<Bou-ken weekly>070 マイルス・デイビス生誕100年祝LIVE PIT INN 他

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                           2026.05.06(水)

 

   立夏・蛙始鳴(かわずはじめてなく)候、七十二候が立夏の初候に変わり、野原や田んぼで蛙が鳴き始める頃となりました。蛙の声が響くようになると、野山の若葉もみずみずしく輝いて、まもなく本格的な夏が訪れます。今年の夏も暑さが厳しくなりそうですから、そよ風の心地良い今の内にできるだけ外気に触れたいものです。そよ風で思い出すのは、4年前に亡くなったオリビアニュートンジョンの“そよ風の誘惑”ですが、原題は“Have You Never Been Mellow?(あなたはメロウな気分を味わったことがないのですか?)”、どこをどう読めば“そよ風の誘惑”になるのか不思議な邦題です。

 

   ところで、五月連休になると、知り合いとすれ違ったりする度に、「連休はどこかにお出かけですか?」と質問されることが多くなります。質問する当人に深い意味はなく軽く挨拶代わりに聞いているだけのことだとは思いますが、どう答えたものか一瞬考えてしまいます。「近場の美術館やコンサートに行く予定です」とこちらも軽く答えますが、これは連休中に限ったことではなく普段の暮らしぶりなので、別に連休だからどうだということでもありません。

 

   話は変わりますが、石油・ナフサの供給が滞ることで私たちの日常生活にも広範な影響が及びつつあるようです。先日、ミツカンが納豆の生産量を減産しいくつかの商品については販売を休止するというニュースが出ていましたが、これは納豆そのものではなく、石油由来のプラスティック容器不足が原因だそうです。たしかに、納豆の容器も中に入っているタレやからしを包んでいるビニール袋も石油由来ですから、石油が入ってこなくなると食べ物の容器にも影響が出てきます。ラーメンチェーンの日高屋でもテイクアウト用のプラスティック容器が手に入り難くなり、各店舗からの発注を制限する報道もありました。

 

   ガソリンやジェット燃料、火力発電等といった典型的なもののみならず身近な日常生活にも大きな影響が及ぶことになるとは、つくづく現代社会は油に依存して成り立っているのだなと痛感します。アメリカ合衆国大統領もそこまで想像力が働かなったのではないでしょうか。

 

 

   この一週間の私生活を振り返りますと、4月29日(水:昭和の日)は、午前中から自宅を出て、六本木の有名ジャズ俱楽部“Keystone Club”に地元大田区出身Wakasa(飯田若沙さん)のライブを聴きに向かいました。開場時刻12:00に間に合うように出かけ、東急東横線乗入れの副都心線 明治神宮前(原宿)で千代田線に乗り換えて乃木坂経由で会場に着きました。5分ほど早めに到着しましたが入場は始まっていて入店すると相当数の観客が席に着いているようすでした。おそらくWakasaは人気者なので開場時刻よりもかなり早く並んで待っていた客が多く開場も早めたのだろうと推察します。幸いまだ満席状態にはなっておらず私はステージ最前列右側のテーブル席に座ることができました。テーブル席は相席で、私よりも先に着いたお客さんはNikonの一眼レフカメラを持参されて準備されていましたので、立派で高級なカメラをお持ちですねと挨拶すると、「そうなんです。Wakasaが歌う姿を撮るためこの角度の席を確保したんですよ。」と満足そうに応えてくれました。いよいよ開演の13時間際には来場客で満席となり、テーブル席も囲うように4名での相席となりました。

 

   遠方からはるばる来場の観客も多く、隣のテーブル席には三重県から来られた客、VIP席には先日学芸大学駅珈琲美学で同席し挨拶した長崎県からの来客もおられました。バンドメンバーのGentle Souls3名も名古屋から朝7時台の新幹線で上京して来られたそうです。好きなライブ演奏を視聴するためには多くの時間も費用も惜しまないというのは素晴らしいことだと感心しました。

 

   Wakasaからの挨拶によれば、彼女が2021年に初のワンマンライブに出演した場所がこの“Keystone Club”だったそうで記念すべき思い出の会場での再演で、本人も相当に感情が昂揚している様子でした。

