ドラクエ7、完全初見プレイ感想です。


※長いです。とても長いです。それだけこのレブレサックの村のエピソードが濃いのです。この村はすごい村ですよ。極限状態に置かれた人間の集団心理(ヒステリー)、豹変していく人間たち、その人間が最も怖いという描写、身勝手さ、人間の負の側面(醜さに弱さ)と、これでもかっていうくらい描かれているのですから。





主人公一行が訪れたところは、レブレサックの村。ここの地は封印されているだけでなく、濃霧に覆われてしまっている。そのため、村からは出られず、閉じ込められている状態。その原因究明に、4名の者が魔の山へと向かった。しかし、4名はそのまま戻ってくることはなく、入れ替わるかたちで神父の服を着た魔物が村に現れ、教会に住みついてしまった。恐れおののく村人たち。そんな時に現れたのが、主人公一行だった。


村の若い男性を魔物から助けたことで、主人公一行は住みついた魔物を倒してくれる人たちだと勝手に期待されてしまう。勝手に期待されてアテにされ、主人公は困惑し、同時に反発心を抱くのだった。村人たちに話しを聞いていくと、この村は極度の不安と恐怖、憎悪に陥り、極限状態に置かれていることがわかってくる。その象徴として、話しを聞かない、滲み出す暴力性があった。そして疑心。村人たちは、教会にいる魔物をぶっ倒す!と一致団結してしまっていた。村から理性と秩序が失われ始めていく。


過去の経験から、この異様な空気に流されず、また、呑まれないように主人公は慎重に情報収集していくことを決める。そして、魔物の姿を確かめるため、教会へ向かう。教会へ入ると、確かに魔物はいた。が、何かがおかしい。個室で大人しく座っている姿からは、悪意や殺意、敵意を感じなかったのだ。そんな時、主人公はあるお宅で黄金の女神像を発見する。ガボやメルビンが口にした疑問から、プロビナの村で聞いた話しを思い出し、主人公は教会にいる魔物はプロビナの村で出会った記憶喪失の神父様なのではないか?と思い始める。それは、確信に近かった。


その後、教会にある墓地で両親の仇討ちを誓っていた息子のルカスくんと出会う。そこへ突然、教会から神父の服を着た魔物が出てくる。が、魔物は悲しそうにこちらを見ているだけで、何もしなかった。その姿を見て、ルカスくんはこの魔物は悪い奴ではないのでは?と思い始めていく。


村長のお宅で作戦会議が始まり、教会の魔物をぶっ倒すことが決定的になる。しかし、ルカスくんは主人公一行に、魔物の姿ではあるけど悪い奴とは思えない。何もしていないのに倒すのはダメなんじゃないか?と訴えてくるのだった。さらにルカスくんは、魔物の正体が実は死んだと思われていた神父様なのではないか?と気付いているようでもあった。


作戦は、教会を囲んで火事だと嘘をついておびきだし、出てきたところを集団リンチするというものだった。村長に作戦への参加を求められる主人公一行。ルカスくんとの会話から、魔物の正体が神父様だと強く確信しており、尚且つ一方的に暴行を加えること何てしたくもないため、主人公は断固拒否する。すると村長は豹変。主人公一行を魔物の仲間認定して暴行し、納屋に閉じ込めてしまう。扉を開けて外に出ると、ルカスくんが助けを求めてくる。このままでは神父様が殺されてしまう、と。集団リンチを止めようとしたものの、こちらの話しを全く聞かず、またしても魔物の仲間認定し、ルカスくん諸とも暴行を加え、魔の山へと幽閉されてしまう。村人たちは人間の集団心理に完全に呑まれており、最早そこに理性や秩序は皆無だった。





うぅ、この村怖いです。いや、村ではなく、「人間が怖い」です。この村のエピソードは、人間の集団心理の怖さ、そこに呑まれ、陥った人間の怖さを描いていますね。霧は主人公一行を行かせないため何てバカで呑気なことを書いてしまいましたが、大間違いでした。すみません。ここで冷静に、この村のことを整理しましょう。


人間の集団心理の怖さ。


霧や教会に住みついた魔物というのは、村人たちを極限状態に置くためのものでしかありません。霧に囲まれるという閉鎖された空間。それは非日常の中に閉じ込められたということになります。その中に長時間閉じ込められ、外に出られない。逃げられない。究明と討伐に向かった村人4名が戻ってこない。そこへ突然魔物が現れ、住みついてしまう。ここにはもう戦える者は誰もいない。村人たちは不安と恐怖、募る憎悪により極限状態となり、疑心暗鬼になっていきます。


