<Bou-ken weekly> 053  初読み 玉三郎の「風を得て」真山 仁 著 他

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                               2026.01.07(水)

 

   小寒・芹乃栄(せりすなわちさかう)之候、芹は冷たい水辺に育つ野菜で、冬の寒さにも枯れずに青々と茂る強い植物。厳寒の中で緑を保つその姿は、生き抜く力や清らかさを象徴しています。このところの朝晩の冷えは厳しく身にこたえますが、芹のように寒さを乗り越えて行きましょう。

 

   年明け早々、アメリカ合衆国大統領による暴挙に世界中が憤りを感じていますが、今年はそのアメリカ合衆国の建国250周年を迎えます。1月5日(月)の日本経済新聞経済教室に東京大学名誉教授 吉川洋先生の寄稿論文「新時代の扉を開く 文化で国際競争を勝ち抜け」によりますと、今年は英国の経済学者アダム・スミスの「諸国民の富(国富論)」が1776年に刊行されてから250年の節目にも当たるとのことです。18世紀の英国に始まる第1次産業革命は、蒸気機関の力で伝統的な手工業を工場での大規模生産に変え、モノやサービスが市場で取引される資本主義経済を生み出しました。19世紀最大の発明といわれる蒸気機関車がリバプール⇔マンチェスター間を走ったのは1830年ですが、開国間もない日本は早くも1872年に新橋⇔横浜間で汽車が走っており実に驚くべきことだったと解説されています。

   第2次世界大戦後1950~60年代の日本の高度経済成長は、19世紀末にアメリカ合衆国で始まった第2次産業革命の流れに乗ったもので、人々の生活様式も改善し、平均寿命も伸長しました。1975年には平均寿命が70歳を超え、今や日本は世界で1~2を争う長寿国となりました。

   21世紀になると情報通信技術(IT)、人工知能(AI)が経済を牽引する第3次産業革命が到来しましたが、日本は「完敗」し、基幹産業の一つであった電気機械産業も競争力を失ってしまいました。2025年末の株式時価総額の世界ラインキングでトップ50に入る日本企業はありません。失われた30年という長いトンネルの先に光を見出すことは難しい状況にあります。

   一方で、文化のグローバル競争では前向きな兆しもあると指摘されています。モノの輸出に代わって成長目覚ましいのがアニメやゲームなどのコンテンツビジネスです。19世紀の印象派などに浮世絵をはじめ日本の美術品・工芸品が大きな影響を与えた「ジャポニズム」の再来です。これらはお金を使うよりもまず第一にアイデアが大事であることを教えられます。21世紀、日本は人類社会にどのような貢献ができるのか。年の初めに日本の文化伝統について考えたい、との指摘は誠に共感できます。

 

 

   この一週間の私生活を振り返りますと、12月31日(水)大晦日は、地元商店街へ正月料理の調達に出かけ、夜はNHK紅白歌合戦やテレ東ジルベスター・クラシック・コンサート等のTV番組を観ながら年を越しました。今回の紅白はなんといっても矢沢永吉(永ちゃん)の登場が注目を集めました。そのほか、ユーミン、郷ひろみ、岩崎宏美、松田聖子など私たちの世代にお馴染みのアーティストが多数出演したこともあり、視聴率も35.2%と好調だったそうです。永ちゃんの“トラベリン・バス”は1976年に発表された名曲ですが、改めて紅白でその歌詞「生まれた町を出ると言うけど、その日暮らしがどんなものなのか分かっているのかい、…」を聴くと、約50年前の若かりし永ちゃんの意気込み、覚悟が伝わってきます。当時自らを“成りあがり”と自称してTVインタビューを受けていた映像も思い返しましたが、本当にたいしたものだと尊敬します。

 

   1月1日(木)元旦は、午後1時開館の東京国立博物館(トーハク)を目指して家を出ましたが、現地に到着してみると、それは驚くほど大勢の入館待ち客が館外の道路に長蛇の列をなして並んでおり、トーハクのスタッフが拡声器を持って交通整理に当たっておりました。しばらくその様子を見ながら待ちましたが時間が経てば経つほど行列が長くなっているようでしたので、入館をあきらめて引き返しました。

 

(長蛇の待ち客列に入館をあきらめた元日の「東京国立博物館」)

 

   夜は毎年恒例のウィーン・フィル ニューイヤーコンサート(NHK Eテレ)を観ながら長年交流の旧友から恵贈いただいた日本酒「北千住」を飲みました。このコンサートはウィーン楽友協会の黄金ホールからの生中継で、画面から見えるホールの美しさや盛装した聴衆の優雅さ、そしてなによりも楽団員と指揮者の素晴らしい演奏は、まことに新年に相応しいものです。

