在だけに集中しようとする。
やっと解放された途端、ズルズルと大倉の腕の中に沈むのみ。
俺の真横にあったらしい・照明のスイッチを彼が押してくれるが、こっちは酸素を求めて喘ぐだけで精一杯。
「ヤスが可愛えから止まれへんくなった」
俺にも理解出来るような理由を言えと。一応睨んだつもりが、涙目で見上げるだけになってしまった。
玄関で自力で靴を脱ぐところまでは頑張った。
…ただ、それ以上はどうにも。腰が抜けたというか、すっかり骨抜き腰砕け。
「おーくらー…立たれへんー」
キスだけでこんな風になってしまうのは初めてで、戸惑うばかり。
助けを乞うものの、その恋人は憎たらしい位イイ笑顔。
「そんな気持ち良かったん?」
「…腰までゾクゾクしてもうてる、どないしてくれるんや」
「分かった分かった、責任取ってお風呂連れてったるから」
何でお風呂?と首を傾げるが、帰宅時間に間に合うように既に湯を張っているというのだから手際が良過ぎる。
優しく抱き上げられると、身体の方はすっかり彼に従順になってしまっていて。素直に運ばれてやることにする。
初日からこんなでどうなるんだ、俺…?
* * *
「ヤスー、こっち向いてや」
「…無理やぁ、なんかアカン」
一緒にお風呂に入るなんてのも、今まで何度も経験しているっていうのに。
異様に緊張してしまって、自分でもよく分からなくなってくる。
浴槽の隅で大倉に背を向けて縮こまっているだけ。入浴する前から既に首の後ろまで真っ赤だったのも恥ずかしい。
自分自身、強烈な羞恥心をコントロール出来なくて…。
「さっきのキスのこと怒ってるん?帰ったら唇で、って言うといたやんか」
「…あんなスゴいのするなんて聞いてへん、色々ヤバかった」
「煽ったんはヤスの方や思うねんけどな」
ちゃぷん、と湯面が波立つ音がして、いつの間にか大倉がすぐ後ろにくっついて来ているではないか。
自分で端っこに逃げていたのだから追い詰められるのも容易。
「ホラ、無防備過ぎやろ、今も誘うてる」
「ひぁっ…!」
首筋に這う柔らかな唇の感触。時折歯先が肌を掠め、舌に愛撫され。
キスマークを刻まれたことに気付いて、下腹の辺りがぞくんと卑猥に疼いてしまう。
背後から回された腕も、俺の敏感な個所を探りながらやりたい放題。
たまらず熱い喘ぎが漏れるものの、咄嗟に両手を添えて押さえ込んだ。
「我慢せんと聞かしてや…ココやとヤスの気持ち良さそうな声、めっちゃ響いて興奮する」
「ちょ…なんで今日はそんな全開モードなん!?」
そんな問いと共に、何とか身を反転させた。
すると、少年のような笑みを湛えた大倉と視線が交わる。
「俺、ヤスと一緒に暮らせるってこと、自分で思うとった以上に浮かれてるみたいや」
そんな真っ直ぐ伝えられては、きゅんとしてしまうやら納得してしまうやら。
…あぁ、嬉しくて浮かれ気味なのは俺だけじゃなかった。普段のような自分ではいられない程に。
「俺、暫くはこんなテンションや思うから、ゴメンやけど我慢してな」
「我慢やなんて…」
ふるりと首を横に振るが、次第に大倉の表情が鋭いオスの貌になっていくのだ。
「あと、こっちからグイグイ行くと急にヤスが初心な感じになるんがたまらんわ」
「そこは自覚してるけど聞きとうなかった!」
大好きな人と一緒に住むって、こんなドキドキソワソワの連続なのか。
俺の心臓も腰も、あらゆる意味で大丈夫だろうか。
…まず今は、お風呂の熱気と大倉の攻めで俺が逆上せてしまう前に・早くベッドでも何処でも連れていってくれ!
-貴重なお時間を頂き、有難うございました。