いつ何をされるかわからない。いつ何をしてくるかわからない。いつまでこの状況が続くのか。何もわからない。そういった極度の不安や恐怖に加えて自らの憎悪に陥った時、人は冷静な判断が出来なくなってしまいます。ここから出ても外には魔物がいるから助からない。その極限状態が続くと、人は捌け口となる標的を求めるようになります。そして次第に理性や秩序を失っていきます。


みんなでやれば怖くない。これは良いこともありますが、悪い面もあります。つまり、恐ろしい面です。このレブレサックの村のエピソードは、その恐ろしい面を徹底して描いています。


人は集団になると、責任感や判断力が低下します。罪悪感や意識が薄まり、本当はしてはいけないこともするようになります。例えば、赤信号を渡る。渋谷のハロウィン。居酒屋で大騒ぎ、日本代表サッカーファンよる渋谷での暴動、いじめ…などなど。共通しているのは、周囲の迷惑を考えていないという身勝手さと道徳観が薄れていることです。人から注意されると、「みんなやってるだろ」、「何で自分だけなの!?」と決まって返すのが特徴です。悪いことを悪いと思っていませんし、迷惑をかけているという罪の意識もありません。自分だけが悪いのではないと主張してくることから、それは明らかなのです。ここには理性や秩序はありません。話しや注意何て聞きません。聞き入れません。むしろそういう人たちは敵になります。だから、警察は大変苦労するのです。レブレサックの村の人たちも、この集団心理に陥ってしまうのです。


みんなで仇討ちをする。ぶっ倒すことで一致団結。


集団思考に陥りこうなると、この団結を壊すようなことは出来なくなります。つまり、反対意見、異論が言えないのです。団結が原則だからです。これが最悪の場合、集団リンチを引き起こすまでになるのです。それが、拒否し、阻止しようとした主人公一行とルカスくんを魔物の仲間認定して暴行を加えてきた場面になります。そして先ほど書いたように、集団心理に陥って罪の意識や責任感は全くありません。村の人たちは極限状態がピークに達しており、魔物を完全に悪としていますし、積もり積もったストレスの捌け口という名の標的にしていますから、もうまともな判断は出来ない状態です。


普段やらないことを、極限状態に置かれた人間が集団になると冷静さや理性を失い、やるようになってしまう。善良そうに見える人たちが豹変し、主人公一行や幼い子供であるルカスくんに暴行を加えても、無抵抗の魔物をリンチしていても何とも思わなくなる。支配する狂気。呑まれた人間。大変恐ろしいです。疑心と不安から、人間同士殺し合うまでに至る怖さ。


レブレサックの村のエピソードは、「真に怖いのは人間である」ということを描いているわけですね。ドラクエシリーズの中でも屈指のエピソードと言えるのではないでしょうか?まだレブレサックの村の封印は解いていませんが、すごいですよ、これは。


では、魔の山を攻略していきましょう!とにかく早く戻らないと神父様が殺されてしまいます。急げ急げ!



ルカスくん「いたた…。君たち、大丈夫?ごめんね。僕のせいでとんでもないことになっちゃって」


立ち上がる時に、ガボの母代わりであるオオカミさんが顔をプルプルとやるのがカワイイですね。しっかし、ここにマリベルがいなくてよかったなと思いました。アイラは戦士タイプで装備が頑丈です。それに比べてマリベルは頑丈な鎧は装備できませんし、相手が村人であってもダメージはデカイですから。幼い子供であるルカスくん、女性であるアイラ、動物のオオカミさん。彼らにも暴行を加えたところに、もう村人たちには理性や秩序は全くないと言えますね。極限状態に置かれた人間と場を支配した狂気。殺気に満ちた目。怖すぎです。本当に怖い。


あぁ、フィッシュベルが恋しいです。音楽が好きなんですよね。穏やかな村の空気、ゆったりと流れる時間、居心地の良さ。帰れる場所があるっていいなって思えるあの音楽が。ドラクエ7は音楽も良い曲が多くて、大好きですね。あっ、でもね、船の音楽はドラクエ2の大海原を行くが一番好きです。フィールドは4の馬車のマーチ!最後の導かれし者のライアンが仲間になって、外に出ると音楽が変わって…あれは鳥肌たちましたね!大好き!7クリアしたら4を久しぶりにプレイしようかな。…って、音楽の話しを書いてる場合じゃない!先へ進みましょう!


