ディアッカとミリアリアのお話しを書いています。




地球軍に切り捨てられた挙げ句、ザフト軍を呼び込むための捨て駒にもされたアークエンジェルは、駆けつけたキラによって危機を脱する。今後どうしようか…。待ち受けているのは、間違いなく処罰。その罰を受けに、また地球軍本部を目指すのか?皆、地球軍に戻る気にはなれず、ムウさんの提案によってアークエンジェルはオーブへ向かうことを決める。オーブは彼らを拒むことはなかった。そして、彼らに代表のウズミは考える時間を与えるのだった。「自分たちが着ている軍服の意味を考えろ」と。





ー突き刺さった言葉ー


ディアッカ「尋問?移送?」


ディアッカのパイロットスーツを持ってミリアリアが現れる。それを見てのディアッカの質問である。ようやく牢から出られるのに、その喜びがディアッカからは感じられない。


ミリアリア「この艦、また戦闘に出るの。オーブに地球軍が攻めてくるから。だから、あんたもういいって。釈放」


素っ気なく言い、パイロットスーツを投げ渡す。そして言い終えると、ミリアリアはスタスタと去っていく。


ディアッカからすれば、意味がわからないことばかりである。地球軍がオーブに攻めてくるとか、地球軍のはずのアークエンジェルが何故かその地球軍と戦うとか、わからないことばかりである。


ディアッカ「何でお前らが地球軍と戦うの?」


ミリアリア「オーブが地球軍に味方しないからよ」

変な話しである。こんな時に同じナチュラル同士が戦うなど。だが、これが地球軍で、戦争なのだ。中立何てあり得ない。必ず"どっちか"、"白か黒か"しかなく、それを求められる時が来るのだ。


ミリアリア「攻撃が始まったら大混乱よ。悪いけど、あとは自分で何とかしてね」


アークエンジェルは、もう地球軍ではない。だから、捕虜を抱えていてももうその意味はない。罪を問うことや、どうこうする気もない。命じたり、強制することも。自由にすると言っているのだ。どうするかは、ディアッカが決めろと。


しかし、これまで命令で動いてきたディアッカに、いきなり自分で決めろというのはなかなか酷な話しである。それに慣れてしまっているからだ。


ディアッカ「げぇ…」


いきなりの釈放に、機体であるバスターはモルゲンレーテが持っていったことを知る。これでディアッカは完全に機体を失った。「ザフト軍人」である以上、バスターを取り戻すことは不可能だ。捕虜になり、機体を失い、ノコノコ舞い戻る。このままザフト軍に戻ってもエリートコースからは確実に外れ、いい笑い者である。


ディアッカ「お、お前も戦うのかよ?」


ミリアリア「私はアークエンジェルのCIC担当よ。それに、オーブは私の国なんだから」

「トールが残るなら、私も」


深く考えず、安易に決めてしまった。その結果は…自分がよく知っている。その上で、ミリアリアはちゃんと自分で考えて決めた。ここには自分に出来ることがある。それに、オーブは自分の国。自分の国を守るために自分は戦う。


ディアッカ「!」

「オーブは私の国なんだから」


自分の国を守るために自分は戦う。そのミリアリアの言葉は、ディアッカの胸に突き刺さる言葉だった。何故ならば、本来ディアッカも国を守るために戦っていたはずだからだ。そのために軍に入ったのではなかったか。なのに…。


自分の国を守る…そこにナチュラルやコーディネイター、自分との違い何てあるのだろうか?




ー決意の砲火ー


戦端が開かれる。その戦いを、ディアッカは見ていた。

彼にも選択が迫られる。ザフトに戻るのか。避難するのか。


ザフトに戻ったとて、以前のように戦えるだろうか?アークエンジェルに銃口を突き付け、追いかけまわす。「敵だから」と何人もの「トール」を手にかけ、撃ち殺す。そうして何人ものミリアリアを生み出す。


きっと出来ない…。


だからといって、このまま市民と共に避難するのも嫌だった。


そんな時に、三機の新型モビルスーツの戦いぶりを見る。何にも考えずに戦い、殺し、破壊していく。その姿は、かつての自分自身。自分もああやって戦っていたのだ。地球軍、ザフト軍、そしてオーブにアークエンジェル。リフレインする、ミリアリアの決意の言葉。

ディアッカは駆け出す。目指す先は、モルゲンレーテ。場所は知っている。以前、潜入したからだ。




サイ「バスター!?」


苦戦するアークエンジェルに迫る戦闘機。一条の光が、その全てを撃ち落とす。撃ち落としたのは、何と敵であるはずのバスターだった。


ディアッカ「とっととそこから下がれよ!アークエンジェル!」


ミリアリア「あいつ…何で…?」

自分の国を守るために戦う。それはナチュラル、コーディネイターも「違い」はなく、「同じ」なのだと気がついたから。


そして、自分を悪く扱うこともなく、治療や食事をきちんと提供してくれたアークエンジェルに、恩があったから。


何よりも、初めて自分が「誰か」を守りたいと思ったから。


命令ではなく、自分で決めたディアッカの決意の砲火だった。


長射程狙撃ライフルを構え、ぶっ放すバスターはカッコイイの一言!