   この日はもう一人、Wakasaのミュージシャン仲間のギタリスト:葵ミシェルさんも演奏に加わりアコースティックギターでWakasaの歌唱をサポートしていました。前回珈琲美学でのライブはWakasaとギターとのDUOでしたが、今回は加えてピアノ、ベース、ドラムスが重層的な響きとリズムを奏でとてもノリノリの素晴らしいライブとなりました。

 

(六本木キーストーンクラブ「Wakasa」)

 

 

   ライブの後は、すぐ近くに構える“国立新美術館”に寄り、“森英恵生誕100年展”を参観してから帰路に着きました。我が国日本を代表する草分けのファッションデザイナーである森英恵は知らない人はいないだろうと思われる超有名人ですが、私はこれまで氏の作品をまともに拝見したことはなく、どんなものだろうと興味を惹かれせっかく近くまで来たのだから観ておこうと入場しました。作品の数々はいずれも美しく、私のような素人でもその魅力は理解できるような気がします。

 

(国立新美術館「森英恵生誕100年展」)

 

   帰路、地元商店街毎度おなじみの町中華「萬福飯店」により、餃子&生ビール、四川餡かけ焼きそば、紹興酒をいただきこの長い一日の行事を〆ました。

 

(地元商店街「萬福飯店」)

 

 

   30日(木)及び5月1日(金)は、大雨接近中の天気予報を踏まえ、終日自宅に籠り養生に努めました。30日は4月から5月への月越しで近所の蕎麦屋に行きたかったものの今すぐにも大雨が降って来そうでかつ風の音も不気味だったため外出は断念しました。1日は目覚めたときには昨夜からと思われる強い雨が降り続けていましたが午後2時半頃から晴れたので、自宅最寄りのお店に買いものに出かけました。店内は同じように雨が上がるのを待って来られたと思われる客で混雑しており皆さんかなり大量に食料品等を買い込んでいる様子でした。

 

   2日(土)は天気回復、夕方から新宿三丁目に出かけました。ジャズ仲間のTさんと17時頃に待ち合わせ、おでんの老舗“お多幸 新宿店”に入りました。人気店で予約は受け付けていないため、入店時に席が空いているかどうか多少不安でしたが、幸運にもちょうどお店を出るお客さんが数名いてそれと入れ替わりでテーブル席を確保することが叶いました。現役時代、新宿勤務していたときに一度上司及び同僚とで訪問したことがありましたが、あれから30数年ぶりでしたので場所も店の構えにもまったく記憶が失せていました。“お多幸”の銀座店には比較的最近に何度か行ったことはあるため、おでんの味は覚えており、関東風の醤油出汁が良く染みた大根や煮玉子は美味しく、福島の日本酒「奥の松」が実によく合いました。

 

(お多幸新宿店「おでん」)

 

 

   “お多幸”を19時前に出て、目的地の“新宿ピットイン”に入りました。Tさんが予約してくれたおかげで入場番号6番・7番で着席できました。五月連休中ということもあり、来客多く、開演直前に席を振り返り見ると満席かつ立ち見客で溢れていました。この日のテーマは“Miles Davis生誕100年祝”ということで、かつて日本人として唯一マイルス・デイビスバンドのメンバーとして活動したピアニストのケイ赤城をゲストに、トランぺッターの中村恵介がリーダーを務めるクインテットが出演しました。メンバーは上記の他、吉本章紘(Ts),金森もとい(B),高橋直希(Ds)ですが、リーダーの中村恵介49歳を中心に、ドラマー高橋直樹は二回り下の25歳、ピアニストのケイ赤城は二回り上野73歳、実に四回りという年齢幅の広い、マイルス生誕100年に相応しいライブとなりました。

 

   ケイ赤城の演奏を聴いたのは初めてでしたが、鍵盤の音がクリアー、リズム感もテンポ良く聴いていて気持ちの良い演奏でした。トランペットとテナーサックスのアンサンブルも気が合っていて一糸乱れぬ名演という感じです。ドラマーとベーシストは熱演で汗が噴き出て、最初はジャケットを着けていましたが、途中からTシャツ姿に変身しました。これから暑い日が増えてくるとミュージシャンは大変ですね。

 