メルビン「…まったく、年寄りに何というバチ当たりな!」、ガボ「イテテテテ…。あんのヤロー、思いっきりぶったな!タンコブできちまったじゃないか!」


そうだった。子供はガボも同じなんですよね。年寄り、子供、女性、動物。もう冷静な判断は出来ず、狂気状態。物事を深く考えない安易な排他性。勝手に期待してアテにして、叶わぬと見るや魔物の仲間認定して暴行する。身勝手さと疑心と不安がよく表れています。殺し合い寸前。今回のボスは人間をよくご存知ですね。そして、頭が良い。早く対峙してみたいです。どんな奴なのでしょうね?楽しみです。


ここで疑問なのですが。村の人たちはさ、魔物の正体が神父様だったと知ったらどうするのでしょうね?「ごめんなさい」では済まないと思うのですけど。



さて、魔の山攻略。いやぁ、道が長い上に複雑。そしてエンカウント率の高さ!ちっとも進めないので、イラッときます。これはもうちょっと何とかならなかったのでしょうか?2、3歩進んだらまたすぐ戦闘の繰り返しでは、ストレス溜まります。しっかし、ここを通って討伐に向かった4名って、相当な腕前なのでは?ここに出る魔物、結構強いですよ?よく行けたなぁと感心します。こちらはガボのしゃくねつで一掃しちゃいますけど。


ルカスくん「もう聞いた?僕の父さんと母さんのこと。二人とも、この山を登って魔物をやっつけに行ったんだ。でも、帰ってこなかった。もしかしたら、生きてるんじゃないかって僕…。そんなことあるはずないのにね」


どうして二人で行ってしまったのか。子供を置いて魔物討伐に行ってはダメですよ。今さらそんなこと言ってもどうしようもないのですが、言わずにはいられませんでした。神父様が生きていたのだから、自分の両親も…と希望や願望を抱きたくなるのは無理もありません。一人ぼっちになってしまった寂しさ。現実を受けとめようとしている強さ。ここは主人公一行が力になってあげないとね!


どうにか頂上に到着しました。すると、神父様が魔物と一緒にいます。ルカスくんは大喜びしていますが、あれは神父様ではないでしょう。神父様のそばには魔物が霧を発生させています。霧で人間を閉じ込めるために。やっぱり、人間同士による殺し合いが目的でしたかね。コイツらを倒せば、ラーの鏡は手に入るのでしょうか?全然そういう情報なかったですけども。でも、元に戻すにはそれしかなくないですか?それとも、ボスを倒したら戻っちゃう感じですか?どうなんでしょうか?


神父「もうじき村の奴らがうまくやるさ。奴さえ死ねば…」


やっぱり、人間同士による殺し合いが目的でしたか!頭の良い魔物ですよ、本当に。けど、どうして神父様はここまで狙われるのでしょうね?個人的には人間たちが希望を抱いてしまうからだと思っています。


神父「おや、どうしました?こんな山奥に。道に迷ったのですか?」


神父になりすましていますね。それに引っ掛かってしまうルカスくん。ここいると食われるぞと言われてしまいます。


神父「そう。この人たちのようにね。魔物を倒し、山から霧を追い払うため、この人たちはやって来た。

ルカスくんにはきっつい事実と現実です。その成れの果てが、捨て置かれたようにある骸でしょう。


ルカスくん「神父様!どうしてそんなことを言うんですか!?神父様だって僕の父さんや母さんと一緒に魔物退治に…」


ルカスくんは冷静で毅然としています。す、すごすぎます(^^;


神父「そう。私は…神父は魔物退治にやって来た」


はい、コイツは神父様ではないことがこれでハッキリとしましたね。本当の神父様のこと…真実を語り始めます。


神父「仲間たちは次々に死んでゆき、それでも神父は諦めず立ち向かってきた。だから私は言った。村を守りたいなら、私と取り引きをしないか?と。私と姿を取りかえ、おぞましい魔物の姿になって生きるならば…。お前の生きている限りは村を襲わずにいてやろうと」