ーミリアリアの成長ー


ディアッカに続き、アスランも参戦。そして、三機の新型モビルスーツのパイロットたちの時間切れ(薬切れ)により、地球軍は一時撤退する。


キラ「君も、トールを殺した。でも、君もトールのこと知らない。殺したかったわけでも、ないだろ?」


ミリアリア「!」

キラとアスランは再会し、言葉を交わす。そこで、トールを撃ち落としたのはアスランであることをディアッカとミリアリアは知る。


憎かったわけでも、恨みがあったわけでもない。殺したくて殺したのでもない。ただ"敵"だったから。自分の目の前に来たから、いたから、撃つべき"敵"だったから、同胞以外は排除の対象だったから。だから、殺した。それが戦争であり、軍人である自分の務めだったから。それが正しいと信じ、考えようとも疑うこともせずに殺してきた。


その後も戦争のこと、この戦争の行き着く先などをキラは語る。そして、キラ(たち)が戦おうとしている"敵"についてと、その決意も。


話しが終わると、キラは去っていく。ラクス同様、アスランに何も求めることはなく。


同時に、ミリアリアも走り去ろうとする。が、ディアッカは呼び止める。呼び止められたから、ミリアリアは怒りをにじませながらも足を止める。呼び止めたはいいものの、ディアッカは特に何か考えがあって呼び止めたわけではないため、言葉は出てこない。


ディアッカ「いや…その…トールって奴、殺したの、あいつ…」


教えてあげようという親切心からなのだろうが、そんなことミリアリアはわかっている。それに、逆効果である。


ミリアリア「だから何!?あんた、聞いてなかったの!?キラの言ったこと!あの人を殺すと、トールが帰ってくるの!?違うでしょ!?だったらそんなこと、言わないで!」

トールを殺したのはアスラン。そのアスランを殺せばトールが帰ってくるというのなら、ミリアリアはアスランを殺すだろう。


が、アスランを殺してもトールは帰ってこない。それを知っていて、尚且つそれは戦火の拡大を意味すること、戦いが終わらないことがわかっているため、ミリアリアは必死に憎しみを断ち切っているのだ。


本当は、アスランを殺してやりたくて仕方ないはずだ。憎くて憎くてたまらないはずだ。一度はそれをディアッカにぶつけているのだから、その思いの強さはよくわかるはずだ。


でも、アスランを憎むという楽な方向に行くのではなく、辛い現実や自分の気持ちと向き合うという辛い選択をし、実行しているのだ。


ここに、ミリアリアの成長がある。




ー彼の変化の理由ー


地球軍の再攻撃が始まる。キラもアークエンジェルも出撃していく。そんな中、取り残されるアスラン。もう自分の中では答えは出ているのに、あと一歩が踏み出せない。そこへ、さっきまで私服だったディアッカがパイロットスーツに着替え、ヘルメットを手に持ち、今にも出撃していく格好で現れる。


ディアッカ「お前、アレ(フリーダム)の奪還命令受けてんだろ?はぁ…。やっぱマズイんだろうなぁ、俺たちザフトが介入しちゃよぉ」


アスランの本心を知っている。だからこそ、ディアッカは言う。どうする?と。


"ザフトのアスラン・ザラ"ならば、その命令に従い、忠実に任務を果たす。しかし、一個人アスランとしては、その命令に疑問と反発を抱いている。


アスラン「だが、俺はあいつ…あいつらを死なせたくない!」

ディアッカ「珍しく…ってか、初めて意見が合うじゃんか」

アスラン「(えっ…?)」

そりゃアスランは驚くだろう。絶対笑われる、バカにされると思っていたのだから。


これがディアッカの大きな変化である。


彼が変化する理由となったのは、ミリアリアとの出会いと交流である。ディアッカはそこで、"敵"にも顔と名前があるということを知った。これまで「ナチュラル何てバカでノロマな下等生物」くらいにしか思っていなかった。しかし、ミリアリアと出会い、交流を重ねたことで、その認識は大きく変化した。


顔と名前を知ったことで"敵"の素性を知った。その"敵"に銃口を向け、これまで何人ものトール殺してきた。その度にミリアリアを一人、また一人と生み出してきた。増やしてきた。それが戦争であり、また、戦争だから許されてしまう行為なのだ。素性を知ったからこそ、その戦争の矛盾や愚かさに気付くことが出来た。


ミリアリアの悲しみの涙と、私怨を断ち切る強さを見た、国を守るために戦うと言った決意の言葉を聞いた。そこにナチュラルもコーディネイターもない。「違い」何てどこにもないことを知った。その瞬間、ディアッカはもう人をバカにしたり、人を見下し、笑うことやめた。しなくなった。そして、人を気遣う、思いやりの心を持った。その行動が、アスランの背中を押してあげるという行為によく出ている。以前のディアッカからは、信じられないことである。だからこそ、アスランは驚くのだ。


初めて「誰か」を守りたいと思った。そう思った時、ディアッカの戦い方も大きく変わったのも注目ポイントである。アスランに持っていかれがちだが、ディアッカの戦いぶりもとてもカッコイイのだ。



次回は友に語るディアッカと、最後の出撃前の二人のやり取りを書いていきます。