「さて、俺は帰ります」
「待ってください。こんなにも色々としていただいたのに、何もしないなんてできません。お礼させてください」
ソーラさんが言った。だけど俺は部外者だし、正直ここから離れたかった。さっきから羨ましいという思いが強くなっていて、さっさと消し去りたかったのだ。
俺は立ち去ろうとした。立ち去ろうとしたのだ。
だけど正面から「一歩でも動いたら死ぬ」的な殺気を感じて足を止めた。クミさんがジーっとこちらを切れ味のある視線で捉えている。
「…泊まっていきなさいよ」
クールを通り越してアイスのような声で、クミさんは言った。10秒ほど考えた挙句、身の安全を優先することにした。やむを得ない。
「…じゃあ、お言葉に甘えて」
俺は方向をかえて、豪邸のほうにゆっくりと脚を進めた。ソーラさんは素敵な笑顔で案内してくれている。アイクさんと目が合ったが、おどけたような感じで、申し訳ない、というように両手を合わせていた。
美しいバラには棘があるとは、こういうことか。
思っていた以上に中は広かった。俺は入り口すぐのリビングに通された。アイクさんはリーダーを呼んでくるそうだ。ソーラさんはお茶を入れている。そして俺の隣にはなぜか…クミさんが座っていた。まるで看守に見張られる囚人の気分だ。もう入ってしまったら、俺は逃げないのに。
しばらくしてアイクさんが、一人の男性を連れてきた。髪が赤くて、服装はなんとなく海賊をイメージしてしまう。だけど第一印象とは対照的に、とても打ち解けやすそうな雰囲気を持った人だ。リーダーと言われても、全く違和感は無い。
「君がクミさんたちを助けてくれたんだね。仲間を救ってくれて、本当にありがとう。」
赤い髪の人は言った。まるで友達と話しているかのように感じる。
「いえ、偶然居合わせただけですから。それに俺は救われた側の人間でもありますし」
そう言ってクミさんをちらりと見た。よく分からない表情だ。
「申し遅れました!わっちの名は、赤髪のとも。君は?」
「俺は―、ムサシといいます」
「ムサシ…。かっこいい名前だね」
「ど、どうも」
それから俺は、クミさんたちと出会った経緯、自分のことについて話した。途中ソーラさんがお茶を運んできてくれて、ともさんの隣に座って話を聞いていた。初対面の人に対してこんなにも話ができるなんて思ってもいなかった。ともさんの雰囲気のおかげだろう。こんな人がリーダーなら、毎日楽しいに違いない。
話がある程度終わると、ともさんが言った。
「結構おもしろい人なんだね。ムサシ君が戦っている姿、みたかったなぁ」
「いやいや(笑)、そんな大した腕じゃないです。それに俺、途中でコケましたし。クミさんがいなかったら完全にアウトでした」
「クミさん、めっちゃ強いからなぁww」
ともさんは笑っていた。その時、さっきから隣でなにか考え事をしていたソーラさんが、不意に口を開いた。
「ねえ、ともさん。ムサシ君をメンバーに入れてあげるのはどう?」
は!?はいぃ!!??
いきなり何を言い出すんですか!?
「さっきから話を聞いて考えていたけど…、やっぱり一人で暮らすよりも、みんなで協力していったほうがいいと思うの。その方がいろんなことができるし。私たちも元々友達同士で、それが繋がって今こうして生活しているけど、「仲間がいてよかった」って思うことがいっぱいあったの。
もちろん無理強いはしないけど、ムサシ君さえよければ仲間に入れてあげたい。ともさんはどう思う?」
「わっちは大賛成だよ。話を聞いただけでも、とても良い人だってことはよくわかったし。何より、仲間をたすけてくれたからね」
いきなりの展開で戸惑った。まさかこうなるなんて…。
確かに気持ちはありがたい。俺にとってはただ当たり前のことをしたに過ぎないのに、こんなことを言ってくれるのは、正直とてもうれしい。だけど、俺にも今の生活があるし、いきなり見知らぬ人間が入っても混乱するのではないか。
だけど、一番の理由は、自分の中にくすぶっている「羨ましさ」をさっさと消し去りたかったのだ。こんなお荷物な感情、さっさと降ろして火をつけて燃やして、その灰を海なり、山なり好きなところにばら撒いて葬りたい気分だ。持っていても何の価値もないし、力もないし、暖かくもなんとも無い。それを持っていたとして何になる?飼いならしたとして俺に何のメリットがある?ただこころの中にむなしさが巣くって無制限に増殖するだけだ。究極の「無駄」でしかない。
二人には申し訳ないけど、断ることにしよう。
「お気持ちはありがたいです。でも…申しわけないですがお断りさせ―」
「本当にそれでいいの?」
会話をさえぎっていきなり話しかけてきたのはクミさんだった。今まで何も言わなかったので驚いた。
「え、どういうことですか」