つまりは、村人を人質に取ったということですね。神父様に選択の余地はなかったわけだ。このまま戦っても勝ち目はない。負けたら村は襲われてしまう。この取り引きを断っても、結果は同じ。だから、この取り引きを受け入れるしかなかった。そういうことですね。


神父「このボトク様となぁ!約束したんだよ!魔王様の配下、ボトク様とな!」


そして姿が魔物の姿に変わります。

あっはっは。約束どおり、それまでは村の奴らにゃ手は出さねぇよ。

人間の醜さや弱さ、それによる結果をわかっていてやっているのですから、コイツは頭が良いです。いやらしい魔物ですよ。やり方が陰湿です。種を撒いて、疑心暗鬼にさせて人間同士による殺し合いをさせる。撒いておけば、後は勝手にやってくれるのだから、その様子を笑いながら見ているだけでいい。自分の手は汚れない。諸悪の根元はコイツですが、完全にコイツが全て悪いと言えないのも事実かと。


あそこで集団心理や狂気に呑まれた自分自身にも非はあると思います。けど、あの閉ざされた空間に長時間閉じ込められ、魔物が住みつき、何をしてくるか、されるか分からない、先行きも見えない中不安と恐怖でストレスもピークになる極限状態で、あなたは果たして冷静な判断が出来ますか?と問われると、自信はないです。色々好き勝手に書いてきましたが、それは僕が離れたところにいるからです。僕はきっと、傍観者になってしまうような気がします。弱いから。村人たちを責めることは、誰にも出来ませんね。ただ、あの身勝手さはかなりイラッときますけど。


ボトク「あはははは!まんまと引っ掛かった!クックック。楽しみだなぁ!あははははは!」


あー、ムカつく!


そしてコイツ、ルカスくんを蹴り飛ばしました!(怒)ここまで聞いて帰れると思うなよ、邪魔するやつは殺してやる!と、戦闘に突入です。


ラーの鏡は7の世界にはなく、きっとコイツを倒せば神父様の姿は戻るのだと思います。だから、全力で戦います!


いやらしい魔物は、戦闘でもいやらしいですね。一人を集中攻撃してきます。狙われたのはガボです。守備力低いですからね。このガボの守備力…というか装備の貧弱さはどうにかならないのでしょうか?ガボの回復とスクルトを優先しつつ、主人公とアイラは攻撃、メルビンは回復と補助、時に攻撃、ガボはずっと防御でいきました。勇者だからターンごとに50回復するのはこういう時はありがたいですね。でも、呆気なかったです。弱くね?


あー…わかった。ボトクは弱いから、戦わずして勝つ方法や手段を知っていたわけですね。すごいわ。


霧を発生させていた魔物たちは逃げていきました。さぁ、早く村へ戻りましょう!…って、イベントで帰ってこられるのですね。ちょっと拍子抜け。


「あれっ。もう火あぶりは終わったんですか?さっき、たきぎを集めてきたばかりなのに」


宿屋の人が平然と恐ろしいことを言っていることがとにかく怖いです。自分たちが何をやろうとしているのかがわかっていません。もう善悪の判断さえ出来ない状態なんですね。


これを聞いたルカスくんや仲間たちはビックリです。


「とうとう、あの魔物も最期だ。嬉しいねぇ」


何もしていない無抵抗の魔物を一方的にリンチし、更に火あぶりにするとか。正気の沙汰じゃないです。怖いです。本っ当に!そこまでするかよと言いたくなります。


「はっはっは!バケモノめ!もうおしまいだぁ!これから火いつけてやる!」


こ、怖い…。リンチした挙げ句、身動き取れないように縛りつけ、火あぶりにしようとしている人間たちがです。集団になると、人間は気が大きくなります。数的優位にも立っているため、調子に乗りやすいのです。責任感や罪悪感が全くなく、まともな冷静さや判断力はありません。人間の集団心理が働きまくっています。平然とこういうことが出来てしまうから、恐ろしいです。


「魔物よ。お前はこれから神の御心のまま、裁かれるのです!神父様や村人の命を奪ったその罪を自らの命であがないなさい!」


うわぁ。シスターまでもが「死ね!」と言ってますよ。自分たちの行為を「裁き」と正当化しているのも怖いです。シスターがこれでは、そりゃみんな疑わないですよ。神に仕える人間が「裁き」だと言ってしまっているのだもの。