 

(旧友からいただいた日本酒「北千住」)

 

   2日(金)及び3日(土)は、毎年恒例の箱根駅伝をTV観戦しました。今年の青学の驚異的な強さにはただただ驚愕しました。1区16位と大きく出遅れたにもかかわらず5区で逆転し優勝するとはなんということでしょう。両日とも天気は大変良く、沿道及び背景・風景の美しさを眺めながら寛いでTVを観戦する正月はよいものです。なお、3日の夜はTBSで歌舞伎役者・坂東玉三郎が特別出演する番組を拝見しました。ちょうど玉三郎に関する本(下記参照)を読んでいたところでもあり、とても興味深く話を聴くことができました。4日(日)は近所に買い物に出かけただけで自宅養生に終始しました。

 

   5日(月)は、午後から横浜みなとみらい駅近くの横浜美術館を訪問し、「日本と韓国、アートの80年展」を観覧して来ました。この日が仕事始めの役所や企業が多いこともあり、都合の良いことに美術館は空いていて、ゆっくりじっくりと展示作品の数々を鑑賞することができました。

 

(横浜美術館「日韓アート80年展」)

 

   6日(火)は、朝からもたもたして過ごしていたところ、気が付いたら夕方になってしまい、結局終日自宅で養生することになりました。深夜1時半頃目が覚めてしまいトイレに行き水を飲んで二度寝をしましたが、なかなか寝付けずやっと寝たら起きるのが遅くなってしまいました。前日の夜に冷えたお酒を飲んだのが良くなかったのかもしれません。その反省を踏まえ、6日の夜は焼酎を梅干しお湯割り、料理も温かい鍋にしました。おかげで今朝7日(水)は途中目覚めることもなく朝までぐっすり眠れました。

 

 

   さて、この一週間は、真山 著の「玉三郎の『風を得て』」(文藝春秋:2025年9月30日第一刷発行、同年10月20日第二刷 1,600円+税10%=1760円:全180頁)単行本を読みました。この本は、昨2025年の誕生日祝いの品として日頃から大変お世話になっている親しい近所の方から恵贈いただきました。

   歌舞伎女形の有名人 玉三郎には、昨年3月7日(金)に蒲田の大田区民ホールアプリコ大ホールで開催された「人間国宝・歌舞伎俳優 坂東玉三郎~お話と素踊り~」のチケット(7,500円)を買えたので初めて実物を生で拝見する機会を得ました。とても感動しましたが、なかでも「歩いていて美しく見えるためのコツは頭を動かさないことだ」という説明にはなるほどと感心した覚えがあります。頭を動かさずに歩くためには自然と姿勢を良くしなければなりませんから。

   ただ、この本を読んで驚いたことに玉三郎は幼少の頃ポリオ(脊髄性小児麻痺)に感染していて歩行困難な時期が有ったということです。その後の治療と訓練のおかげで普通に暮らすぶんには支障ないほどに回復できたそうですが、それでも歌舞伎俳優として舞台に立つということになればそれは想像に絶する鍛錬が必要だったことでしょう。

   おそらくそういった生い立ちもあってのことだと思いますが、玉三郎は周りから褒められても浮かれたり、傲慢になったりすることはなく、芸を極めることに集中し、ついには人間国宝にまで上り詰めることができたのだろうと思います。良い本をプレゼントいただき感謝いたします。

 

 

   以上、今週もご覧頂きありがとうございます。

                                  敬具

 

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(参考1)<菖蒲静夫著>「税務担当奮闘記」(中央経済社)2024年11月1日
https://www.biz-book.jp/isbn/978-4-502-51791-4
Amazonなどのネット書店でも取扱い有 https://www.amazon.co.jp/dp/4502517917/
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(参考2)中央経済社「会計人コースWEB」(2025年4月2日掲載)<菖蒲静夫寄稿>

会計人コースWeb

【先輩からのメッセージ①】経理に配属された新社会人の皆さんへ ~未来を拓く5つの鍵とは? | 会計人コースWeb

 

(参考3)株式会社 中央経済社ホールディングス決算発表 P.3(税務分野)

2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結)

 

(参考4)真山 著の「玉三郎の『風を得て』」

『玉三郎の「風を得て」』真山仁 | 単行本 - 文藝春秋

映画「国宝」のモデルとの噂も? 歌舞伎役者・坂東玉三郎の知られざる生い立ち、美学の源泉に迫った1冊【書評】 | ダ・ヴィンチWeb

 

 

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Bou-ken weekly 研究員

菖蒲 静夫(あやめ しずお)

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