「待ってください。こんなにも色々としていただいたのに、何もしないなんてできません。お礼させてください」
ソーラさんが言った。だけど俺は部外者だし、正直ここから離れたかった。さっきから羨ましいという思いが強くなっていて、さっさと消し去りたかったのだ。
俺は立ち去ろうとした。立ち去ろうとしたのだ。
だけど正面から「一歩でも動いたら死ぬ」的な殺気を感じて足を止めた。クミさんがジーっとこちらを切れ味のある視線で捉えている。
「…泊まっていきなさいよ」
クールを通り越してアイスのような声で、クミさんは言った。10秒ほど考えた挙句、身の安全を優先することにした。やむを得ない。
「…じゃあ、お言葉に甘えて」
俺は方向をかえて、豪邸のほうにゆっくりと脚を進めた。ソーラさんは素敵な笑顔で案内してくれている。アイクさんと目が合ったが、おどけたような感じで、申し訳ない、というように両手を合わせていた。
美しいバラには棘があるとは、こういうことか。
思っていた以上に中は広かった。俺は入り口すぐのリビングに通された。アイクさんはリーダーを呼んでくるそうだ。ソーラさんはお茶を入れている。そして俺の隣にはなぜか…クミさんが座っていた。まるで看守に見張られる囚人の気分だ。もう入ってしまったら、俺は逃げないのに。
しばらくしてアイクさんが、一人の男性を連れてきた。髪が赤くて、服装はなんとなく海賊をイメージしてしまう。だけど第一印象とは対照的に、とても打ち解けやすそうな雰囲気を持った人だ。リーダーと言われても、全く違和感は無い。
「君がクミさんたちを助けてくれたんだね。仲間を救ってくれて、本当にありがとう。」
赤い髪の人は言った。まるで友達と話しているかのように感じる。
「いえ、偶然居合わせただけですから。それに俺は救われた側の人間でもありますし」
そう言ってクミさんをちらりと見た。よく分からない表情だ。
「申し遅れました!わっちの名は、赤髪のとも。君は?」
「俺は―、ムサシといいます」
「ムサシ…。かっこいい名前だね」
「ど、どうも」
それから俺は、クミさんたちと出会った経緯、自分のことについて話した。途中ソーラさんがお茶を運んできてくれて、ともさんの隣に座って話を聞いていた。初対面の人に対してこんなにも話ができるなんて思ってもいなかった。ともさんの雰囲気のおかげだろう。こんな人がリーダーなら、毎日楽しいに違いない。
話がある程度終わると、ともさんが言った。
「結構おもしろい人なんだね。ムサシ君が戦っている姿、みたかったなぁ」
「いやいや(笑)、そんな大した腕じゃないです。それに俺、途中でコケましたし。クミさんがいなかったら完全にアウトでした」
「クミさん、めっちゃ強いからなぁww」
ともさんは笑っていた。その時、さっきから隣でなにか考え事をしていたソーラさんが、不意に口を開いた。
「ねえ、ともさん。ムサシ君をメンバーに入れてあげるのはどう?」
は!?はいぃ!!??
いきなり何を言い出すんですか!?
「さっきから話を聞いて考えていたけど…、やっぱり一人で暮らすよりも、みんなで協力していったほうがいいと思うの。その方がいろんなことができるし。私たちも元々友達同士で、それが繋がって今こうして生活しているけど、「仲間がいてよかった」って思うことがいっぱいあったの。
もちろん無理強いはしないけど、ムサシ君さえよければ仲間に入れてあげたい。ともさんはどう思う?」
「わっちは大賛成だよ。話を聞いただけでも、とても良い人だってことはよくわかったし。何より、仲間をたすけてくれたからね」
いきなりの展開で戸惑った。まさかこうなるなんて…。
確かに気持ちはありがたい。俺にとってはただ当たり前のことをしたに過ぎないのに、こんなことを言ってくれるのは、正直とてもうれしい。だけど、俺にも今の生活があるし、いきなり見知らぬ人間が入っても混乱するのではないか。
だけど、一番の理由は、自分の中にくすぶっている「羨ましさ」をさっさと消し去りたかったのだ。こんなお荷物な感情、さっさと降ろして火をつけて燃やして、その灰を海なり、山なり好きなところにばら撒いて葬りたい気分だ。持っていても何の価値もないし、力もないし、暖かくもなんとも無い。それを持っていたとして何になる?飼いならしたとして俺に何のメリットがある?ただこころの中にむなしさが巣くって無制限に増殖するだけだ。究極の「無駄」でしかない。
二人には申し訳ないけど、断ることにしよう。
「お気持ちはありがたいです。でも…申しわけないですがお断りさせ―」
「本当にそれでいいの?」
会話をさえぎっていきなり話しかけてきたのはクミさんだった。今まで何も言わなかったので驚いた。
「え、どういうことですか」