恐ろしいことを平然とやってしまう人間の集団心理の怖さ、理性と秩序が失われ、暴徒化した人間たち。捌け口として標的を求め、魔物をターゲットとし、魔女狩りが始まる。何もかもが生々しく描かれているのがとにかくすごいです。


集団心理、集団ヒステリー。これはすごいエピソードですよ。


「俺の息子の苦しみがわかったか!バケモノめ!」


そんなバケモノだったら、あなたたちはもうとっくに食われていますよ。そこに疑いが持てないほど、もうまともじゃないのが残念ですね。


「さぁ村長さん、火をつけて下さい!霧と魔物を操って私たちを苦しめた魔物を燃やしてしまいましょう!」

「てめぇ何か怖くねぇぞ!さっさとおっ死んじまえ!」


縛られている神父様の心中を思うと、早く解放してあげたいです。耐えられないですよ、こんなの。


「バケモノを燃やして灰にしちまうんじゃよ!さぁ村長さん!」


「さぁ村長さん!」

「さぁ火をつけて!」、「バケモノの息の根を止めるんだ!さぁ火を!」、「さぁ村長さん!」


「さぁ!」、「さぁ!」


怖い怖い!怖いですって!!!さぁ!さぁ!って迫ってるよぉ。一人にやらせようとしているのも怖いし、ここで村長がNO何て言おうものなら、主人公一行と同じ目に遭います。集団心理が完全に支配していますから、反対意見や異論は言えなくなります。言おうものなら、村長がリンチされます。不安や恐怖の極限状態に置かれた人間たちの集団ヒステリー。狂気が覆い、異様な空気。変貌していく人間たちの怖さと、理性と秩序が失われた集団心理。それらによって暴徒化した人たち。


「真に怖いのは人間である」。


そう。怖いのは魔物ではありません。人間なのです。すごいですね、ドラクエ7!まさかここでこんな強烈なエピソードが待ち受けていたとは思いもしませんでしたよ。


ここでルカスくんと主人公一行が止めに入ります。


村長「ルカス!まさか、また邪魔をしようというのではないだろうな」


ルカスくん「村長さん!聞いて下さい!あの人は魔物じゃないんだ!魔物の姿にされてるだけで…」


ルカスくん、必死に訴えます。魔物は魔物じゃないと。「人」だと。


その時、縛られていた神父様の姿が元に戻ります。

リンチされてしまったことで、神父様は重傷を負っています。この倒れ方を見るに、相当なダメージでしょう。これは村人たちがしてしまった結果です。全ての非はないと言えますが、皆がしっかりと受けとめなくてはならないことです。呑まれてしまったとはいえ、自分たちがしてしまったことに変わりはないのですから。


村人たちは、この事実や現実とどう向き合うのでしょうか?何かさ、これまでの身勝手さを見るに、全員逃げそうな気がしません?


ルカスくん「そうだよ。神父様だったんだ。神父様だったのに!」


ルカスくんの叫びが、村中に響き渡ります。


ルカスくん「僕は聞いたんだ!山の上で魔物が言った。君たちも聞いたよね!?神父様は村を守るために取り引きしたんだ。魔物と姿を取りかえて!それなのに…」


皆が殺そうとしてしまいました。


村長「ルカス、我々は…」


ルカスくん「お願いだ。手を貸して。神父様を教会へ」


真実を知った村長は何か言いかけますが、遮るようにしてルカスくんは主人公一行に神父様を運ぶために手を貸してほしいと頼みます。


村長「ルカス」


ルカスくん「お願い。僕一人じゃ運べないんだ。手を貸してよ」

ルカスくん、村長をスルー。村人たちではなく、主人公一行にお願いをしてくるところにルカスくんの村人たちに対する怒りや不信を感じます。両者の間に出来てしまった溝とも言えるかもしれません。


ルカスくん「ありがとう。君たちには何から何まで面倒をかけるね。神父様は眠ってるよ。体中ひどいケガで、すごく苦しそうなんだ。もしかしたら神父様、このまま目を覚まさずに…」


怒り、憎悪、恐怖…それらをぶつけるようにリンチしたのですから、それはそれは相当な重傷なはずです。回復呪文かけてやれよ!と思いますが、それをやったらストーリーが破綻してしまうので、ダメなのでしょうね。しっかし、何から何まで面倒をかけるねって、子供が言うセリフではないです。それだけルカスくんがしっかりしているのがよくわかります。立派です、本当に。