(新宿ピットイン「中村恵介クインテット with ケイ赤城)

 

 

   3日(日:憲法記念日)は、午後からみなとみらい地区の横浜美術館を訪問し、「今村紫紅 没後110年展」を参観しました。ランチは途中下車して磯丸水産武蔵小杉店で「ぶり大根定食」をいただきました。みなとみらい地区は連休中の行楽客で賑わっていましたが、横浜美術館の展示はまだ会期が始まって日も浅いこともありそれほど混雑していませんでした。今村紫紅は横浜の地に縁が深く、三渓園で有名な原三渓(原富太郎)にその才能を認められ彼からの経済的支援を受けて数々の素晴らしい日本画を制作し残されました。横浜美術館自身も今村紫紅の作品を数多く収蔵しておりますが、今回の展覧会ではさまざまな美術館・博物館等からも作品を集めてその画業を振り返っています。

   帰路は風が強く、歩いていても時折突風に身体を押されるような気配でしたので、何処にも寄り道せずに帰宅、身の安全確保に努めました。

 

(横浜美術館「今村紫紅没後110年展」)

 

(磯丸水産 武蔵小杉店「ぶり大根定食」)

 

 

   4日(月:みどりの日)は、親しいRさんとランチを一緒に食べるため、蒲田西口に出かけました。蒲田の老舗割烹「もち月」は予約で満席のためあきらめて、磯丸水産を訪問しました。幸いにも磯丸は空席があり入れました。先ず、お通しのししゃも等の焼き物が出て、次に刺身5点盛と炙り〆鯖、飲物はトマト酎ハイを注文しました。続いてイカの丸焼き、カキフライ、海ぶどうサラダをいただきました。蒲田西口広場では蒲田ファミリーフェスティバルが開催されていて、家族連れなどで混み合っていました。今年の五月連休は、イラン問題や諸物価高騰の影響からか近場で過ごす人々も多いように感じます。昨日に続いて風が強くてまるで竜巻のようなつむじ風が突然吹き付けてくる場面もあってのんびり散歩を楽しめるような雰囲気ではなく、早々に帰宅し養生しました。

 

(蒲田西口磯丸水産「炙りしめ鯖・海ぶどう・刺身盛り合わせ等」)

 

 

   5日(火:こどもの日)は、夕方から再び新宿ピットインを目指し、Tさんと待ち合わせしてライブ前の腹ごしらえにお気に入りの新宿三丁目イタリアン「」を訪問しました。昨日の強風も収まり初夏の爽やかな気候に誘われてテラス席で飲食する団体客が多く、店内テーブル席は空いていました。この日は季節の野菜サラダ、タコ入りトマトソースパスタを、生ビールと赤ワインで味わいました。

 

(新宿三丁目「然」)

 

   この日のライブは本多俊之(Sax)と野力奏一(Pf.)のユニット“ほ・ん・の・り”にスペシャルゲストとして宮野弘紀(Gt.)を招いてのSpecial Editionでした。嬉しいことに、1987年公開の映画「マルサの女」のテーマ曲が演奏されました。本多さんの説明によると、「マルサの女」上映から来年で満40周年を迎えるのを機に、サウンドトラック化されなかったものを含めて伊丹十三作品のなかで本多俊之が演奏した曲をすべてCDとして発表する企画を現在鋭意進めているとのことです。

 

   1987年といえば、当時勤務先会社の新宿本社で働いていた時期で、職場の上司・同僚数名とともに映画「マルサの女」を観に行ったものです。当時の日本経済はプラザ合意後の超円高と金融緩和を通じた経済のバブル化の時期と重なり、都市の再開発が進められ地上げ屋の暗躍が大きな社会現象になっていました。主演男優の山崎努が金儲けの秘訣について語るシーンは説得力に富み若かりし頃の私にとっては非常に印象深い教訓の一つとして胸に刻まれたことを思い出します。映画のなかで流れる本多俊之のサックスが奏でるメロディーも映画のストーリー展開とマッチしていて惹きこまれたものです。失われた30年の前、経済大国日本の絶頂期とも言える40年前、今となっては夢幻のごとく感じられます。

 

 

