抗がん剤の治療が始まった。
ファーストラインにはTS-1とドセタキセルの組み合わせが選択された。
抗がん剤治療は一生続くわけではない。
基本的には1年間で終わるはずだ。
そして点滴はそのうち半年。
希望と終わりが見えていればいくらでも頑張れる。
たとえ髪の毛が抜けても、どうせすぐにまた生えてくるのだから。
この頃の妻の悩みは、主にダンピングだったと思う。
今までのように、思うように食べられないつらさ。
時に食べすぎては、吐き気、冷や汗、腹痛など胃腸に関わるいろんな症状をいつも抱えていた。
それでも食べることに関しては、妻はいつも前向きだった。
私だったら、食べること自体が嫌になりそうなものだと思ったが、
どこの何が美味しいか、どんな食材が旬か、子供に何を食べさせるか、
食は、常に妻の楽しみの一つだった。