ルカスくんは何かを思い出したように、教会を飛び出していきます。持ってきたのは、母親の形見である黄金の女神像です。きっと女神様が神父様を助けてくれると。神父様は何一つ悪いこと何てしてないのだからと。ルカスくんの存在が神父様の癒しでしょう。僕はそう思います。


さぁ、一人一人に話しを聞いていきましょう。


「ねぇ、本当なの?教会の魔物が神父様だったって?」


はい、と答えます。


「そうだったの…。あぁ、私たちは何て罪深いことを!」


いいえと答えた場合。


「いいえ、気を遣わなくてもいいんです。あぁ…何てお詫びをすれば!」


本当に「悪いことをしてしまった」と思っていたら、こんな自宅にいないと思うのですよね。


「妻と娘にも全てを話しました。神父様…助かるといいのですが」


助かるといいのですが…じゃなくて、看病しようとはしないのですね。それに、どことなく「他人事」のように聞こえます。ちなみに、妻は言葉を失っています。


「あたしの目の前で魔物から人間に戻って…。今でも目に焼きついてますよ」、「全部魔物の仕業だったの?何てひどいことを…」


あぁ、やっぱりね。「自分たちは悪いことをしてしまった」とか、「申し訳ないことをした」と思っている人はほとんどいないのですね。諸悪の根元は、確かに魔物です。しかし、そのあとの行動はあなたたちによる意志決定なのですから、魔物が全部悪いというのは成立しないと思いますけどね。それと、全部魔物の仕業と片付けてしまってはいけないことです。この人たちも火あぶりにして殺すことに賛成派だったのですから、もっと重く受けとめないと。無関係ではないのですから。何かね、「自分たちは悪くない」、「自分は何もしてない」とする責任逃れがヒシヒシと感じるのですよね。


何だと、コラ(怒)


人の制止を無視したことを棚上げにして、こちらに責任転嫁してきましたよ。お前らが早くに教えてくれていたら、こんなことにはならなかったのにと言わんばかりです。悪いのはこっちってか?あぁ!?イラつくわぁ。


「…いえ、すみません。こんなこと言えた立場じゃないですよね」


開口一番に責任転嫁の言葉が出てくるということは、それが一番強く思っていることです。つまりは本心です。こんなこと言えた立場ではない。けど、主人公一行がもっと早くに~と本当は思っているのですよ。自分たちだけが悪いのではないと。だから、顔を見た瞬間にその言葉が口をついて出るのです。


「信じられませんよ。魔物だと思ってたのが、まさか神父様だったなんて。

もう、どうするよ?この村はこんな連中ばかりなのですか?でも、こういうこと言う人は絶対いますよね。あー、いるいる、こういう奴って思いましたもの。


責任逃れに責任転嫁。そして正当化。ここまで話しかけてきた人たちの中で、心から重く受けとめて反省している人が誰もいません。まっ、一人に全てをやらせようとしていたのですから、こうなるのは当然ですかね。


村長のお宅へ。


あの魔物は神父様だった。信じられないと話す村の男性たちがいます。主人公一行に気がついた村長は、謝罪してきます。あなた方には申し訳ないことをしたと。


村長「…そうですか。では、全ては魔の山の魔物の仕業だったと。旅の方には本当になんとお礼を言ったらいいか。申し訳ない。我々は明日の朝、皆で神父様に謝りに行こうと思います。それで許してもらえるとは思えませんが…。旅の方。重ね重ね申し訳ないが、ルカスについていてやってくれませんか?さっきの様子ではどうも心配で。ですが、情けないことに今は合わす顔がない。どうか、お願いいたします」


魔物がしたことは霧を発生させて閉じ込めただけです。あとの行動はあなたたちの意志決定なのですから、その行動に対する責任はありますよ。全て魔物の仕業で片付けてしまってはいけないことだと思いますけどね。しつこいようですけども。


何かね、明日の朝に皆で謝りに行こうとかさ、どんだけ主体性がないんだよと言いたいです。ガキじゃないんだから、まずは村長が率先して行動しないと。結局この人は自分一人が悪者になりたくない、自分一人が責任を負いたくないだけじゃないですか。それに、本当に心から申し訳ないと思うのならば、神父様の看病を寝ずにつきっきりでやれよと思いますね。なのに、誰も行かないんですよね。みんなの頭の中は責任逃れや責任転嫁のことばかりなんですね。


