結局一睡もしないままソファで朝を迎えた。
1時間後には久保っちが迎えに来る。
スゥ………
ハァ…………。
もう何度目かもわからないくらいの、深呼吸のような大きな溜息…。
『1回帰んなきゃ。』
そう呟き立ち上がる。
ゴミを捨てようとゴミ箱のそばまで行った時、手のひらサイズの長方形の紙が捨てられていることに気がついた。
おもむろにそれを拾い上げると、俺は自宅へと帰った。
.
『おざっす。』
「おはようございます。二宮さん、今日なんですけど……………」
久保っちが今日のスケジュールを話してたけど、俺の耳にはほとんど入ってこなかった。
それよりもさっき拾った“名刺”のことが気になって、それで頭がいっぱいだった。
「………で、以上です。」
『ねぇ久保っち。頼みあんだけど。』
「あ、はい。えーと……」
久保っちはスケジュール帳にペンを向けて、こちらを見た。
『こいつちょっと、締め上げてくんねぇかな。』
アコんちで見付けた名刺を手渡しながら言うと、
「え⁉︎」
と驚きながら受け取り、名刺を見た。
「これって…。この間の。」
『そ。俺たちの記事書いた奴。最近アコの周りウロチョロしてたらしいのよ、そいつ。んで……いなくなっちゃったの、アコ。』
その後出発した車の中で、久保っちに事の経緯を話した。
「そうだったんですね。分かりました。最善を尽くします。」
『すんません、余計な仕事ふやしちゃって。よろしくお願いします。』
深々と頭を下げながら言った。
頭を下げてアコが戻ってくるなら、いくらだって下げるよ。こんな頭。
誰にでも。何度でも。
だから頼むよ…戻ってきて。
.
仕事だけは、気持ちを切り替えてやった。…というか、どうにかこなした。
待ち時間や移動中は……。
ゲームをしても、いつもなら余裕でクリアできる箇所でつまづいてばかりいて、イライラしてやめた。
移動中は、どこかにアコがいるかもしれない…と外ばかり眺めていた。
アコがどうなったのか、他のメンバーも気にしてくれているのが分かったけど、まだ話す気にはなれなかった。
そんな俺を察して、メンバーは何も聞かずそっとしていてくれる。
そして、俺のフォローを自然にしてくれる。
本当に申し訳ない。けど、この人達に甘えることで俺は、自分をどうにか保っていられた。
.
アコが突如姿を消した日から数日…。
俺は、
仕事を終え一旦帰宅する。
明日の支度を済ませ、アコの家で過ごす。
翌日仕事へ行く。
このサイクルで過ごしていた。
ココにアコの荷物があるうちは、アコが戻って来る可能性があるわけで。
ま、戻って来るとしても、俺がいないであろう時間帯を狙うだろうけど。
万が一って可能性を捨てられないわけ。
1人で過ごすこの部屋は、空き箱みたいに軽くて…俺の心もスカスカで…
この部屋ってこんなにも広かったかな…
お前が電話くれた時、何もかも捨てて駆けつけてたら、こんなことになってなかったのかな…
誰よりも守ってやりたかった…ずっと守るって決めてたのに…
ごめんな…アコ。