大学受験を控えた主人公「渡辺誠」は高三の夏休みを迎える。
彼はこれまでの人生において何一つまともな選択をしたことがなく、惰性のような毎日を過ごした人間であった。
今回の受験においても彼は志願者数が日本で最も多い「金龍大学」を第一志望に選択する。
その理由は親の目と世間体。無難な選択であるこの大学なら誰からの非難も買うことがないという消去法で受験勉強に励む決意をした。
しかし担任教師の若松は誠に忠告する。
「そういうその場しのぎな選択は苦労を後回しにしてるだけであって、問題の解決には至ってない。お前は後々苦労するぞ」と。
続けて
「俺は高三の夏に死ぬほど遊んだ。それについて後悔は全くない。遊べる時に遊ぶのも一つの選択だぞ」と。

それでも誠は無難な選択を取る。予備校に通い、同級生であり幼馴染みでもある琴吹桃子と共に受験勉強に励む。
桃子は素晴らしく勉強ができる少女であった。偏差値は優に七十を越しており、それでも第一志望は誠と同じく偏差値五十台の金龍大学にしている。
理由は誠と同じ大学に行きたいから。それほどまでに彼女は誠のことを愛しており、しかしながら桃子は誠に想いを伝えたことはなかった。
しかし流石に誠も彼女の想いは察している。それでも誠は何かしらの決断を下すことはなかった。
理由は自分が桃子に相応しくない人間だと思い込んでいるから。桃子との関係性が変わってしまうことに対する恐れから。


ところで誠には対照的な友人がいる。彼の名を安藤という。
安藤は誠と同級生でありながら大学受験には挑まず、ポエトリーリーディングというマイナージャンルで歌手デビューを目論む夢見る少年であった。
しかしその夢は彼自信の物であると同時に、彼女の妹「安藤瑞希」の夢でもあった。
瑞希は病弱な女の子であり、入院生活を余儀なくされている。寿命もそう長くはなさそうであった。
そんな彼女は兄の才能を信じて疑わず、彼がこの世界を変えてくれると本気で思い込んでいた。
それ故に安藤は大学受験を諦め、日々ライブハウスでポエトリーリーディングに励み命を燃やしている。
そんな安藤の勇姿を何度もライブで目に焼き付けた誠は、自分の選択の浅はかさと比較してしまい、劣等感に駆られる。
そして誠はライブの最中であるにも関わらず、ライブハウスから逃げ出してしまった。

大雨の中自転車を走らせる誠。
幾度となく自己嫌悪を繰り返す。その最中に突如轟音が轟き、突然空から何かが落ちてきたのを目撃する。
慌てて何かの正体を突き止める誠。雑木林に入り込み、がむしゃらに探し続けた。
そして誠は池の畔で頭に蔦を絡ませた女の子を見つけた。
女の子は泣いていた。その側には見たこともない乗り物があった。
しばらく戸惑っていると、誠は唐突に女の子からテレパシーを受信する。

『お願い、私を殺して』

聞けば女の子は病気を患ってしまい、両親から捨てられて地球に漂流した宇宙人であった。
病名は『吸幸花』。(きゅうこうか)
頭に絡ませた蔦は少女に寄生した植物『吸幸花』であり、血液を媒介にして育ち、花が咲くと同時に宿主を死に追いやるという。
そうして花が咲く時に死んでしまう宿主は、安らかな笑顔で亡くなることからこの名が付けられたという。
勿論『吸幸花』は植物であるため、咲いた後に花粉をばら蒔き感染者を増やす。
まともな対策がない現状、感染者は殺されるか捨てられるかのどちらかであった。
それ故に少女は誠に殺してほしいと請い願うのであった。

しかし当然誠は拒絶する。
泣いてる少女を殺すことに恐怖を覚える。しかし世界を救うためにはそうしないといけないと脅され吐き気を覚える。
そんな誠とは打って変わって、女の子は開き直る。
「私を殺せないなら二人で逃避行に走ろう。楽しいことと気持ちいいことだけをして、一緒に世界の終わりを見届けよう」と。
しかし誠はそんな彼女の提案すら受け入れることができず、思い悩んだあげく気絶してしまう。
結論として誠は二者択一を選べず、一人で逃避行に走ることを決意してしまった。