残念ながら、自分たちがしてしまったことをしっかりと受けとめて反省している人は皆無のようです。


何、この村。


こういう時に人の本性は出るものです。人の人間性は、きちんと謝れるかどうかで決まると言っても過言ではありません。真摯に謝罪が出来ない人の集まりの村、レブレサック。この村に未来はないでしょうね。謝るどころか、自分は悪くない何て言って自分の行動に責任が持てない人間の集まりでもあるのですから。


ルカスくんはこの先、こんな人たちとどう生きていくのでしょうか。心配になります。


んで、村長のお宅から出て、またすぐ入ると…




寝ているんだよね…(怒)


何であんなぐうぐう寝られるのでしょうか?自分たちがリンチした相手の神父様は苦しそうに顔を歪めて横になっているというのに。


少しも悪いと思っていないですし、反省してないんですよね。神父様のことを心配もしていません。だって、自分たちのしたことを本気で反省していたら、あんなぐうぐう寝られませんって。何て謝ろうか…とか、犯した罪の意識で頭がいっぱいになるもの。


最悪ですね、この村は。



しかたのないことだった。


どっかの誰かのお得意の言い訳を述べています。アスランのことです。


真っ先に出てきたのが言い訳です。この村長も罪や責任から逃げたい、自分だけが悪いのではないというのが本心ですね。そりゃ全て魔物の仕業にしたいに決まってます。


まぁでも村長という立場上、何もしてこないから無害です何て言おうものなら無責任だと言われてしまうから同情の余地はあるかもしれません。が、一番いけなかったのは、真摯に考えることをしない安易な排他性にあったと思いますね。


真摯に謝罪できない村長や、人間がいる村。終わったね、この村は。ダメだ、もう。きっと現代のレブレサックの村はウッドパルナみたいになっていることでしょう。これを糧に…とはなっていないと思います。



教会へ向かおうとすると、何と神父様が出てきました。


歩いてはダメな状態なのだから、まだ横になってないと!なのに、神父様はケガの方はもう何ともないと言います。そして、頼みを聞いてほしいと言ってきます。それは、村の皆が寝ている間に村を出たいのだけど、足もとが覚束ないから付き添ってほしいというものでした。


こういう形で村を出て、神父様はプロビナの村へと辿り着くのですね。でも、どうしてそんなまだまだ重傷の身で出ていくのでしょうか?


神父様「不思議にお思いでしょう。村を出るなどと。旅の方のおかげで、村人もわたくしも救われました。わたくしにかかっていた魔物の呪いはとけた。しかし、村人の心は…。霧が晴れようとも、彼らの心はいまだ苦しみの中です」、「もし、わたしが…もし、わたしがこのまま村に留まるならば、村の人々はわたくしの姿を見るたび苦しむでしょう。彼らに罪はない。全ては魔物の仕業というのに、村人は苦しむでしょう。苦しみの日々は、霧と共に消えるべきなのです。霧と共に。わたくしと共に…」


なるほど。神父様が村を出ていくのは、このあと何が起きるかがわかっているからなのですね。


全てわかっているわけだ。


「醜い争い」が確実に起きるということが。


だから、それをさせないために出ていくというのですね。同時に、もうそういう人間や出来事を見たくないのでしょう。プロビナで火や煙を見て記憶を取り戻したところを見ると、あの火あぶりやリンチはとても恐怖でいっぱいだったことがわかりますから。記憶から追い出したかったほどに。なのに、また自分のせいで争いが起きて…というのは耐え難いと思います。


でも…それは…。




忘れないと言っているけど、忘れてしまうのですよね。素敵な思い出より、恐怖の方が勝ったのだと思います。このあと魔物にまた襲われるわけですから、きっとリンチの時と重なったのではないかなって。だから…。


神父様「旅の方。あなた方にもお世話になりました。ありがとうございますあなた方が村を救って下さった。本当に何と言ってよいやら」


だから、プロビナで「会えてよかった」と仰ったのですね。主人公一行のことも思い出したということは、覚えていてくれたということ。あの時は違和感がすごかったですが、やっと理解できました。