(新宿ピットイン「本多俊之 野力奏一 ほ・ん・の・り+宮野弘紀」)

 

 

 

   さて、この一週間は、アダム・スミス大内兵衛 松川七郎 訳の「諸国民の富(三)」(岩波書店:1965年9月16日第1刷発行、1991年1月10日第22刷 748円+消費税3%=770円:全509頁)文庫本を338頁から388頁まで、僅か50ページしか読み進めませんでした。

 

   今回読んだなかでなるほどと思ったのは、「得やすいものは失いやすいLight come light go)」という諺のような一文です。当時欧州の各強国はアメリカ大陸に新しい植民地を得たあと、その植民地が生みだす産物の貿易を本国向けに独占することで、植民地を通じて獲得する利益を独り占めしようと様々な規制措置を講じたのですが、その独占から得られる利益というものは、限られた特殊の階級の人々にのみ有利なものであって、その国一般に対しては悪影響をもたらしました。

 

   また独占利潤にあぐらをかいている本国の特権階級の人々は、本来であれば備わっているはずの倹約という得を失ってしまい、金づかいが荒くなり奢侈を尽くすようになる。このような悪い習慣は、そういう生活ぶりを見ている一般大衆にまで悪い影響を及ぼすことになり、創意工夫や改善等を妨げることになる。結果、本国の国力全体が衰退していくことになるというようなことを記述しています。

 

   ある植民地の貿易相手を本国一国に独占すると、本国が必要とする以上の産物をいったん本国向けに輸出し、本国を経由して他の欧州各国へ再輸出する中継貿易が盛んになり、本国はその中継貿易に際して過大な利ザヤを乗せることで独占利潤を掠め取りその利益の上に胡坐をかくことが横行したそうです。その独占利益を享受できる限られた階級の人々にとっては笑いが止まらないことでしょうが、一方で不当な過大利益を吸い取られる植民地や再輸出先の消費国の人々にとってはたまったものではありません。例えば、当初スペインやポルトガルが植民地との貿易を独占していたところ、のちにオランダやフランスが参入してきて、オランダやフランスでは、植民地からの産物の輸出先を本国向けに限定することなく、自由にどこに向けても輸出することが認められるようになり、さらに英国では植民地に大幅な自治権・自主性を認めるようになると植民地側の生産性が向上し経済発展が進むようになると、スペインやポルトガルは既得権が失われ衰退していったということです。

 

   今日においても、主要国間の貿易において、いわゆる戦略物資(石油、レアアース、最先端半導体、AI技術等)に関して輸出制限を課す動きがありますが、このような輸出規制や産業の独占といった政策は、長期的には競合や代替手段が出現することでその効果は薄れて行くことになるでしょう。むしろ相手国から報復措置を受け自分で自分の首を締める意に反した結果に繋がりかねません。

 

   アダム・スミスが生きていた約250年前と現代とでは国際経済の相互依存の程度は比較になりませんが、本質的には当時の教訓は今日でも通用するように思われます。

 

   以上、今週もご覧頂きありがとうございます。

                                  敬具

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(参考1)<菖蒲静夫著>「税務担当奮闘記」(中央経済社)2024年11月1日
https://www.biz-book.jp/isbn/978-4-502-51791-4
Amazonなどのネット書店でも取扱い有 https://www.amazon.co.jp/dp/4502517917/
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(参考2)中央経済社「会計人コースWEB」(2025年4月2日掲載)<菖蒲静夫寄稿>

会計人コースWeb

【先輩からのメッセージ①】経理に配属された新社会人の皆さんへ ~未来を拓く5つの鍵とは? | 会計人コースWeb

 

(参考3)株式会社 中央経済社ホールディングス決算発表 P.3(税務分野)

2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結)

 

(参考4)マイルス・デイビス生誕100

260502nakamura – 新宿PITINNジャズライブハウス

マイルス・デイビス(Miles Davis)生誕100年を祝うライブ&トーク開催! ケイ赤城ら遺伝子を継ぐ面々がカムバック以降を振り返る | Mikiki by TOWER RECORDS

 

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※. 菖蒲 静夫  (あやめ しずお) ブログWebsite
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Bou-ken weekly 研究員

菖蒲 静夫(あやめ しずお)

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