エピローグ
「店長!すみませんでした。途中で抜けちゃって。」
「その顔は会えたんだな。ほら、仕事に戻れ」
ニヤッと笑いながら店長は言った。
「はい!」
残り20分弱。
目標個数まであと2個。
2個売ったところで、行ってしまった君に連絡先はもう聞けない。
それでも俺は最後までやり遂げたかった。
クリスマスがあと数時間で終わろうとしている夜に、クリスマスケーキを買う人はもう少ない。
閉店5分前。
ケーキがやっと一つ売れた。
残り5分…
「おーい。そろそろ閉店準備よろしくー」
「あ、はい…。」
ダメだったか。あと1つだったのに。
片付けを始めたけれど、どうしても飽きらめきれず、ケーキのテーブルだけは最後まで残しておいた。
しかし。
「よーし、閉店だ。三日間ご苦労様。お、あと1つだったかー。残念だったな。お前、これ持って帰っていいぞ。どうせ廃棄だし。」
「あ、ありがとうございます。」
「あの…すみません。そのケーキもうダメですか?」
声を掛けられ振り向くと、そこには。
『そのケーキほしいんですけど。』
優しい笑顔の君が立っていた。
「え⁉︎帰らなかったの?」
『だって…。私まだケーキ食べてなかったし。それに…サンタクロースさんが大事なもの落としてくから…』
その手には俺の家の鍵。
「俺の…せい?」
『サンタクロースからのプレゼントだよ、きっと。』
「…………。」
申し訳なさと、また会えた嬉しさで言葉を失っていると
突然、
「メリークリスマス!!!」
店長が大きな声で笑いながら店内へ消えていった。
「『……………。』」
しばしの沈黙の後、
顔を見合わせ笑い合いながら、2人並んだサンタクロース達も店の中へと入っていった。
あとがき。。。
季節外れかとは思ったんですけど、デジタリアンを聴いていたらどうしても「メリークリスマス」のお話を書いてみたくなって。
私なりの解釈でお話にしてみました。
解釈の違いでイメージが違うって思われた方がいらっしゃったら、ごめんなさい。本当に私なりの解釈なので…。
最後は、敢えて結末には触れずに終えてみました。
ニノの詞自体が曖昧なまま「それでどうなったんだろう」って感じで終わっているので、その世界観を壊さないようにと思いまして…。
なので、「メリークリスマス!」と言った後のお話はエピローグという形にしてみました。
初めてメリークリスマスを聴いた時から、この詞で様々な想像を巡らしておりました。それを全5話という短編ではありますが、お話という形で書くことができて本当に良かったです。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。