神父様「わたしは多分、耐えられないのです。わたしが村の皆を傷つけてしまうということに、わたしが…」


とても優しい方です。素敵な神父様です。こういう人だから皆は慕ったのでしょうし、あれだけの憎悪を募らせたのだと思うと…ね…。けど、メルビンが言っているように、神父様が出ていけば村人は確かに救われるけど、解決にはならないですね。そこから逃げていますよね。それが、神父様の言う耐えられないということなのでしょうね。


出入口まで来ると、ルカスくんが追いかけてきます。そして、そんな体でどこへ行くのかと、寝てなきゃダメだと引き止めます。しかし、神父様は大丈夫だと答えます。ルカスくんが女神像に祈りを捧げてくれたからと。


神父様「それよりも…わたくしはこの村を出ようと思います。村の皆に、長い間世話になったと伝えていただけませんか?」


ルカスくん「どうして…どうしてあいつらにお礼何か言うんですか!?散々ひどいことをして!あいつらが出てくならわかります。どうして神父様が!?君たちだってそう思うだろ!神父様が出てくことないよ!」


村人たちに対して相当怒りや恨みを持っていますね。けど、村人たちが極限状態に置かれた集団心理に陥ってしまったこともわかるので、ここは難しいですね。でもここは合わせて「はい」と答えてあげましょう。


神父様「もう決めたのですよ。ルカス、彼らを責めてはなりません。わたくしとて、彼らの立場ならば同じことをしたでしょう。神に仕える者は、人々の心を癒し、慰めることが役目。けれど、わたくしを見るたび村人は苦しむでしょう。己の過ちを思いだし…。わたくしはこの村にいるべきではない。神もそう仰るでしょう」


ルカスくんを諭しています。ですが、神父様が出ていくことには僕は反対なんですよね。何の解決にもならないし、村人たちが「反省」する機会がないからです。これをやっちゃうと、あの村人の連中のことですから、良くない方向に行ってしまう気がします。


ルカスくんは体が治るまででもと必死に説得しますが、神父様は聞き入れません。そして、去ろうとした時にルカスくんが黄金の女神像を渡します。

こういう経緯で神父様の手に女神像が渡ったのですね。でも、まさかその女神像が火種になってしまうとは、誰も思いもしないよね。


女神像を一緒に連れて行ってというルカスくんの願いを神父様は受けとります。いかなる魔物や災いから人々を守ってくれるように女神像に祈りを捧げることを誓って。


ルカスくん「神父様、行っちゃったね。何か、ちょっとだけさみしいや」


村の良心は、ルカスくんだけになりました。頼りになる大人はもういないとなると、ルカスくんはこの先大変でしょうね。


神父様が出て行ったあと、村長がやってきます。


村長「ルカス!それに旅の方!では、やはり…」


やはりって…。言い訳や責任逃れを考えているのではなく、ちゃんと真摯に謝罪していたら、こうはならなかったと思いますよ、僕は。だって見抜いてましたもの、神父様は。


ルカスくん「神父様は出てゆきました。みんなにはたくさんお世話になったから、よろしく言ってくれって」


どこかやっぱり素っ気なさを感じますね。まっ、無理もありません。こればかりは。


村長がやってきたのは、嫌な胸騒ぎがしたから。

遅いです。そもそも、本当に悪いことをしてしまった、謝りたかったと思うのなら、あんな言い訳や責任逃れ何て考えません。神父様は村人たちに村を追われてしまったのです。人間という名の魔物にね。


ルカスくん「神父様、怒ってなかったよ。しかたのないことだって。神にご加護がありますようにって。神父様、そう言ってた」


ルカスくんはただ伝えただけなのでしょうが、まずかったですね。これは村人たちにとっては実に嬉しい言葉でしょうから。この村の連中のことですから、都合良く受けとめるのは間違いないと思いますよ。


村長は、償いをさせてくれと主人公一行を家に招きます。


村長の家に招かれた一行は、あたたかい寝床に身を横たえ、疲れを癒した。目まぐるしく起きた事件に思いをはせながら…。そして、次の朝。



次の朝の続きは、次回お送りします。


ここまで長くなったのは、それだけこのレブレサックの村のエピソードが濃いからです。すごいです、これは。活字離れの時代にここまでじっくり読む方はまずほとんどいないでしょうが、それでも目を通してくれた皆様には感謝申し上げます。どうもありがとうございました!